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ルール入門

リトリートラインとは|8人制で「なんで攻めないの?」の答え|現役U10コーチ監修

PITCH NAVI 編集部|2026.07.20 更新|読了 約9

監修現役 U10・8人制サッカーコーチ指導3年目・延べ50名を指導

試合中、相手チームのゴールキックになった瞬間、味方の子たちが一斉に後ろへ下がっていく。相手はゆっくりボールをセットして、落ち着いてパスを回し始める。隣で見ていたお父さんが「なんで攻めないの? 今行けば取れるじゃん!」と声を上げる——。少年サッカーの会場で、毎週どこかで起きている光景です。あれ、サボっているわけでも、消極的なわけでもありません。リトリートラインというルールに従っているだけ。この記事を読み終えるころには、あの線の意味と、子どもがいつ攻めていいのかがはっきり分かります。

\ 時間がない人へ・先に結論 /

リトリートラインとは、相手ゴールキックのときに、守る側がいったん下がって待つ線のことです。目的は、後ろから丁寧につなぐ経験を子どもに積ませること。攻めていいのは、原則としてボールがその線を越えてから。8人制特有のルールで、大会によって有無も運用も違います。必ず大会要項を確認してください。8人制の全体像は → 8人制サッカーのルール完全ガイド

この記事は、少年サッカーの現場に立つ現役のU10・8人制コーチが監修しています。監修コーチのチームでも、リトリートラインのある大会に初めて出た保護者から、試合後に必ずと言っていいほど同じ質問を受けます。「今日、うちの子たち何回か行けそうな場面で行かなかったんですけど、指示ですか?」。年に何回聞かれるか数えたら、3年で20回を超えていました。それくらい、親からは分かりにくいルールなんです。

そして面白いのが、子どもたちはちゃんと分かっているということ。低学年でも「あの線を越えるまでは行っちゃダメ」を数回で覚えます。分かっていないのは、たいてい観ている大人のほうなんです。

01リトリートラインとは何か(1分で分かる)

まず、いちばんシンプルな説明から。

リトリートラインとは、相手チームのゴールキック(キーパーがゴールエリアから蹴り出す再開)のときに、守る側のチームがいったん自陣へ下がって待つための線のことです。「リトリート」は英語で「退く・後退する」という意味。名前のとおり、いったん引くための線です。

コートのどこに引かれるかは大会によって違いますが、多くはハーフウェイライン(センターライン)付近やその手前に設定されます。線が引かれていないコートでは、「センターラインまで下がる」といった形で運用されることもあります。

\ 3行で理解する /

① 相手がゴールキックになる
② 守る側はリトリートラインまで下がって待つ(前から取りに行かない)
ボールがラインを越えたら、そこから普通に守っていい

つまり「最初の一手だけは、相手に自由にやらせてあげる」ルールです。

大事なのは、ずっと下がっていなければいけないルールではないということ。あくまでゴールキックの再開の瞬間だけの話です。ボールが動いて線を越えれば、そこからは通常どおり。実際の試合では、10秒もかからずに解除されます。

02なぜこのルールがあるのか

ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。このルールは、子どもを守るためではなく、子どもを伸ばすためにあります

リトリートラインがないとどうなるか。少年サッカーでは、ゴールキックの瞬間に相手が全員でゴール前に詰めてきます。キーパーはあわてて大きく蹴るしかない。すると、試合中ずっと「とりあえず前に大きく蹴る」しか起きなくなる。ボールは行ったり来たり、たまたま前にいた子が拾って点が入る。これでは、後ろから組み立てる経験がまったく積めません。

⚠ リトリートラインがないと起きること

① キーパーがとにかく大きく蹴るだけになる
② ディフェンスの子がボールを受ける経験をしない
③ ボールが宙を行き来するだけの「蹴り合い」になる
④ 体の大きい子・足の強い子だけが目立つ試合になる

短期的には点が入りやすくても、長い目で見ると誰もうまくなりません

リトリートラインがあると、キーパーは落ち着いて近くの味方に出せます。受けたディフェンスの子は、顔を上げて次の味方を探す。中盤の子は、受けられる場所に動く。この一連が、毎試合何回も練習できる。これがこのルールの狙いです。

監修コーチのチームで印象に残っているのが、いつも大きく蹴るだけだった低学年のキーパーの子です。リトリートラインのある大会に出た日、試合の中で初めて足元の味方にパスを出しました。最初はぎこちなくて、2回に1回は相手に渡してしまう。でも大会が終わるころには、味方の位置を見てから蹴るようになっていました。あの数試合で身についたものは、練習だけでは作れなかったと思います。

