試合中、審判が笛を吹いて手を上げたり、腕を横に伸ばしたり——「今のジェスチャー、どういう意味?」と思いながら、なんとなく見過ごしていませんか。じつは審判の合図(シグナル)には、ちゃんと決まった意味があります。それを知ると、笛の理由がその場で分かり、観戦が一気に面白くなります。この記事を読み終えるころには、審判の動きを見て「あ、今のはこれだ」と分かるようになります。
審判の合図は、大きく分けて「腕をまっすぐ前や斜めに伸ばす=どっちのボールか(方向)」と、「腕を上げる=止める・特別な再開」の2系統。全部覚えなくても、腕が指す方向=そっちのチームのボールだけ分かれば、観戦の8割は困りません。
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この記事は、少年サッカーの現場に立つ現役のU10・8人制コーチが監修しています。保護者の方は「笛は聞こえるけど、何が起きたか分からない」まま観戦していることが多いもの。でも、審判の合図はいわば“体で見せる字幕”。基本のいくつかを知るだけで、試合の流れが手に取るように分かります。少年サッカーでは保護者が審判を手伝うこともあるので、覚えておくと役立つ場面もあります。専門用語を避け、よく見る合図に絞って解説します。
01合図は2系統だけ覚えればOK
審判の合図はたくさんあるように見えますが、観戦のためなら2系統だけ知っていれば十分です。
① 方向を示す合図:腕を前や斜めに伸ばす。「そっちの方向のチームのボールですよ」という意味。
② 止める・特別な合図:腕を上に上げる。「プレーを止めた」「特別な再開(間接FKなど)」の合図。
まずは「腕が指す方向=そのチームの攻撃」だけ押さえましょう。
この2つが分かれば、「今のは○○チームのボールね」「今プレーが止まったのね」がすぐ分かります。細かい合図は、慣れてきたら少しずつ覚えれば十分です。
02方向の合図|どっちのボールか
いちばんよく見るのが、この方向の合図です。審判が腕をまっすぐ、または斜め上に伸ばして、片方のゴールの方向を指します。これは「腕が指すほうへ攻めるチームのボール」という意味。
たとえば、スローインやフリーキックのとき、審判が右のゴール方向に腕を伸ばしたら「右へ攻めるチームのボール」。これで、どちらがボールを持って再開するかが一目で分かります。腕の向き=攻撃方向——これさえ押さえれば、観戦中の「今どっちのボール?」はほぼ解決します。
同じ「方向を指す」でも、腕の高さで再開の種類が見分けられます。よく見る4つを並べます。
- 腕を水平(地面と平行)にまっすぐ伸ばす:フリーキックやスローインなど、その方向のチームのボール。いちばん見る形です。
- 腕を斜め上に上げ、コーナー付近を指す:コーナーキック。旗の立っている角を指すので、視線を追うと分かりやすい。
- 腕を斜め下に、ゴールエリア(ゴール前の四角)を指す:ゴールキック。守るチームがゴール前から蹴って再開します。
- ペナルティマーク(ゴール前の点)を指す:PK。腕をまっすぐその点に向けます。少年サッカーでも起こります。
腕の高さまで見なくても大丈夫です。まずは「どっちを指しているか」だけ。慣れてくると、腕の高さで「あ、コーナーだ」と先回りできるようになります。
もうひとつ、笛の吹き方にも意味があります。短くピッと1回=通常のファウルやアウトオブプレー、強く長く吹く=重い反則やPK、あるいは危険なプレー。「いつもより長い笛だな」と感じたら、たいてい何か大きいことが起きています。試合の開始・終了や、飲水のための中断では短く2回・3回と吹き分ける審判もいます。ただし、この吹き分けは審判個人のクセや大会の運用による部分も大きいので、「絶対にこう」とは思わないでください。
03止める・特別な合図
もう1つの系統が、腕を上げる合図です。代表的なものを挙げます。
- 腕をまっすぐ上に上げ続ける:間接フリーキックの合図。「このFKは直接ゴールを狙えず、誰かが触ってから」という意味。ボールが蹴られて他の選手が触れるまで腕を上げ続けます。
- カードを出す:黄=警告(イエロー)、赤=退場(レッド)。少年サッカーではあまり出ませんが、危険なプレーへの注意です。
- 両手でゴールを示す/センターを指す:得点が認められたとき。センターサークルを指して「ゴール、再開はキックオフ」を示します。
直接フリーキックのときは、審判は蹴る方向に腕を伸ばすだけ(腕は上げ続けません)。「腕が上がりっぱなし=間接FK」と覚えておくと、その違いが分かります。
この「腕を上げ続ける」動きは、保護者がいちばん誤解しやすい合図です。腕を上げているあいだは、審判は「まだこのキックは終わっていませんよ」と全員に伝え続けているんです。誰かがボールに触れた瞬間、腕はすっと下ります。逆に、蹴ったボールがそのままゴールに入っても、腕が上がったままなら得点は認められず、相手のゴールキックで再開になります。ここを知らないと「入ったのになんで?」となる。実際、監修コーチのチームの試合でも、間接FKが直接ゴールに入って観戦席がざわついたことがあります。腕を見ていた保護者は数人だけでした。
