「うちの子、ディフェンダー(DF)だけど、地味で目立たない…」「守るって、ただ相手を追いかけるだけ?」——攻撃に比べて、DF(守りの選手)の役割は分かりにくいものです。でも実は、DFはチームで一番「頭を使う」ポジション。抜かれない立ち位置、味方との連携、危険を先に消す予測——奥が深く、上手なDFはチームの大黒柱です。この記事では、サッカー未経験のパパ・ママ向けに、DFの役割と守り方のコツをやさしく解説します。
DFの仕事は①相手に簡単に抜かれない(間合いと粘り)②危険なスペースを埋める(立ち位置)③味方と協力して数的優位を作るの3つ。飛び込んで奪うより、「抜かせない・遅らせる」が基本。地味に見えて、実は判断力と予測力が問われる頭脳的なポジションです。→ 1対1で抜かれない守り方も
この記事は、少年サッカーの現場に立つ現役のU10・8人制コーチが監修しています。DFの子を見ていて伝えたいのは、「守備は、地味だけどチームで一番信頼される仕事」だということ。派手なゴールはありませんが、ピンチを未然に消すDFがいると、チームは安心して攻められます。上手なDFは、コーチから見て本当に頼もしい存在。子どもにも「守れる子はカッコいい」と伝えてあげてください。
01DFの3つの仕事
DF(ディフェンダー)は、ゴールを守る最後の砦。仕事は3つです。①相手に簡単に抜かれない、②危険なスペース(相手が使いたい場所)を先に埋める、③味方と協力して、相手より人数で有利な状況を作る。つまりDFは、「ボールを奪う」だけでなく、「危険を未然に防ぐ」のが大きな役割。予測と立ち位置がものを言う、頭を使うポジションです。
この3つには順番があります。最優先は①の「抜かれないこと」。DFが抜かれた瞬間、その後ろはゴールキーパーだけになります。逆に、奪えなくても抜かれなければ、失点にはなりません。低学年の子には「取れなくていい、通さなければ勝ち」と伝えるだけで、守備の考え方がガラッと変わります。奪う技術は、抜かれなくなったあとに積み上げるものです。
02抜かれない守り方=飛び込まない
守備でいちばん大事なのは、「飛び込まないこと」です。相手がボールを持った瞬間、あわてて足から突っ込むと、その一瞬で横を抜かれます。正解は、足を出さずに相手の前に立ち続け、進むのを遅らせること。これを「遅らせる(ディレイ)」と言います。奪うのは、味方が戻ってきて数で囲めたとき、または相手がボールを大きく蹴り出した瞬間だけ。「がまんして、抜かせない」が、いいDFの合言葉です。
この「がまんして立ち続ける」守り方は、足元が滑ると成立しません。踏ん張った瞬間にズルッといけば、どんなに立ち位置が正しくても抜かれます。幅広・甲高の子は幅広・甲高の子のワイドモデルも参考になります。
サイズと路面が合っているかは、比較ページで学年・足型から確認できます → 学年・足型からピッタリの一足を選ぶ
038人制のDFは何人?並びと役割のちがい
少年サッカーは8人制。大人の11人制とは人数も並びも違います。ここを知らないまま試合を見ると、「なんでうちの子だけ後ろにいるの?」と分かりにくいままです。
8人制で多いのは、GK1人+DF2〜3人という形。よくある並びが「2−3−2」(DF2人・MF3人・FW2人)と「3−3−1」(DF3人・MF3人・FW1人)です。DFが2人のチームは攻撃に人数をかける形、3人のチームは守りを厚くする形。どちらが正解ということはなく、チームの考え方の違いです。並びの基本は ポジションと役割ガイド にまとめています。
DF2人のとき、役割は「左右」に分かれます。自分の側に来た相手に対応し、逆側に行ったら中央を絞って味方の後ろを守る。この「絞る」ができるかどうかが、8人制のDFの分かれ目です。DF3人のときは、真ん中の子が中央の一番危ないところを消す役、両側の子がサイドの対応と絞りを担当します。
ここで大事なのが、8人制はコートが狭く、DFも攻撃に関わるという点。11人制のような「後ろに張りついて守るだけ」のDFは、8人制ではほぼいません。守って、奪って、前に運ぶところまでがDFの仕事。だから「DFになった=攻撃できない」ではありません。ここは、あとの章でもう一度触れます。なお、人数や交代の運用は大会によって違うことがあるので、大会要項やチームの案内を確認してください(8人制の基本は 8人制サッカーの基本 でも解説しています)。
04立ち位置で危険を消す
上手なDFは、ボールを奪う前に、危険を「立ち位置」で消しています。相手が通したいパスのコースに、あらかじめ立っておく。相手FWが抜け出したいスペースを、先に埋めておく。すると、相手は「やりたいこと」ができません。これが「予測して、先に動く」守備。ボールばかり見るのではなく、相手と味方、スペースを見て、危険な所に立つ——これができると、DFは一段レベルが上がります。
05抜かれない立ち位置を、子どもに伝わる言葉で