「後ろから丁寧につなぐ」というのは、上手なチームだけの高級な技術ではありません。顔を上げる、近くの味方を見る、落ち着いて止めて蹴る——全部、サッカーの基本です。リトリートラインは、その基本を試合の中で強制的に体験させる仕組みなんです。

03いつ攻めていいのか|解除のタイミング

親からいちばん多い質問がこれです。「じゃあ、いつから行っていいの?」

原則はシンプルで、ボールがリトリートラインを越えたら、そこから普通に守備をしていい。つまり、相手が線の手前でパスを回しているあいだは待つ。ボールが線を越えて自陣に入ってきた瞬間から、奪いに行っていい、という形です。

ただし、ここは大会によって細かい違いがあります。よくある運用の違いを挙げると——

    • ボールがリトリートラインを越えた時点で解除(いちばん多い形)
    • ボールがゴールエリアから出た時点で解除
    • 攻撃側の選手がボールを持ってラインを越えた時点で解除
    • キーパーが蹴った瞬間に解除(=下がるのはセット中だけ)

どれになるかは要項次第です。「うちの子のチームでは去年こうだった」が、今年の大会でも同じとは限りません。ここは本当に注意してください。

⚠ ラインを越える前に取りに行くとどうなる?

守備側がラインを越える前に前へ出た場合、多くは審判が笛を吹いて、ゴールキックのやり直しになります。繰り返すと注意を受けることもあります。

ただし罰則の内容も大会によって違います。「やり直し」だけの大会もあれば、「相手に間接フリーキック」とする大会もある。ここも要項で確認を。子どもが混乱しないよう、試合前にコーチが必ず説明しますので、親御さんはそれを聞いておくと観戦がぐっと分かりやすくなります。

もうひとつ知っておくと便利なのが、このルールがゴールキック以外には適用されないことです。スローイン、コーナーキック、キーパーがボールを手でキャッチしたあとの再開など、他の場面では通常どおり。ゴールキックの再開に限った話だと覚えておいてください。ゴールキックそのものの基本はゴールキックとキックオフのルールにまとめています。

04大会によって違う|要項の確認ポイント

ここは何度でも強調しておきます。リトリートラインは、すべての大会にあるわけではありません

同じ8人制でも、導入している大会・していない大会があります。地域によっても、主催団体によっても、対象学年によっても違う。「低学年の部だけ導入、高学年はなし」という大会もあれば、その逆もある。去年と今年で運用が変わることも普通にあります

\ 大会要項でここを見る /

① そもそもリトリートラインがあるか
どこに線を引くか(センターラインか、その手前か)
いつ解除されるか(ボールがライン通過か、ゴールエリア外か)
違反したときの処置(やり直しか、別の罰則か)
対象学年(低学年のみ、など)

この5点が分かれば、観戦中に迷いません。

親御さんが要項を隅々まで読む必要はありません。試合前のコーチの説明を1分聞いておくだけで十分です。多くのチームでは、大会の初戦前に子どもたちへ説明します。その場にいれば、その日の運用が分かります。

05「なんで攻めないの?」の正体

ここまで読んでいただければ、もう答えは出ていると思います。あの場面で子どもが動かないのは、ルールを正しく守っているからです。

ただ、観ている側からすると、本当に紛らわしい。相手のキーパーが目の前でゆっくりボールを置いていて、味方は誰も行かない。しかも相手がスムーズにパスを回して前進していく。「行けば取れたのに」と思ってしまうのは、自然な感情です。

⚠ この一言は、子どもを混乱させます

「なんで行かないんだ!」「取りに行け!」——観客席からのこの声が、いちばん困ります。

子どもはコーチの指示とルールに従って正しく待っているのに、親から逆のことを言われる。すると次の試合で、ルールを破って前に出てしまう子が出てきます。混乱するのは子どもです。

OK/声をかけるなら「ナイス、よく待った」。待つのも立派なプレーです。

そして、もうひとつ知っておいてほしいこと。あの数秒間、子どもたちは何もしていないわけではありません。相手のどの選手にボールが出そうか見ている。自分がマークすべき相手の位置を確認している。線を越えた瞬間に、誰が最初に行くかを決めている。「待っているあいだの準備」が、実は守備の質を決めます

