「ドリブルのとき、ずっと下ばかり見ている」「まわりが見えていなくて、パスが出せない・取られる」——試合を見ていて、そう感じるパパ・ママは多いはずです。サッカーで一段うまくなる子は、決まって「顔が上がっている」。まわりを見て、次のプレーを選べる子です。この視野(周りを見る力)は、生まれつきのセンスではなく、練習で育ちます。この記事では、サッカー未経験の親でも家でできる、顔を上げて視野を広げる練習を、順番に紹介します。
視野を広げるコツは、①ボールを見ずに触れるまでドリブルを慣らす ②プレーの前に「首を振って」まわりを見る ③見た情報で次を決めるの3つ。いきなり「顔を上げろ」と言っても無理なので、まずは「足元を見なくてもボールを運べる」状態を作るのが先です。→ 足に合う一足で操作性もチェック(30秒)
この記事は、少年サッカーの現場に立つ現役のU10・8人制コーチが監修しています。断言できるのは、「顔を上げろ」と言うだけでは、絶対に顔は上がらないということ。下を見るのは、ボールが不安だから。だから順番は逆で、まず足元を見なくても運べるようにする→自然と顔が上がる。実際、私のチームでも「首を振る」を習慣づけた子は、パスの選択肢が増え、取られる回数が減りました。視野は、正しい順番で育てられるんです。
01なぜ子どもは下を見てしまうのか
まず知ってほしいのは、子どもが下を見るのには、ちゃんと理由があるということ。それは「ボールが足元にあるか不安だから」です。ボールを操るのに精いっぱいだと、どうしても目が足元にいきます。
だから、いくら「顔を上げろ!」と言っても効果はありません。むしろ「見なきゃ」とあせって、プレーが固くなるだけ。大事なのは、下を見なくてもボールを運べる状態を先に作ること。ボールへの不安が消えれば、顔は自然と上がります。順番を間違えないことが、いちばんのポイントです。
02順番が逆。まず「見なくても運べる」を作る
視野を広げるための正しいステップは、この3段階です。
① ボールを見なくても運べる(足の感覚でドリブル・タッチ)
② プレーの前に首を振る(周りを見るクセをつける)
③ 見た情報で次を決める(空いている所・味方・相手を判断)
多くの人が、いきなり②や③をやらせようとして失敗します。①の土台がないのに首を振らせても、ボールを見失うだけ。まずは①をしっかり作る。すると子どもは安心して顔を上げ、②③へ自然に進めます。ここからは、この順番どおりの練習を紹介します。
03足元を見ないドリブル
ゆっくりドリブルしながら、できるだけ足元を見ずに前を見ます。最初は数歩でOK。タッチは小さく、足の近くにボールを置くのがコツ。慣れたら少しスピードアップ。
このドリルの目的は、「見なくても運べる」という安心感を作ること。ボールを足の近くに置く小さいタッチを覚えると、視線を前に向けられます。これが全ての土台。あせらず、ここをしっかりやりましょう。
このとき、マーカーやコーンを目印に置くと、「目印を見る=顔を上げる」練習に早変わりします。地面に数個ならべて、その間をドリブルしながら「次の目印を見る」だけで、自然と視線が前に向きます。軽くて踏んでも痛くないので、家の練習道具の最初の1つにぴったりです。
04数字コール(顔を上げる)
子がドリブルしている前で、親が指を何本か立てます。子は『何本!』と答えながら進みます。指を見るには顔を上げるしかないので、自然に前を向けます。
これは「顔を上げる理由」を作る名メニュー。「上げろ」ではなく「指の数を当てて」にするだけで、子は自分から顔を上げます。楽しみながら視線が前に向くので、低学年にもおすすめです。
05首振りチェック
親子でパスをするとき、ボールが来る前に『首を振って後ろ・横を見る』を1回入れます。見てから止める・蹴る、を習慣に。『見た?』と毎回確認します。
トッププレーヤーほど、ボールが来る前にまわりを見ています。この「首を振る」を子どものうちから習慣にすると、判断が段違いに速くなります。地味ですが、将来いちばん差がつくところです。
視野を広げるには、ボール操作に余裕を持つことが前提。足に合わない靴だと操作がぎこちなくなり、どうしても足元を見がちに。もし今の靴が「大きすぎ・小さすぎ」で操作しづらそうなら、サイズと足型の見直しが役立ちます。
△ここだけ注意:スパイクは低学年やまだ慣れていない子には早いことがあります。学年と足型に迷ったら、比較ページで確認を。→ 学年・足型からピッタリを選ぶ
06試合での声かけ
家で「見なくても運べる」と「首を振る」が身についてきたら、試合ではシンプルな声かけで後押しします。効くのは「見えてる?」「まわりは?」と、判断を思い出させる一言。逆に、プレー中に大声で細かく指示するのは逆効果です。
① 「早く出せ!」の連発(あせって余計に下を見る)
② 「そこじゃない!」など否定(判断が怖くなり、顔が下がる)
③ 親が答えを全部言う(自分で見て決める力が育たない)
07「首を振れ」が効かない、もう一つの理由
