試合を見ていて、相手をスッとかわして前に出ていく子を見ると、「うちの子も、ああやって抜けたら楽しいだろうな」と思いますよね。でも家に帰って「フェイントの練習しよう」と言っても、何を教えればいいのか分からない——サッカー未経験のパパ・ママなら当然です。じつはフェイントは、生まれつきのセンスではなく「型」と「くり返し」で身につきます。この記事を読み終えるころには、家や公園で親子でできるフェイント練習が、順番どおりに分かるようになります。
フェイントは、技をたくさん覚えるより「1つを、自信を持って出せる」ほうが試合で効きます。低学年はまず「止まる・向きを変える」ボディフェイントから。大事なのは技の派手さではなく、相手の重心を逆に動かすこと。まずは1つを親子でくり返しましょう。
→ 家でできる練習と、足に合う一足を見る
この記事は、少年サッカーの現場に立つ現役のU10・8人制コーチが監修しています。現場で断言できるのは、技をたくさん知っている子より、1つの技を迷わず出せる子のほうが抜けるということ。実際、うちのチームでいちばんドリブルがうまい子は、特別な技を持っているわけではありません。ただ「止まる→急に加速」という一番シンプルな緩急を、誰よりも思い切りよく出せるだけ。フェイントは、才能ではなく「自信を持ってやり切る回数」で伸びるんです。
01フェイントの正体は「重心を逆に動かす」
まず、いちばん大事な考え方から。フェイントとは、相手にウソの情報を見せて、重心を逆に動かすことです。派手な足技そのものが目的ではありません。
相手(守る子)は、こちらが行きたい方向を予測して体を寄せてきます。そこで「右に行くふり」を見せて、相手が右に体重をかけた瞬間に左へ抜ける——これがフェイントの正体。だから、足を速く動かすことより、「相手がだまされて動いたか」が全て。ゆっくりでも、相手が引っかかれば大成功です。
「フェイント=足を速くたくさん動かすこと」だと思って、その場で足だけバタバタ動かす子がいます。でも相手の重心が動かなければ、どんなに派手でも抜けません。大事なのは速さより、相手をだます「間(ま)」と方向です。
02抜くためではなく「時間を作るため」
ここが、この記事でいちばん伝えたいことかもしれません。フェイントは「抜くための技」ではなく、「時間を作るための技」です。
試合中の子どもを見ていると、フェイントを仕掛けて抜けなかった瞬間に、動きが止まってしまう子がとても多い。「失敗した」と思うからです。でも実際には、相手が一歩でも逆に動いた時点で、0.5秒ぶんの余裕が生まれています。その余裕でパスを出せば、それは大成功のプレーなんです。
うちのチームで、5年生にこう言い換えたことがあります。「抜けなくていい。相手を一回止められたら勝ち」。それだけで、仕掛ける回数が明らかに増えました。抜くのがゴールだと、失敗が怖くて出せない。でも「相手を止める」ならハードルが低い。結果として、抜ける回数も増えました。
✕「抜けなかったね」
◯ 「今、相手を一回止めたね」
仕掛けた結果ではなく、相手が動いたかどうかを見てあげてください。子どもは「効いてた」と分かった技を、次の試合でもう一度出します。
03低学年が最初に覚えるべきは2つだけ
1〜3年生に、いきなり難しい足技を教える必要はありません。まず教えたいのは、技より「緩急(かんきゅう)」——スピードの変化です。
ゆっくりドリブル → 急にダッシュ。 これだけで、立派なフェイントになります。相手はゆっくりに合わせて油断するので、急な加速についてこられません。プロでも、いちばん多く使う「フェイント」は、じつはこのシンプルな緩急です。技を10個覚えるより、この緩急を思い切りよく出せるほうが、試合ではずっと抜けます。
低学年に絞るなら、覚えるのは次の2つだけで十分です。
- ①緩急:ゆっくり運ぶ → 急にスピードを上げる。足技ゼロ。今日からできる。
- ②ボディフェイント:足は動かさず、肩と顔を「行くふり」の方向へ大きく振る。次に説明します。
