試合を見ていて、ボールがコートの外に出た瞬間、審判が笛を吹いて相手にボールを渡した——「え、今の何がダメだったの?」。ベンチのコーチが「ファウルスロー!」と叫んでいるけれど、そもそもスローインのルールを自分がよく分かっていない。だから、家で子どもに聞かれても答えられない。サッカーを自分ではやってこなかったパパ・ママにとって、あの「両手でボールを投げるやつ」は、意外と説明できないものです。この記事を読み終えるころには、スローインの正しいやり方と、子どもによくある反則(ファウルスロー)を、お子さんにその場で説明できるようになります。
スローインの正解はたった3つ。①両手で持つ ②頭の後ろから頭の上を通して投げる ③両足を地面につけたまま。この3つが守れていれば大丈夫です。ラインは踏んでもOK、外に立ってもOK。片手投げ・頭より前で離す・足が浮くの3つが「ファウルスロー(反則)」になります。
この記事は、少年サッカーの現場に立つ現役のU10・8人制コーチが監修しています。低学年の試合で一番よく笛が鳴るのが、実はこのスローイン。ある試合では、前半だけで両チーム合わせて5回もファウルスローを取られたこともありました。理由はほぼ全部同じで、興奮して片手でパッと投げてしまうか、急いで足が浮いてしまうか。難しい技術ではなく、「落ち着いて3つを守る」だけ。だからこそ、家で一度きちんと教えてあげるだけで、驚くほど減ります。
01スローインって、そもそも何のためにやるの?
まず大前提から。スローインは、ボールがコートの横のライン(タッチライン)から外に出たときに、試合を再開するための投げ入れです。手を使っていいのは、このスローインとゴールキーパーくらい。ふだん手を使えないサッカーで、フィールドの選手が唯一ボールを手で扱う場面、それがスローインです。
投げるのは、最後にボールにさわった選手の「相手チーム」。たとえば自分の子のチームの選手が最後にボールをさわって外に出したら、投げるのは相手チーム、という具合です。ここは大人でも「どっちだっけ?」となりますが、審判が方向を手で示してくれるので、試合中に迷う心配はありません。
ボールが横のラインから出たら、最後にさわっていないほうのチームが、その出た地点の近くから手で投げ入れて再開。これがスローインです。手を使える数少ない場面なので、子どもはちょっと嬉しそうにやります。
02正しいやり方は「3つ」だけ
ルールブックには細かい表現が並んでいますが、子どもに教えるならこの3つだけで十分です。丸暗記させる必要はありません。
- ① 両手で持つ:ボールは必ず両手で。左右の手で挟むように持ちます。
- ② 頭の後ろ → 頭の上を通して投げる:ボールを一度、頭の後ろまで引いてから、頭の上を通して前へ。おでこの前でポンと押し出すのはNGです。
- ③ 両足を地面につけたまま:投げ終わるまで、両方の足のつま先(かかとでもOK)を地面につけておきます。片足が浮いたり、走りながら投げたりはダメ。
言葉にすると難しそうですが、動きは「バンザイの形からボールを送り出す」だけ。低学年の子には、「頭の後ろからテレビ体操みたいに、足はカカトまでペッタン」くらいのイメージで伝えると、一発で伝わります。
「りょう手・あたまの後ろ・りょう足ペッタン」。この3つを声に出しながらやらせると、体が覚えます。試合中も、投げる前に子どもが小声で唱えていれば、まず反則になりません。
03ファウルスロー|子どもがやりがちな反則3つ
正しい投げ方の「逆」をやってしまうのが、反則=ファウルスローです。ファウルスローになると、投げる権利が相手チームに移ります(同じ場所から相手が投げ直し)。少年サッカーの現場で実際に多いのは、次の3つです。
① 片手投げ:興奮して、野球のように片手でビュッと投げてしまう。いちばん多いパターンです。
② 頭より前で離す:頭の後ろまで引かず、おでこの前からポンと押し出す。「後ろから」ができていない。
③ 足が浮く・走って投げる:勢いあまって片足が上がる、助走をつけて走りながら投げる。遠くへ飛ばそうとする子に多い。
どれも「反則しよう」としてやっているわけではなく、急いでいるから・遠くに飛ばしたいから起こります。だから叱る必要はありません。「落ち着いて、両手・頭の後ろ・足ペッタン」と声をかけてあげれば十分。ちなみに、投げるのに手間取っても反則にはならないので、あわてないことが一番の対策です。
・ボールがまっすぐ飛ばず、ヒョロっと近くに落ちた → セーフ(飛距離は自由)
・投げたボールが誰にも当たらず外にまた出た → 相手のスローインになるだけで反則ではない
・投げるまで少し時間がかかった → セーフ
「うまく投げられない」ことと「反則」は別物です。フォームさえ合っていれば大丈夫。
04ラインは踏んでいい?外に立ってもいい?