そしてもう1つ、少年サッカーでよく出るのに意味が伝わりにくいのが「手を振る」動きです。
- 両腕を前方へすくい上げるように振る:アドバンテージ。「今のはファウルだけど、止めない方が攻めているチームに有利だから流します」という意味。笛は鳴りません。
- 手のひらを相手に向けて制止する:「待って、まだ蹴らないで」。壁を下げさせるときや、選手を落ち着かせるときに使います。
- 腕を大きく回す・呼び込む:交代選手を入れる、あるいは治療のためにスタッフをピッチへ呼ぶとき。
「ファウルっぽかったのに笛が鳴らない」場面のかなりの部分は、このアドバンテージです。審判が見逃したのではなく、あえて止めていない。ここが分かると、観戦中のモヤモヤがひとつ減ります。
04副審(線審)の旗の意味
試合によっては、サイドライン沿いに副審(線審)が立ち、旗で合図します。これも基本は方向と同じ考え方です。
- 旗を上げてから、方向を指す:ボールが外に出た=スローインやコーナー・ゴールキックの合図。指す方向のチームのボール。
- 旗を斜めや水平に上げる:オフサイドの合図。どのあたりでオフサイドがあったかを、旗の角度で示します。
オフサイドの旗は、まっすぐ上げる→主審が笛を吹く→角度で場所を示すという順で動きます。角度の意味はこう覚えると早いです。
- 旗を斜め上に向ける:遠いサイド(副審から見て向こう側)でのオフサイド。
- 旗を水平に伸ばす:ピッチの真ん中あたり。
- 旗を斜め下に向ける:手前のサイド(副審に近い側)。
交代のときは、副審が旗を頭の上で両手で水平に持つことがあります。「交代がありますよ」の合図です。少年サッカーでは交代ボードを使わず、コーチが声をかけて主審が手で呼び込むだけ、という簡略な運用もよくあります。
少年サッカーでは、保護者やコーチが副審(線審)を務めることもあります。もし頼まれたら、「ボールが外に出たら旗を上げて方向を示す」が基本の役目。難しく考えず、主審と協力すれば大丈夫です。
合図の意味が分かってくると、つい『今のはおかしい』と言いたくなることも。でも、観戦席から大声で審判に抗議するのは避けましょう。とくに少年サッカーは審判も保護者ボランティアのことが多く、子どもたちの見本になる態度が大切です。疑問は試合後に穏やかに確認を。
05少年サッカーならではの事情
少年サッカー、とくに8人制では、審判の合図は大人の試合ほど厳密でないこともあります。審判が保護者ボランティアだったり、教育的に「今のは危ないよ」と口で説明しながら進めたりするからです。
だから、合図が多少アバウトでも、あたたかく見守るのが大切。むしろ、審判をやってくれる方への感謝の気持ちを、子どもにも伝えたいところです。合図を知っておくと、「審判って大変なんだな」という理解も深まり、子どもがフェアプレーの精神を学ぶきっかけにもなります。
そして、これはきれいごと抜きの現実の話ですが、少年サッカーの審判は、保護者が回り持ちでやることがとても多いです。監修コーチのチームでも、週末の練習試合はほぼ保護者の当番。「サッカー経験ないんですけど」と言いながら笛を持つお父さん・お母さんが、毎回2人か3人はいます。
そこで実際に何が起きるか。いちばん多いのは「迷って笛が遅れる」ことです。ファウルかどうか迷っているうちにプレーが進んでしまい、止めどきを失う。次に多いのが、方向を指す腕が中途半端で、選手がどっちのボールか分からずキョロキョロする、という場面です。
① 迷ったら止める。危ない接触は、経験がなくても止めていい。子どものケガを防ぐのが最優先です。
② 方向の腕は、はっきり大きく。正確さより「見える」ことが大事。
③ 分からない判定は主審/本部に聞く。副審なら旗を上げて主審の判断に委ねて構いません。
完璧な判定より、試合が安全に流れることのほうが大切です。
06合図が読めると、観戦のイライラが消える
合図を覚える本当のメリットは、ルールに詳しくなることではありません。観戦中のストレスが減ることです。
考えてみてください。試合を見ていていちばんモヤモヤするのは、「今、何が起きたのか分からない」瞬間です。笛が鳴った、味方がボールを失った、なのに理由が分からない。分からないと、人はつい相手や審判のせいにしたくなります。ここから「今のファウルだろ!」という声が出るわけです。
ところが、腕の向きひとつ読めるだけで、この構図が変わります。「あ、腕が上がってるから間接FKだ」「両腕を振ったからアドバンテージで流したんだ」——理由が分かった瞬間、感情はスッと落ち着きます。分からないから腹が立つのであって、分かってしまえばただの進行なんです。
監修コーチのチームでは、シーズン途中の保護者会で、審判の合図を5分だけ説明した回がありました。その後の数試合、ベンチ横から審判に向けた声が明らかに減った実感があります。保護者から「今のは何だったのか分かるようになって、見ていて楽しくなった」という声も出ました。知識は、そのまま観戦の落ち着きになります。