この2つは、どちらもボールを難しく扱わないのが共通点です。低学年はボールを止めておく技術がまだ発展途上なので、足技を増やすとボールが体から離れて、結局取られます。ボールに手をつけずに相手をだませる方法から入る——これが遠回りに見えて一番早い順番です。
04フェイントが効かない子の共通点
「うちの子、フェイントを練習しているのに全然抜けない」——この相談を受けたとき、私が最初に見るのは技の形ではありません。スピードを変えているかどうかです。
効かない子には、はっきりした共通点があります。一定の速さのまま、技だけをやっている。シザースをまたぐ前も、またいだ後も、同じ速度で走っている。これでは相手は何も迷いません。技は速度が変わるための合図であって、技そのものに人を止める力はないんです。
お子さんの試合動画があれば、フェイントの場面だけ見てください。技の直後に、明らかに加速していますか? していなければ、原因はそこです。技の形をいくら直しても抜けません。「またいだら、全力で3歩」——これだけ伝えれば、その日のうちに変わる子もいます。
効かない理由は、他にもいくつかあります。
- 速すぎる:全力で走りながら仕掛けると、相手をだます「間」がなくなります。仕掛ける直前は、いったん遅くするのが正解。
- 相手を見ていない:ボールばかり見ていると、相手が引っかかったかどうか分かりません。顔を上げるだけで成功率が変わります。
- 毎回同じ方向:いつも右に抜ける子は、2回目から必ず読まれます。逆を1回混ぜるだけで効きます。
- やり切っていない:途中で「ダメかも」と思ってやめる。フェイントは最後までやり切らないと、相手は動きません。
05覚えたい基本フェイント3種
緩急に慣れたら、次の3つを1つずつ足していきましょう。全部を一度に教えないのがコツです。
- ボディフェイント:足は動かさず、上半身と首を「行くふり」の方向へ振る。いちばん簡単で、いちばん試合で効く。まずはこれから。
- 切り返し(カット):進んでいた方向から、足の内側でボールを止めて逆へ運ぶ。相手を置き去りにする基本技。
- シザース(またぎ):ボールを蹴るふりをして、足でボールをまたぐ。「右に行くぞ」と見せて左へ。見た目も楽しく、子どものやる気が上がる。
では、ここからは家や公園でできる練習を紹介します。特別な道具はいりません。ペットボトルや靴で十分です。
06ボディフェイント
ゆっくりドリブルしながら、右へ行くように上半身と首を大きく振り、実際は左へ運ぶ。親が正面に立ち、フェイントの方向と逆に動いてあげると『だませた』感覚がつかめます。
このドリルの目的は、「上半身で相手をだます」感覚を体で覚えること。フェイントがうまい子は、足技より先に、この体の揺さぶりが自然にできています。親が引っかかって逆に動いてあげると、子どもは「効いた!」と実感でき、どんどん大きく振るようになります。
ここで、足元の道具の話も少しだけ。フェイントは「止まる→切り返す→急に加速」の連続で、足元がすべると台無しになります。もし今の靴で「切り返すときにすべる」場面が多いなら、グリップの効くタイプを検討する価値があります(ムリに買い替える必要はありません。すべりが気になる場合の話です)。
△ここだけ注意:これは裏に突起のあるスパイクなので、低学年やスパイク未経験の子には早いことも。学年・足型に迷ったら比較ページで確認を → 学年・足型からピッタリを選ぶ
07シザース(またぎ)
止まったボールの上を、片足で外→内にまたぐ。またいだ足を着いたら、逆足でボールを外へ運ぶ。最初は止まったまま、またぐ動きだけを練習する。
シザースは見た目が派手で、子どもが「やりたい!」となる技。ただし速くまたぐより、またいだあと逆へ運ぶ動きが大事です。最初はボールを止めたまま、またぐ動作だけをくり返しましょう。順番を体で覚えてから、少しずつスピードを上げれば大丈夫です。
081対1で使ってみる
親が守り役になり、子が覚えたフェイントで抜きにいく。親は本気で止めず、フェイントに『引っかかってあげる』のが最初のコツ。抜けたら大げさに悔しがってあげる。
