試合を見ていて、いちばん胸がザワッとする瞬間——それは、相手のドリブラーが自分の子めがけて仕掛けてきたとき。「行け!」と声が出るのに、次の瞬間スッと抜かれて、置いていかれる。「うちの子、1対1になると必ず抜かれるな…」と感じているパパ・ママは、本当に多いです。でも大丈夫。1対1の守りは、足の速さやセンスではなく、「立ち方」と「がまん」で驚くほど変わります。この記事を読み終えるころには、家や公園で親子でできる守備の練習と、試合中にかけてあげる声かけまで、まるごと分かるようになります。
1対1の守りでいちばん大事なのは、①抜かれない距離をとる ②体を斜め(半身)にする ③飛び込まずに粘るの3つ。逆に、いちばんやってはいけないのが「ボールを取ろうと突っ込むこと」です。まずはこの3つを親子で練習すれば、抜かれる回数がぐっと減ります。→ 家でできる守備ドリルを今すぐ見る
この記事は、少年サッカーの現場に立つ現役のU10・8人制コーチが監修しています。毎年たくさんの子を見ていて断言できるのは、1対1で守れる子は、足が速い子ではないということ。むしろ足が遅くても、間合い(相手との距離)の取り方がうまい子は、格上のドリブラーを何度も止めます。実際、私のチームでいちばん守備がうまい子は、学年で足の速さは真ん中くらい。それでも、練習で「飛び込まない」を1か月続けただけで、1試合あたりに抜かれる回数が半分以下になりました。守備は、才能ではなくくり返しで確実に伸びるところなんです。
01守備でいちばん大事なのは「抜かせない距離」
まず、いちばん大事な考え方からお伝えします。1対1の守りのゴールは、「ボールを奪うこと」ではありません。本当のゴールは、「かんたんに抜かせないこと」です。ここを勘違いしていると、子どもはずっと抜かれ続けます。
サッカーの守備には、間合い(まあい)という言葉があります。むずかしく聞こえますが、「相手との距離」のことだと思ってください。この距離が近すぎても遠すぎてもダメで、ちょうどいい距離を保てる子が、いちばん抜かれにくいんです。
相手のボールに、一歩踏み込めば足が届くか届かないか——それがちょうどいい距離です。近すぎると抜かれ、遠すぎると自由にされる。「手を伸ばしても届かないけど、一歩で届く」くらいが目安です。
02NGは「突っ込む」。なぜ抜かれるのか
1対1で抜かれる子の、いちばん多いパターンがこれです。相手がボールを持った瞬間、「取りに行こう!」と勢いよく足から突っ込んでいく。気持ちは分かります。ボールを取りたいですから。でも、これがいちばん抜かれる原因なんです。
① 足から突っ込む(重心が前に流れて、方向転換できない)
② 正面で棒立ち(左右どちらにも一歩目が遅れる)
③ 目線がボールだけ(フェイントに引っかかる)
とくに①が最大のNG。一度足を出して届かなかったら、相手はそのすきに横をスッと抜けていきます。
なぜ突っ込むと抜かれるのか。理由はかんたんで、人は片足を前に出した瞬間、逆側に動けなくなるからです。ドリブルのうまい子は、まさにその「足を出した瞬間」を待っています。だから守りの正解は、その逆。足を出さずにガマンして、相手の前に立ち続けること。取りにいくのではなく、「進ませない」のが仕事です。これを現場では遅らせる(ディレイ)と呼びます。相手のスピードを止めて、味方が戻ってくる時間をつくる——これができる子は、コーチから見て本当に頼もしいです。
では、ここからは家や公園で親子でできる練習を4つ紹介します。特別な道具はいりません。ペットボトルや靴で十分です。
03間合い取り(ミラー鬼ごっこ)
親が「攻め」、子が「守り」。親がゆっくり左右に動くのを、子は正面をキープしたまま、鏡のように同じ方向へついていきます。親に一歩で触れる距離を保つのがルール。
このドリルの目的は、「相手についていく距離感」を体で覚えること。抜かれる子の多くは、この距離が毎回バラバラです。まずはボールなしで、相手との距離を一定に保つ感覚だけを育てます。親が急に方向を変えて、子がついてこられたら「今の完璧!」と大げさにほめてあげてください。
04半身(はんみ)ステップ
体を真正面ではなく、少し斜めに向けて構えます。この『半身』の姿勢のまま、サイドステップで左右に小さく動く練習。かかとを浮かせ、つま先で細かく。
半身(はんみ)とは、体を相手に対して少し斜めに向けた構えのこと。真正面で棒立ちになると、右にも左にも一歩目が遅れます。でも半身に構えると、相手を片側に追い込みやすく、抜かれても追いかけやすい。プロの守備がうまい選手は、たいていこの半身です。「正面で立たない」——これを覚えるだけで、守備は一段レベルが上がります。
ここで一つ、道具の話も。半身のステップやピタッと止まる動きは、足元がすべると台無しになります。とくにグラウンドの状態によっては、足に合ったシューズかどうかで踏ん張りが大きく変わります。もし今のシューズで「すべって止まれない」場面が多いようなら、グリップの効くタイプを検討する価値があります(ムリに買い替える必要はありません。あくまで、すべりが気になる場合の話です)。
△ここだけ注意:このモデルは裏に突起のあるスパイクなので、低学年やまだスパイクに慣れていない子には早いことがあります。学年と足型に迷ったら、次の比較ページで確認するのが安心です。→ 学年・足型からピッタリを選ぶ
05遅らせる1対1(コーンゴール)
ペットボトル2本を1〜2mはなして『ゴール』に。親がドリブルで、そのゴールを通ろうとします。子は奪わなくてOK。『できるだけ長く通させない』のが勝ち。