「立ち位置が大事」と言われても、子どもには伝わりません。現場で実際に使って伝わったのは、次の3つの言い方です。
①「正面に立つな、ななめに立て」。相手と真正面で向き合うと、左右どちらに行かれても同じ距離。ところが、体を少しななめにして片側を空けておくと、相手はその空いた側へ行きます。行かせたい方向にだけ道を残しておくわけです。中央ではなく外側(タッチラインの方)を空けるのが基本。中央へ入られるのがいちばん危ないからです。この「ななめ」を、大人は半身(はんみ)と呼びます。
②「うでいっぽん分あけろ」。距離の話です。近すぎると一発で抜かれ、遠すぎると自由に運ばれる。目安として手を伸ばして届くか届かないかくらいと伝えると、低学年でも位置が取れます。相手が速い子なら少し遠め、ゴールに近い場面なら少し近め、と後から調整すればいい。
③「足じゃなく、体でついていけ」。抜かれる子の多くは、足だけ出して体が動いていません。相手が動いた方向へ、体ごと横に走ってついていく。足を出すのは最後です。
① 「ななめに立つ」=正面でぶつからない(半身)
② 「うでいっぽん分」=近すぎず遠すぎない距離
③ 「足より先に、体でついていく」
専門用語は使わなくて大丈夫。この3つを試合中に言えるだけで、抜かれる回数は変わります。
06飛び込んで抜かれる子への処方
「飛び込むな」と何度言っても飛び込む子がいます。でもこれは、性格の問題ではありません。飛び込む子には理由があります。
いちばん多いのが、「早く取ってほめられたい」。奪ったときは声をかけてもらえるけれど、粘って遅らせただけでは誰も何も言わない。だから取りにいく。これはこちらの声かけの問題です。監修コーチのチームでも、「今の、抜かせなかったのがナイス」と粘りをほめる回数を意図的に増やしたところ、飛び込みのクセがある子は数週間でだいぶ落ち着きました。ほめる対象を変えると、行動が変わります。
2つ目が後ろが不安だから。味方のカバーがないと分かっている子は、「ここで取るしかない」と思って突っ込みます。この場合は本人ではなく、後ろの選手にカバーの位置を教えるのが先です。
3つ目が相手が速くて怖いケース。速い相手には距離を少し多めに取る、と教えてあげれば解決します。近くで止めようとするから、かわされる。
抜かれた直後に責めても、次のプレーでもっと焦って飛び込みます。叱る回数より、粘れたときにほめる回数を増やすほうが早い。試合中の親の声かけも同じで、外から「行け!取れ!」と言われている子ほど飛び込みます。応援するなら「あわてなくていいよ」のほうが、その子を助けます(試合中の声かけは 試合後にかける言葉 も参考に)。
07味方との連携(数で守る)
守備は、一人でやるものではありません。味方と協力して、相手より人数を多くして守るのが基本です。一人が相手を遅らせている間に、味方がカバーに入る。この「1人が止めて、1人が奪う」連携ができると、格上の相手も止められます。だから、DFは声を掛け合うことがとても大切。「絞れ!」「カバー!」と味方と話せる子は、守備の要になります。
08カバーリングを低学年にどう教えるか
カバーリング(味方の後ろを守ること)は、低学年にはいちばん伝わりにくい概念です。目の前の相手ではなく、味方が抜かれたときのために、後ろに立っておくという話だからです。ボールに近づきたい年齢の子には、正直むずかしい。
そこで使うのが、「うしろのドア係」という言い方です。「〇〇くんがドアで止めてる。もし開いちゃったときに、うしろで止めるのが君の仕事」。役割に名前がつくと、低学年でも立てるようになります。実際、この言い方に変えてから、練習中に後ろで立ち止まっていられる子が増えました。
立つ場所は、味方のななめ後ろ。真後ろだと、抜かれた瞬間に一緒に置いていかれます。ななめ後ろにいれば、抜かれた相手の進む先へ回り込めます。距離は「味方に触れない、でも走れば届く」くらい。ここも数字ではなく体感で覚えさせるほうが早いです。
もう1つ、低学年でカバーが機能しない大きな理由が全員がボールに寄ってしまうこと。いわゆる団子サッカーです。これは成長段階として自然なもので、無理に矯正するものではありません(詳しくは 団子サッカーはいつ抜ける? にまとめています)。カバーは、団子から少し抜け出してきた子から順に教えていけば十分です。
09DFの攻撃参加|上がっていいタイミング
「DFになったら、もう点は取れないの?」——子どもが最初に感じる不満です。答えははっきり「取れます」。8人制はコートが狭く、DFが前に出る場面はいくらでもあります。
上がっていいのは、大きく3つの場面です。①味方が前でボールを持っていて、自分の後ろに相手がいないとき。②自分でボールを奪って、前が空いているとき。奪った勢いのまま運ぶのは、DFの最大の見せ場です。③コーナーキックやフリーキックのセットプレー。背が高い・競り合いが強い子は、点を取るチャンスがここに集まります。