最後は実戦形式。ここでのテーマは「1つの技を、迷わず出し切る」。フェイントは、途中でためらうと絶対に抜けません。親は最初、わざと引っかかってあげて「抜ける楽しさ」を味わわせてください。成功体験が増えると、子どもは試合でも思い切って仕掛けられるようになります。
09どこで仕掛けるか|相手との距離の話
技の形と同じくらい大事なのに、ほとんど教えられていないのが「どこで仕掛けるか」です。同じフェイントでも、相手との距離で結果がまるで変わります。
目安はこうです。
- 遠すぎる(3m以上):相手は動きません。まだ届かないので、反応する必要がないから。ここで技を出す子はとても多く、いちばんもったいないパターンです。
- ちょうどいい(1.5〜2mくらい):相手が「来る」と身構えて重心が動く距離。ここで仕掛けると効きます。手を伸ばしても届かないくらい、と教えると子どもに伝わります。
- 近すぎる(1m以内):相手の足が届くので、技の途中で取られます。抜けたとしても接触が増えます。
低学年に距離の数字を言っても伝わらないので、「相手の顔が見えるくらいまで近づいてから」という言い方をしています。うちのチームでは、これを言い始めてから「遠くから技を出して、そのままスルーされる」場面が目に見えて減りました。
もうひとつ。近づく速さも大事です。全力で近づくと、自分が止まれずに通り過ぎてしまう。だから「速く近づいて、直前でゆるめる」。これができる子は、技が1つしかなくても十分に抜けます。
10家でできるフェイント練習
グラウンドが取れない、雨が続く、公園が混んでいる——そんなときでも、フェイントの土台は家で作れます。フェイントは走らなくても練習できる技だからです。
- 置いたボールでまたぐだけ(3分):ボールを止めたまま、シザースのまたぎを左右5回ずつ。テレビを見ながらでもできます。順番を体に入れるのが目的。
- 鏡の前でボディフェイント(2分):ボールなし。肩と顔を左右に大きく振るだけ。自分の振りが小さいことに、鏡で初めて気づく子が多いです。
- 親が指さした逆に運ぶ(5分):親が右を指したら、子は左へボールを運ぶ。判断とセットになるので、頭が動きます。廊下でもできます。
- 足裏でボールを止める→逆へ(3分):切り返しの土台。柔らかいボールなら室内でもOK。
- クッションを相手役にする:床に置いたクッションの手前で仕掛けて、逆に抜ける。目印があるだけで「距離感」の練習になります。
家でやるときの注意は3つ。やわらかいボールを使う・壊れ物のない場所でやる・ダッシュはしない。室内でスピードを出すと、必ずどこかにぶつかります。家は「形を覚える場所」、外は「速さをつける場所」と分けてください。
うちで「置いたボールで毎日3分またぐだけ」を宿題にしたとき、2週間続けた子は3人でした。その3人は、次の練習でシザースの手順を全く迷わなかった。1回30分を月1回より、3分を毎日のほうが、体の記憶には残ります。
11技は覚えたのに、試合で使えない問題
「家では上手にできるのに、試合になると一度も出さない」——これは、ほぼ全員が通る道です。原因は技術ではありません。「失敗が怖い」のと、「どれを出すか迷っている」の2つです。
技を5つ覚えた子は、相手が来た瞬間に5つの中から選ぼうとします。その迷いが0.3秒。その0.3秒で、相手はボールを奪います。だから技は増やさないほうがいいんです。「今日はシザースだけ」と決めて試合に出したほうが、確実に出ます。
✕「フェイント使ってみなよ」(何を?と迷う)
◯ 「今日は右のシザース、3回出しておいで」
技を1つ、回数を決める。これだけで出ます。結果は問わない。試合後は「何回出せた?」だけ聞いてください。
そして、逆の悩みもあります。仕掛けすぎて、味方を待たせてしまう子。ドリブルが好きな子ほどこうなります。パスできる場面でも一人で行き、取られる。周りの子から「早くパスして」と言われ、本人は不機嫌になる——現場でよく見る風景です。
ここで「パスしろ」と言うのは、いちばんダメな声かけです。仕掛ける勇気は、この年代で失うと戻ってきません。私が使っているのは、この言い方です。
- 「1回勝負でいこう」:仕掛けるのはOK、でも1回でダメなら次へ。ダラダラ持ち続けるのを止める言い方です。