下を見るのはボールが不安だから——これが一つ目の理由でした。でも、ボール操作にそこそこ余裕がある子でも首を振らないことがあります。理由は単純で、「首を振れ」という言葉に、いつ・何を・どうする、が入っていないからです。
大人は「首を振れ」で通じます。子どもには通じません。指示としては「振る」しか情報がないんです。だから、言われた瞬間だけキョロッとして、次のプレーでは元通り。これはサボりではなく、指示の設計ミスです。
現場で言い方を変えてみたことがあります。「首を振れ」をやめて、「ボールが来る前に、後ろ見て」という一言に統一しました。タイミング(来る前)と方向(後ろ)が入っただけの違いです。それだけで、その日のうちに半分以上の子が実行できるようになりました。抽象語をやめて、いつ・どこ、を必ずセットにする。これが効きます。
① 「まわりを見ろ」(いつ見るのか分からない)
② 「視野を広く」(子どもには意味が届かない言葉)
③ 「顔上げて」(ボールが不安なままだと物理的に無理)
08見るタイミングは「ボールが来る前」
視野の話でいちばん大事なのはここです。見るのはボールを持ってからではなく、ボールが自分に来る前。
理由は時間です。ボールを受けてから顔を上げても、その時点で相手はもう寄せてきています。判断する時間が残っていない。だから、味方がボールを持った瞬間、つまり自分にボールが来るかもしれない数秒前に見ておく。すると受けた瞬間には、もう次の行き先が決まっています。うまい子が速く見えるのは、足が速いからではなく見終わっているからです。
タイミングは3つに絞って教えると入ります。①味方がボールを持った時 ②ボールが自分に向かって転がっている間 ③自分がボールを止めた直後。このうち①がいちばん効きます。①だけ習慣になれば、試合中の判断は目に見えて変わります。
09何を見るのか|優先順位は3つ
首を振っても、何を見ればいいか分かっていない子はかなり多いです。「見た?」と聞くと「見た」と答えるのに、何が見えたかは言えない。これは見ているけれど、探していない状態です。
探す順番は、この3つで固定します。
- ① スペース(空いている場所):まず自分が前に運べる余白があるか。あれば運ぶのが最優先。
- ② 味方:前を向いている味方、より前にいる味方。近い味方より、前にいる味方が優先。
- ③ 相手:誰が寄せてきているか、背中側に誰かいるか。
実際にあった話をひとつ。ボールを受けるのは上手なのに、必ず後ろへ戻してしまう子がいました。「見てる?」と聞くと「見てる」と言う。よく観察すると、その子が最初に見ていたのは寄せてくる相手だけでした。そこで「相手じゃなくて、まず空いてる場所を探して」に変えたところ、2週間ほどで前を向いて運ぶ回数が明らかに増えました。見る量ではなく、見る順番を直しただけです。
この順番には理由があります。子どもは放っておくと①相手→②味方の順で見ます。怖いものから見るからです。すると「取られない選択」ばかりになり、後ろへのパスが増える。スペースから先に探すクセをつけるだけで、前向きなプレーが増えます。声かけは「空いてるとこあった?」の一言でOKです。
103色コール
親が色の違うもの(マーカー・タオル・ペットボトルなど)を3つ持ち、ドリブル中にどれか1つを掲げます。子は色を声に出して答えながら進みます。答えるには前を見るしかありません。
11背番号あてパス
親子でパス交換。ボールを蹴る直前に、親が指を何本か出すか、体の向きを変えます。子はトラップする前に一度後ろか横を見て、そのあと『何本』と答えてから蹴り返します。
12スキャン・カウント
親子でパスを続けながら、子が『ボールが来る前に見た回数』を自分で数えます。3分終わったら「何回見た?」と聞くだけ。数を競うのではなく、見たことを自分で自覚させるのが目的です。
13廊下ドリブル(室内OK)
やわらかいボールで、家の廊下をゆっくりドリブル。子は壁に貼った紙(数字や絵)を見ながら往復し、往復ごとに何が書いてあったかを答えます。狭い場所なので小さいタッチが自然に身につきます。
14低学年に伝わる言い方
同じことでも、低学年には言葉を変えないと届きません。「視野」「スキャン」「認知」は禁句だと思ってください。
現場で実際に通じている言い換えを並べます。「首を振る」→「キョロッてして」。「まわりを見る」→「後ろに誰かいる?見といて」。「スペースを探す」→「ダーッと走れる道どこ?」。「判断が遅い」→「先に決めとこ」。
擬音と質問形にするのがコツです。「キョロッ」のような音は、子どもの体に直接入ります。そして命令ではなく質問にすると、子どもは答えるために自分で見ます。見せるのではなく、見たくなる理由を作る。これは低学年ほど効きます。
15試合で首を振れているかの見分け方
家で練習しても、試合でできているかは親には分かりにくい。ベンチから見ていると分かるポイントを3つ書いておきます。観戦しながらチェックできます。
- 受ける前に、体が半身になっているか:見えている子は、ボールと相手の両方が見える向きで待ちます。正面で棒立ちならまだ見えていません。