逆に、上がってはいけないのは後ろが自分1人しかいないとき。ここで出ていくと、奪われた瞬間にゴール前ががら空きになります。子どもに伝えるなら、「うしろに味方がいるか、一回見てから出る」。この一言で十分です。前に出る前に後ろを確認するクセは、DFにとって一生使える習慣になります。
上がってOK:味方がボールを持って落ち着いている/自分で奪って前が空いた/セットプレー
上がらない:後ろが自分だけ/相手のカウンターが速いチーム/味方が押し込まれている
判断のキーワードは「出る前に、後ろを見る」。
10「DFはイヤだ」と言う子と、その親への言葉
ポジションを伝えたときに、いちばん反応が難しいのがDFです。「点を取りたかった」「なんでオレだけ後ろ」と言う子は毎年います。親御さんからも「うちの子、DFで納得していないみたいで」という相談を受けます。
まず知っておいてほしいのは、コーチはDFを「消去法」で決めていないということ。8人制でDFに置くのは、状況を見て判断できる子・我慢がきく子・体の使い方が上手な子です。前線は勢いで何とかなる場面がありますが、後ろは1つのミスが失点になります。そこに置かれているのは、信頼の証です。この話を保護者会で伝えたとき、「そういう意味だとは思わなかった」と言われたことが何度もあります。
子どもへの言葉としては、「ゴールを決めるのと同じくらい、ゴールを守るのはすごいこと」を、結果が出たその場で言うのが効きます。「さっき止めたやつ、あれがなかったら1点入ってた」。具体的な場面とセットにすると、本人にも届きます。
もう1つ。少年期のポジションは固定ではありません。学年が上がるとポジションが変わる子はふつうにいますし、いろいろな場所を経験した子ほど、あとで伸びます。今のポジションは、その子の将来を決めるものではない——ここは親御さんに、いちばん伝えたいところです(ポジションが変わったときの受け止め方 も参考にしてください)。
11家で意識できること
家や公園でできるのは、1対1の守りの練習です。親がドリブルで進もうとし、子は「奪わなくていい、通させないだけ」というルールで、体を入れて遅らせます。足を出さずにがまんできたら大成功。「取りにいくな、抜かせるな」を体で覚えると、試合の守備が安定します。飛び込みグセのある子ほど、この練習が効きます。
12がまん1対1(家でできるDF練習)
幅3〜4歩くらいの通り道を作り、親がドリブルで抜けようとします。子どもは奪いにいかず、体をななめ(半身)にして前に立ち続けるだけ。20秒間、通されなければ子どもの勝ちです。慣れてきたら親が左右に振って、ついていけるかを見ます。
13カバーの三角(親子3人でできる)
兄弟や親2人で。1人が攻める役、子どもともう1人が守る役です。守る2人のうち前の人がボールに向かい、後ろの人は『ななめ後ろ』に立って待ちます。前の人が抜かれたら、後ろの人が止める。役割を交代しながら繰り返します。
「『飛び込むな、遅らせろ』を教えたら、抜かれる回数が激減。守備が武器になった」
「地味なポジションと思っていたけど、立ち位置で危険を消す頭脳戦だと知って見方が変わった」
「声を掛け合う大切さを教えたら、味方と連携できるようになりコーチにほめられた」
よくある質問
DFは地味なポジションですか?
見た目は地味でも、実はチームで一番頭を使う頭脳的なポジションです。抜かれない立ち位置、危険なスペースを先に消す予測、味方との連携など、判断力が問われます。ピンチを未然に防ぐDFがいるとチームは安心して攻められ、コーチからも最も信頼される存在です。
守備で抜かれてばかりです。何を直せば?
まず『飛び込まない』ことです。抜かれる子の多くは、あわてて足から突っ込み、その一瞬で横を抜かれています。足を出さずに相手の前に立ち続け、進むのを遅らせる(ディレイ)のが基本。奪うのは味方が戻って数で囲めたとき、または相手が大きく蹴り出した瞬間だけです。
立ち位置とは、具体的にどうすればいい?
相手が通したいパスのコースや、相手が抜け出したいスペースに、あらかじめ立っておくことです。ボールばかり見るのではなく、相手・味方・スペースを見て、危険な所に先に立つ。これができると、相手はやりたいことができなくなり、奪う前に危険を消せます。
体が小さくてもDFで活躍できますか?
できます。DFで大事なのは体の大きさより、抜かれない間合い・予測・立ち位置・味方との連携です。飛び込まずに粘れる子、危険を先読みできる子は、小柄でも格上の相手を止めます。むしろ守備は、頭の良さと我慢強さが活きるポジションです。
家でできる守備の練習はありますか?
1対1の守りがおすすめです。親がドリブルで進もうとし、子は『奪わなくていい、通させないだけ』というルールで体を入れて遅らせます。足を出さずにがまんできたら大成功。飛び込みグセのある子ほど効果的です。詳しくは1対1の守り方の記事も参考にしてください。
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