- 「顔を上げて、それでも行きたかったら行け」:見た上で選んだなら、ドリブルでも正解。判断を否定しない。
- 「味方が走ってくれてるよ」:責めずに、事実だけ伝える。走ってくれた子の存在に気づくと、子どもは自分から出すようになります。
低学年のうちは、正直仕掛けすぎるくらいでちょうどいいです。パスの判断は、周りが見えてくる高学年で必ず伸びます。逆に、低学年で「パスしろ」と言われ続けた子は、高学年になっても仕掛けられません。順番が逆になると、取り返しがつかない——ここは強く言っておきます。
12学年別・どこまで求めるか
同じフェイントでも、学年で求める中身は変わります。目安を置いておきます。
- 低学年(1〜2年生):技は緩急とボディフェイントの2つだけ。成功率は問わない。「仕掛けたこと」だけをほめる。取られても何も言わない。
- 中学年(3〜4年生):得意技を1つ決める。シザースか切り返しのどちらか。ここで「またいだら加速」を教える。相手との距離も伝え始める時期。
- 高学年(5〜6年生):得意技2つ+逆。同じ方向ばかりだと読まれることを実感させる。「抜くか、パスか」の二択で考えられるようにする。仕掛ける場所(サイドか中央か)も話していい。
大事なのは、下の学年でやることを飛ばさないこと。5年生でも、緩急を出せない子はたくさんいます。技を足す前に、「ゆっくり→急に速く」が出せているかを必ず確認してください。ここが抜けたまま技だけ増やしても、試合では一度も抜けません。
「技をたくさん教えようとして失敗。1つに絞って『これだけやろう』にしたら、試合で使えるようになった」
「親が引っかかってあげると、うれしそうに何度もやる。楽しみながら上達しているのが分かる」
「足技より『ゆっくり→急にダッシュ』のほうが試合で抜けていた。シンプルなのが一番効くみたい」
「シザースを覚えたくて自分から練習するように。『やりたい技』があると練習が続く」
13よくある質問
フェイントは何歳から教えればいいですか?
低学年(1〜3年生)からでも大丈夫ですが、難しい足技より『ゆっくり→急にダッシュ』の緩急や、上半身で揺さぶるボディフェイントから始めるのがおすすめです。まずはボールを自由に運べることが土台。技はその後で、1つずつ足していけば十分です。
たくさん技を覚えたほうがいいですか?
いいえ。技の数より『1つを自信を持って出せる』ほうが試合では抜けます。フェイントは途中でためらうと効きません。まずは得意な技を1〜2個に絞り、迷わず出し切れるまでくり返すのが近道です。技のコレクションより、やり切る勇気を育てましょう。
家の中でも練習できますか?
ボディフェイントやシザースの『またぐ動き』は、やわらかいボールを使えば室内でもできます。ただし急な切り返しやダッシュは転倒や物にぶつかる危険があるので、広い場所や屋外がおすすめです。室内では壊れ物のない場所で、ゆっくりした動きの確認にとどめましょう。
試合で全然フェイントを使いません。どうすれば?
多くは『失敗が怖い』からです。まず家で親相手に成功体験をたくさん積ませ、『抜けると楽しい』を感じさせてください。試合では結果より『仕掛けたこと』をほめるのが効果的。抜けても抜けなくても『今の挑戦よかった』と声をかけると、少しずつ出せるようになります。
フェイントばかりで、パスをしなくなりました。
低学年のうちは、むしろ『仕掛ける』経験をたくさん積むのは良いことです。ただ、周りが見えてきたら『抜くか、味方に出すか』の判断も大切になります。『抜けそうなら仕掛けていい、味方がフリーなら見てあげよう』と、二択で考えられるよう声かけしてあげましょう。
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育成年代の指導3年目、延べ50名ほどの子どもたちと向き合ってきた現役コーチ。判断・認知・立ち位置を軸に「個の前進力」と「戦術理解」の両立を追求しています。
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