ここは、親も勘違いしやすいポイントです。「ラインを踏んだらダメなんじゃないの?」とよく聞かれますが、スローインでは、ラインを踏んでも大丈夫です。
正しくは、投げる人はタッチライン(横の線)の外側、または線の上に立って投げるというルール。つまり、
- ラインを踏む(線の上に立つ) → OK
- ラインの外に立つ → OK
- ラインより内側(コートの中)に完全に入って投げる → NG
要するに「線から中に入りすぎなければOK」ということ。子どもには「線の上か、線の外から投げる。コートの中に入っちゃダメ」とだけ伝えれば十分です。細かいセンチ単位の判定を低学年ですることはまずないので、神経質になる必要はありません。
05スローインからのオフサイドは「無し」
もうひとつ、覚えておくと試合観戦がぐっとラクになる知識を。スローインで投げ入れたボールを味方が受け取っても、オフサイドにはなりません。
オフサイドは、パスなどで前に出しすぎると取られる反則ですが(→ 別記事で解説しています)、スローインだけは例外で、どれだけ前に投げても、それを受けた味方がオフサイドを取られることはないんです。だから、味方がゴール近くまで走り込んでいても、そこへ投げ入れて大丈夫。この「スローインはオフサイド無し」を知っていると、攻めの幅が広がります。
・パスからのオフサイド → あり(前に出しすぎると反則)
・スローインからのオフサイド → 無し(どれだけ前に投げてもOK)
「なんで今のはオフサイドじゃないの?」の答えの多くが、これです。オフサイドそのものが分かりにくい方は、あとで オフサイドのやさしい解説 もどうぞ。
06家で30秒で教えるコツ+現場の声
スローインは、家の玄関先や公園で30秒あれば教えられます。ボール1つ(なければクッションでもOK)を用意して、親が一度お手本を見せるだけ。ポイントは「うまく投げる」ことより、3つの形を守ることだけを見てあげることです。
親が隣で一緒にやって、「両手・頭の後ろ・足ペッタン、できてるね!」と声をかける。これだけで、次の試合ではファウルスローがぐっと減ります。飛距離を求めて足が浮く子には、「近くていいから、足はカカトまでつけたまま」と伝えてあげてください。
「うちの子、毎回片手で投げて笛を吹かれてた。家で『両手・頭の後ろ』を教えたら一発で直った」
「ラインを踏んだらダメだと思って子どもに注意してたけど、踏んでOKだったと知って逆に謝りました」
「遠くに飛ばそうとして足が浮いてた。『近くていい』って言ったら反則しなくなった」
「スローインはオフサイド無しって知らなくて、いつも『前すぎる!』って言ってた。知ってスッキリ」
スローインの練習は転倒やケガの心配がほとんどなく、体が小さい低学年でも安全に取り組めます。ただ、遠くへ投げようと反動を大きくつけすぎると腰や肩に負担がかかることも。フォーム重視で、飛距離は求めないのが低学年のコツです。体の使い方に不安があれば、無理をさせず、チームのコーチに相談してみてください(成長には個人差があります)。
よくある質問
ファウルスローを取られると、どうなりますか?
投げる権利が相手チームに移り、同じ場所から相手チームがスローインをやり直します。得点が入ったり退場になったりするような重い反則ではないので、あわてなくて大丈夫です。原因のほとんどは『片手投げ・頭より前で離す・足が浮く』の3つなので、そこを直せばぐっと減ります。
スローインでラインを踏んだら反則ですか?
いいえ、反則ではありません。ライン(タッチライン)の上に立っても、外に立ってもOKです。ダメなのは、線より内側(コートの中)に完全に入って投げること。『線の上か外から投げる』とだけ覚えておけば大丈夫です。
スローインしたボールがそのまま外に出たら?
反則ではなく、相手チームのスローインになるだけです。また、投げたボールが誰にも当たらずゴールに入っても得点にはならず、相手のゴールキックなどで再開します。うまく投げられなくても反則になるわけではないので安心してください。
スローインから直接ゴールしたら得点になりますか?
なりません。スローインで投げたボールが、味方や相手にさわられずそのまま相手ゴールに入っても、得点は認められません。誰かがボールにさわってからゴールする必要があります。自分のゴールに入った場合も得点にはならず、相手のコーナーキックで再開します。
スローインで前に投げすぎるとオフサイドになりますか?
なりません。スローインはオフサイドの対象外なので、どれだけ前に投げても、それを受けた味方がオフサイドを取られることはありません。味方がゴール近くに走り込んでいても、そこへ投げ入れて大丈夫です。
スローインのように「知っていれば説明できる」ルールは、ほかにもたくさんあります。多くの保護者が最初につまずくオフサイドも、図でやさしく解説しています → オフサイドのルールをやさしく解説
「サッカーが上手い選手より、サッカーを通じて“かっこいい大人”を育てる」
少年サッカーの育成年代を指導して3年目、これまで延べ50名ほどの子どもたちと向き合ってきた現役コーチ。判断力・認知・立ち位置・パススピード・切り替え、GKからのビルドアップを軸に、「個の前進力」と「戦術理解」の両立を追求しています。毎月、練習設計と自己内省をレポートにまとめてPDCAを回す、分析型の指導者です。
現場でサッカー未経験の保護者の声を大切にしてきました。専門用語をゼロに噛み砕き、「親が今日からできること」に翻訳してお届けします。
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