監修コーチのチームでは、ここを子どもたちにこう伝えています。「待ってる時間は、休む時間じゃない。誰が来たら誰が行くか、決める時間」。この意識がある子とない子で、線を越えた直後の守備がまるで違います。観戦するときに、あの数秒間の子どもの立ち位置を見てあげてください。ちゃんと動いています

06このルールの下で子どもが伸びること

最後に、親として何を見てあげるといいか。リトリートラインのある試合では、普段の試合では見えない成長が見られます。

いちばん分かりやすいのがキーパーです。手を使わず足でボールを扱う機会が一気に増えます。最初は必ずミスします。相手に渡して失点することもある。でもこの経験は、あとから確実に効いてきます。ミスした日に責めないこと。これだけ守ってもらえれば十分です。

次にディフェンスの子。今まで「クリアするだけ」だった子が、ボールを受けて、顔を上げて、味方を探すようになります。この「顔を上げる」が、他のポジションでも全部に効いてくる基礎です。

そして中盤の子。味方が受けられる場所に動く、いわゆるポジションを取るという感覚が、この場面でいちばん育ちます。ボールがないときの動きは、教えるのが難しい部分ですが、ゴールキックの数秒間は毎試合何回も繰り返されるので、体で覚えていきます。

こうした「止めて、蹴って、動く」の質を上げるには、足元が安定していることが前提です。落ち着いて止めようとした瞬間に軸足がすべると、子どもは怖くなって、また大きく蹴るクセに戻ってしまいます。

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💬 現場で聞いた保護者の声

初めての大会で『なんで行かないの』って叫んでしまって、あとでコーチにルールを教わって恥ずかしくなりました

1年生のお子さんの保護者

キーパーの子が足でつなぐようになって、明らかに他のプレーも落ち着いた。あの数秒って大事なんですね

中学年のお子さんの保護者

去年の大会にはあって、今年の大会にはなかった。毎回コーチの説明を聞くようにしています

高学年のお子さんの保護者

『よく待った』って言うようにしたら、子どもが待ってる間の立ち位置を自分で説明してくれるようになった

2年生のお子さんの保護者
※ 監修コーチが少年サッカーの現場で実際に聞いた声です(個人が特定されない形で掲載しています)。感じ方には個人差があります。

よくある質問

Q

リトリートラインとは何ですか?

A

相手チームのゴールキックのときに、守る側がいったん自陣へ下がって待つための線です。8人制サッカー特有のルールで、多くはセンターライン付近やその手前に設定されます。ボールがその線を越えたら通常どおり守備を再開できます。ゴールキック以外の場面(スローインやコーナーキックなど)には適用されません。

Q

なぜリトリートラインがあるのですか?

A

子どもに『後ろから丁寧につなぐ』経験を積ませるためです。このルールがないと、ゴールキックのたびに相手が詰めてきて、キーパーは大きく蹴るしかなくなります。すると試合が蹴り合いになり、止める・顔を上げる・味方を探すという基本を練習する場がなくなってしまいます。

Q

いつから攻めに行っていいのですか?

A

原則はボールがリトリートラインを越えてからです。ただし『ゴールエリアから出たら解除』『キーパーが蹴った瞬間に解除』など、大会によって運用が違います。必ず大会要項を確認してください。試合前にコーチが子どもたちへ説明するので、それを聞いておくと観戦時に迷いません。

Q

ラインを越える前に取りに行ったらどうなりますか?

A

多くの場合、審判の笛でゴールキックのやり直しになります。繰り返すと注意を受けることもあります。ただし処置の内容は大会ごとに異なり、相手ボールの間接フリーキックとする大会もあります。ここも大会要項での確認が必要です。

Q

すべての大会にリトリートラインがありますか?

A

いいえ、導入している大会としていない大会があります。地域や主催団体、対象学年によっても違い、低学年の部だけ導入しているケースもあります。去年と今年で運用が変わることも珍しくないので、毎回の大会要項とチームからの説明を確認してください。

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この記事の監修
監修現役 U10・8人制サッカーコーチ

サッカーが上手い選手より、サッカーを通じて“かっこいい大人”を育てる

少年サッカーの育成年代を指導して3年目、これまで延べ50名ほどの子どもたちと向き合ってきた現役コーチ。判断力・認知・立ち位置・パススピード・切り替え、GKからのビルドアップを軸に、「個の前進力」と「戦術理解」の両立を追求しています。毎月、練習設計と自己内省をレポートにまとめてPDCAを回す、分析型の指導者です。

現場でサッカー未経験の保護者の声を大切にしてきました。専門用語をゼロに噛み砕き、「親が今日からできること」に翻訳してお届けします。

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