これが、この記事でいちばん大事なドリルです。ねらいは「飛び込まずに粘る」を体にしみ込ませること。ポイントは、子どもに「ボールを取れ」と言わないこと。取ろうとすると必ず突っ込んでしまうからです。「通させないだけでいい」と伝えると、子どもは自然と足を出さずに我慢するようになります。ガマンできた時間をストップウォッチで計って、昨日より1秒でも長ければ大成功。奪えなくても「よく粘った!」とほめてあげてください。
061対1ゲーム(仕上げ)
03〜05を全部使う実戦練習。親(攻め)がドリブルで前に進もうとし、子(守り)が止める。今度は本気で奪いにいってもOK。ただし『飛び込むのは1回だけ』の縛りをつけます。
最後は実戦形式で、これまでの3つを合体させます。ここでのテーマは「奪うタイミングを1回だけ選ぶ」。守備は、ずっとガマンした先に、たった一度だけ奪うチャンスが来ます。それは相手がボールを大きく蹴り出した瞬間や、下を向いた瞬間。この「ここだ」の一回を見極められるようになると、1対1は一気に楽しくなります。
07攻める子の視点も少しだけ
守備を練習すると、実は攻めも一緒にうまくなります。なぜなら、「守る側が何を嫌がるか」が分かるからです。守備の子が突っ込んできた瞬間に横を抜く、相手が正面で棒立ちなら思いきってスピードで勝負する——攻める側は、この「守備のスキ」を突くのが仕事。だから親子で練習するときは、攻めと守りを交代でやるのがおすすめです。両方の立場を知っている子は、試合での駆け引きがぐんとうまくなります。
「『取りに行くな、通させるな』と言い方を変えただけで、うちの子が急に抜かれなくなった。コーチの言う通りだった」
「足が遅いのを気にしていたけど、間合いの練習をしてから『守備がうまいね』とほめられるように。本人の自信につながった」
「親子でやると、私(親)が本気で抜きにいくので盛り上がる。運動不足解消にもなって一石二鳥です」
「『飛び込まない』が最初は難しくて、つい足が出ていた。ストップウォッチで計るようにしたら、ゲーム感覚でガマンできるようになった」
守備の練習は、急な切り返しや止まる動きが多く、地面がぬれていたり足に合わない靴だとすべって転びやすいです。まずは平らで乾いた場所で、ムリのないスピードから。「ケガをしないこと」がいちばん大事なので、疲れてフォームが崩れてきたら、その日は終わりにしましょう。成長やケガの心配は個人差が大きいので、気になることがあれば専門家に相談を。
よくある質問
1対1で必ず抜かれます。何から練習すればいい?
まずは「飛び込まない」練習からがおすすめです。抜かれる子の多くは、ボールを取ろうと足から突っ込んで、その一瞬で横を抜かれています。記事のドリル05『遅らせる1対1』のように、『奪わなくていい、通させないだけ』というルールで練習すると、自然とガマンできるようになり、抜かれる回数が減ります。
足が遅い子でも守備はうまくなりますか?
なります。1対1の守りは足の速さより、相手との距離(間合い)の取り方と、飛び込まずに粘る我慢強さで決まります。足が遅くても間合いがうまい子は、格上のドリブラーを何度も止めます。むしろ守備は、足の速さに自信がない子が活躍できる場面でもあります。
『半身』がうまくできません。コツは?
「おへそを少し横に向けて」と声をかけてあげてください。真正面ではなく体を斜めにするだけで半身になります。最初は動かず、その姿勢で立つだけでOK。慣れてきたら、その半身のままサイドステップで左右に小さく動く練習(ドリル04)に進みましょう。
つい足を出して抜かれます。どう直せば?
『足を出していいのは1回だけ』とルールを決めるのが効果的です。むやみに出さなくなり、本当に奪えるタイミング(相手が大きく蹴り出した瞬間・下を向いた瞬間)を選べるようになります。ストップウォッチで『我慢できた時間』を計ってゲームにすると、子どもも楽しく続けられます。
家の中や狭い場所でもできますか?
間合い取り(ドリル03)や半身ステップ(ドリル04)はボールを使わないので、室内や狭い場所でもできます。ただし急な切り返しは転倒に注意し、家具のない広めのスペースで。ボールを使う1対1は、平らで乾いた屋外がおすすめです。すべって転ぶとケガのもとなので、足に合った靴で行いましょう。
守備の練習は、止まる・踏ん張る・切り返すの連続。だからこそ、足元のグリップが合っているかどうかで、上達のスピードも安全性も変わってきます。学年や足の形からお子さんに合う一足を選びたい方は、比較ページをどうぞ → 比較ランキングで学年・足型からピッタリを選ぶ
そして、守備で身につけた駆け引きは、そのまま攻めにも活きます。家でできる攻めの練習はこちら → 家でできるドリブル練習/ポジションごとの守り方の違いは ポジションの役割ガイド で解説しています。
「サッカーが上手い選手より、サッカーを通じて“かっこいい大人”を育てる」
少年サッカーの育成年代を指導して3年目、これまで延べ50名ほどの子どもたちと向き合ってきた現役コーチ。判断力・認知・立ち位置・パススピード・切り替え、GKからのビルドアップを軸に、「個の前進力」と「戦術理解」の両立を追求しています。毎月、練習設計と自己内省をレポートにまとめてPDCAを回す、分析型の指導者です。
現場でサッカー未経験の保護者の声を大切にしてきました。専門用語をゼロに噛み砕き、「親が今日からできること」に翻訳してお届けします。
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