07子どもと一緒に覚えると、審判へのリスペクトが育つ
もう一歩踏み込むと、合図は子どもへの教材としても優秀です。
低学年(1〜3年)の子には、細かいルールより「腕が指すほう=味方のボールか、相手のボールか」だけで十分。試合を見ながら「今どっちのボールだと思う?」とクイズにすると、勝手に覚えます。ルールを説明されるのは退屈でも、当てるのは楽しいからです。
中学年から高学年になると、「なぜその判定だったのか」を考えられるようになります。ここで効くのが、親の一言。「審判、よく見てたね」「今のは危なかったから止めてくれたんだね」。この言い方をしていると、子どもは判定を疑う前に理由を探すようになります。
逆に、親が「今の審判ひどいな」と言った試合の翌週、子どもがピッチ上で判定に手を上げて不満を示した——そういう場面を、監修コーチは何度も見ています。子どもは、親の口ぶりをそのままコピーします。合図を知ることは、判定を批評する材料を増やすためではなく、審判という役割の大変さを理解するために使ってほしいところです。
将来、その子自身が審判を任される日も来ます。そのとき「審判は大変な役だ」と知っている子は、必ず落ち着いてやれます。
08大会・地域で運用がちがうところ
ここまで紹介した合図は、基本的にどこでも共通です。ただし少年サッカーは、大会ごと・地域ごとにローカルルールが上乗せされるのが普通だと思っておいてください。
- 交代の回数・方法:自由に何度でも交代できる大会と、回数が決まっている大会があります。合図の出し方もそれで変わります。
- 飲水タイム(給水):暑い時期は試合を止めて水分補給を入れる運用が一般的。中断の笛が「反則」ではないことがあります。
- カードの扱い:低学年ではカードを出さず、口頭注意にとどめる大会もあります。
- 試合時間・ピッチサイズ:8人制は学年と大会で幅があります。
- 副審の有無:主審1人だけで、ラインは選手やコーチの自己申告に近い運用の試合もあります。
だから、その日の運用は必ず大会要項で確認してください。チームから配られる資料や、当日の本部説明に書かれています。「前の大会ではこうだった」を持ち込むと、いちばんややこしくなります。
ルール自体も、年ごとに競技規則が改定されることがあります。細かい部分は最新の要項と当日の本部の案内が優先、という前提で読んでもらえると安心です。
「腕の向きでどっちのボールか分かると気づいてから、観戦のストレスが減った」
「『腕が上がりっぱなしは間接FK』を知って、あの動きの意味がやっと分かった」
「線審を頼まれて不安だったけど、『外に出たら旗で方向』だけで何とかなった」
「審判の合図を子どもと一緒に覚えたら、サッカーへの理解が深まって会話も増えた」
09よくある質問
審判の合図を全部覚えないといけませんか?
いいえ。観戦のためなら『腕が指す方向=そのチームのボール』と『腕を上げっぱなし=間接フリーキック』の2つを知っていれば、ほとんどの場面が分かります。細かい合図は、観ているうちに少しずつ覚えれば十分です。まずは方向の合図から慣れましょう。
腕をまっすぐ上に上げているのは何の合図ですか?
間接フリーキックの合図です。『このフリーキックは直接ゴールを狙えず、誰かがもう一度触ってからでないと得点にならない』という意味。ボールが蹴られて他の選手に触れるまで、審判は腕を上げ続けます。腕が下りたら、そのまま流れます。
直接フリーキックと間接フリーキックの違いは?
直接フリーキックはそのまま蹴って直接ゴールを狙えます(審判は方向に腕を伸ばすだけ)。間接フリーキックは、いったん他の選手が触れないと得点になりません(審判は腕を上げ続けます)。『腕が上がりっぱなしか』で見分けられます。
副審(線審)は保護者がやってもいいの?
少年サッカーでは、保護者やコーチが副審(線審)を務めることがよくあります。基本の役目は『ボールが外に出たら旗を上げて方向を示す』こと。オフサイドの判定は難しければ主審に任せて大丈夫です。頼まれたら、できる範囲で協力すれば十分です。
判定に納得できないときはどうすれば?
観戦席から大声で抗議するのは避けてください。少年サッカーの審判は保護者ボランティアのことも多く、子どもたちはその態度を見ています。親が冷静でいることが、子どもの安心とフェアプレーの学びにつながります。疑問があれば試合後に穏やかに確認しましょう。
ルールと合図が分かると、観戦はぐっと深くなります。お子さんが気持ちよくプレーできるよう、足元も整えてあげたい方は、比較ページをどうぞ。
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育成年代の指導3年目、延べ50名ほどの子どもたちと向き合ってきた現役コーチ。判断・認知・立ち位置を軸に「個の前進力」と「戦術理解」の両立を追求しています。
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