- トラップの1歩目が前に出るか:見終わっている子は、止めた瞬間に前へ運びます。止めてから固まるのは、受けてから探している証拠。
- 後ろからのプレスに気づいているか:背中を取られて慌てて失う回数が減っていたら、確実に見えるようになっています。
逆に、見えていないサインもはっきり出ます。受けた瞬間にボールを見たまま止まる、味方が呼んでいるのに気づかない、ドリブルの向きが毎回同じ。この3つが多い日は、まだ受けてから探している段階です。責める必要はありません。家のドリルに戻って、①の土台をもう一度やり直せば済む話です。
見分け方が分かると、家での声かけも変わります。「今日、受ける前に後ろ見えてた場面あったよ」と、できていた場面を具体的に言ってあげるのが最強の強化です。何回できたかを数えて伝えるくらいでちょうどいい。
16練習でできて、試合で消える問題
いちばん相談が多いのがこれです。家では首を振れるのに、試合になると全部飛ぶ。ほぼ全員が通る道なので、まず心配しないでください。
原因ははっきりしています。試合は相手がいて、時間がなくて、失うのが怖い。この3つが揃うと、人は視野が狭くなります。大人でも同じです。つまり、練習の環境が試合と違いすぎるのが問題なんです。
対策は、練習にプレッシャーを1つだけ足すこと。親が軽く寄せる役をやるだけで十分です。全力で奪いにいく必要はありません。「近づいてくる人がいる」という状況を作るだけで、家の練習が試合に近づきます。
もう一つ効くのが、試合の目標を1つに絞ること。「今日は受ける前に1回見る、それだけ」。勝ち負けや点数ではなく、行動を1つだけ約束する。できたら試合後に「できてたね」で終わり。これを3〜4試合くり返した子は、その後は言わなくても見るようになります。焦らず、1試合1テーマ。ここが定着すれば、判断のスピードは学年が上がるほど効いてきます。
「『顔を上げろ』と言い続けても直らなかったのに、数字コールを始めたら自然に上がった。順番が大事なんだと納得」
「首を振る習慣がついてから、パスが増えて取られなくなった。コーチにも『よく見えてる』とほめられた」
「足元を見ないドリブルから始めたら、下を向くクセが減った。まず運べるようにするのが先だと知れてよかった」
「指当てゲームが楽しいらしく、散歩中もやりたがる。遊びながら顔が上がるのは助かる」
よくある質問
「顔を上げろ」と言っても直りません。なぜ?
下を見るのは『ボールが足元にあるか不安だから』です。不安がある状態で顔を上げさせても、ボールを見失うだけで逆効果になります。まずは足元を見なくてもボールを運べる状態(小さいタッチのドリブル)を作るのが先。ボールへの不安が消えれば、顔は自然に上がります。順番を逆にしないのがコツです。
視野の広さは生まれつきですか?
いいえ、練習で育ちます。視野とは『見えている範囲』というより『見る習慣があるか』です。プレーの前に首を振ってまわりを見る、見た情報で次を決める——この習慣を子どものうちからくり返せば、判断は確実に速くなります。センスではなく、くり返しで伸びる力です。
首を振る練習は、いつからさせていい?
低学年からでも大丈夫です。ただし、まずはボール操作に少し余裕が出てから。パスやトラップの前に『キョロッと1回まわりを見る』を習慣づけるだけでOKです。最初は忘れるので、親が『今見た?』と毎回確認してあげると、少しずつクセになります。
家の中でもできる練習はありますか?
数字コール(ドリル04)は、やわらかいボールを使えば室内でもできます。ドリブルせずに、その場でボールを足で触りながら親の指の数を答えるだけでも、顔を上げる練習になります。首振りチェックも、パスの前にまわりを見る習慣づけとして室内で取り入れられます。
試合中、どんな声をかければいい?
『見えてる?』『まわりは?』など、判断を思い出させる短い一言が効果的です。逆に『早く出せ!』の連発や、答えを全部教えるのは、あせりや依存を生んで逆効果。プレーの選択は子どもに任せ、見る習慣だけをそっと後押しするのがコツです。
顔を上げるには、ボール操作に余裕を持てる(=足に合った靴の)ことが土台になります。学年や足の形からお子さんに合う一足を選びたい方は、比較ページをどうぞ → 比較ランキングで学年・足型からピッタリを選ぶ
見なくても運べるドリブルは、あらゆるプレーの土台です。あわせて → 家でできるドリブル練習/判断の優先順位は ボールをもらう前の考え方 で解説しています。
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育成年代の指導3年目、延べ50名ほどの子どもたちと向き合ってきた現役コーチ。判断・認知・立ち位置を軸に「個の前進力」と「戦術理解」の両立を追求しています。
用品・ルール・練習の記事は、公開前に監修コーチが内容を確認し、事実に関わる記述は一次情報にあたって整理しています。監修者について →

