「パスをもっと正確に蹴れるようになってほしい」「でも、教え方が分からない」——未経験の親にとって、パス練習はハードルが高く感じますよね。でも大丈夫。パスの基本は、親子で向かい合ってボールを転がし合うだけで育てられます。この記事では、少年サッカーの現場に立つ現役コーチが、家や公園でできるパス練習と、上達のコツを解説します。
正確なパスのコツは①足の内側(インサイド)で押し出す ②軸足をボールの横に置く ③相手の足元をねらうの3つ。強く蹴るより「ていねいに転がす」が最初。親子で5〜10歩の距離から始めればOKです。
この記事は、少年サッカーの現場に立つ現役のU10・8人制コーチが監修しています。パスは、味方とサッカーをつなぐ大切な技術。でも最初は難しく考えず、「転がして、受ける」の往復から。親が相手になってあげるだけで、子どものパスはぐんぐん伸びます。順番に見ていきましょう。
01正確なパスの3つのポイント
パスがブレる子の多くは、次のどれかが抜けています。逆に、この3つを押さえると一気に安定します。
- 足の内側(インサイド)で押し出す:つま先で蹴ると不安定に。足の内側の平らな面で、押し出すように当てると正確に転がります。
- 軸足をボールの横に置く:蹴らないほうの足を、ボールのすぐ横に踏み込む。これで方向が安定します。
- 相手の足元をねらう:ただ蹴るのではなく「相手のこの足に届ける」と的を決める。ねらう習慣が正確さを育てます。
この3つのうち、家でいちばん直しやすいのは軸足の位置です。ボールの真横に軸足が置けていない子は、上半身が流れて、ボールが右か左にそれます。見分け方は簡単で、蹴った後に子どもの体が横に倒れていたら軸足がずれています。技術用語を使わずに「踏む足、ボールのすぐ横ね」と言うだけで、その場で直る子は多いです。
02親子でできるパス練習メニュー
特別な道具はいりません。ボール1つと、5〜10歩の距離があればOKです。
① 転がしパス:5歩の距離で、インサイドで転がし合う(まずはゆっくり正確に)
② 的あてパス:親が足を開いて「ゴール」を作り、その間を通す
③ ワンツー:親に当てて返ってきたボールを、動きながら受ける
距離は近くから。届くようになったら少しずつ離します。
ポイントは、強さより正確さ。「速く蹴る」より「ねらったところに届ける」を先に。正確に蹴れるようになれば、強さは後からついてきます。家の中でやるときは、音の出にくいやわらかいボールを使いましょう。
03親子でできるパスメニュー6つ
ここからは、そのまま今日できる形にしたメニューです。親はサッカー未経験で構いません。全部、親が立って足を出すだけで成立します。
01止めて蹴る往復パス
5歩の距離で向かい合う。転がってきたボールをいったん足の内側で止めて、それから返す。止めずに返すのは禁止。親も同じように止めてから返す。
02親の足ゲート通し
親が肩幅くらいに足を開いて立ち、その間をパスで通す。子どもは右足で10本、左足で10本。親は動かず、足を開いたまま立っているだけでいい。
03ワンタッチ返し
近い距離(3歩ほど)で、止めずに1回で返し合う。強く蹴らず、足の内側を当てるだけ。ボールが逃げたら拾って再開する。
04動きながら受ける(横ステップ)
子どもが横に2〜3歩動きながら、親からのパスを受けて返す。止まって受けるのではなく、動いている途中で受けるのがポイント。親は動かなくていい。
05壁を親の代わりにする(ひとり版)
親が忙しい日は壁で代用する。壁に向かって足の内側で蹴り、返ってきたボールを足の内側で止める。止めてから蹴るまでを1回と数える。
06強さ当てゲーム
親が『弱く』『ふつう』『強く』と声で指定し、子どもがその強さでパスを出す。親は受けたあと『強すぎた』『ちょうどいい』とだけ返す。技術の指摘はしない。
パスを受ける側の動きを詰めたいときはパスの受け方、強さそのものを鍛えたいときはパススピードの上げ方もあわせてどうぞ。
04未経験の親は「相手役に徹する」だけでいい
親から相談されて、いちばん多いのが「自分がサッカーをやったことがないので教えられない」です。断言しますが、教えなくていい。パス練習で親に求められている役割は、技術指導ではなく相手役だからです。
理由はシンプルです。パスはひとりでは絶対に練習できない技術だからです。ドリブルもリフティングもひとりでできる。でもパスだけは、返してくれる相手が要る。その「相手がいない」が、家でパスが伸びない最大の理由です。つまり、そこに立っている親には、コーチには代えられない価値がある。
親がやることは3つだけです。①ボールを返す ②足を開いて的になる ③通ったら反応する。技術は週2回のチーム練習でコーチが見ています。家では、チームで足りない「往復の回数」だけを埋めればいい。ここを分けて考えると、親はぐっと楽になります。
05親がうまく返せなくても成立する形
とはいえ、返すのが下手で子どもが走ってばかり、という家庭は多いです。その場合は、親が蹴らなくていい形にしてしまえば解決します。
- 手で転がして返す:足で返せないなら手で構いません。子どもは足で蹴る、親は手で転がす。これでも子どもの練習は完全に成立します。
- 壁を親の代わりにする:親は横で数を数えるだけ。壁は必ず正確に返してきます。詳しくは壁当て練習のやり方へ。
- 親は動かず、足を開いて立つだけ:ゲート通しなら、親は的として立っているだけでいい。
- 親が受け役、返すのは子ども自身:親はボールを止めるだけにして、子どもが拾いに来る。休憩の代わりにもなります。
少しずれた球が返ってくるほうが、子どもは止める練習になります。試合で来るパスは、きれいな球ばかりではありません。ずれた球を体を動かして止める経験は、むしろ実戦向きです。下手なパスは、上等な練習相手だと思ってください。
06「止める」がパスの半分|止める→蹴るの順で教える
パスというと「蹴る」ばかり意識しがちですが、実は受けた球をピタッと止める(トラップ)ことが、パスの半分です。止められないと、次のパスが遅れ、相手に取られてしまいます。
止め方のコツは、来たボールに対して足を軽く引きながら、力を吸収すること。壁に当てて跳ね返るのと違い、クッションのように受け止めるイメージです。親子の転がしパスでも、「止めてから返す」を意識するだけで、トラップは上達します。
転がってきたボールを、足の裏でそっと止める「足裏ストップ」から始めると簡単。慣れたら、足の内側でクッションのように止める練習へ。「止める→蹴る」をセットで覚えると実戦で活きます。
順番が大事です。先に蹴る練習をした子は、止められないのに強く蹴ろうとします。試合で見ていると、この子たちはボールが足につかず、受けた瞬間に相手に取られる。逆に止めるところから入った子は、蹴る場面でも慌てません。うちの学年でも、4年生の途中から「止めてから返す」だけをルールにした期間を作ったところ、受けた直後にボールを失う回数が目に見えて減りました。教える順番は、止める→蹴る。ここは動かさないでください。トラップだけを詰めたい場合はトラップ練習のやり方にまとめています。
07強さの伝え方|「味方が止めやすい強さ」の見つけ方
「もっと強く蹴れ」と言われて育った子が、試合で味方に止められない球ばかり出す——これは本当によくあります。強さは、速さのことではありません。味方が止めやすい強さのことです。
基準は言葉にしにくいので、家では次の方法で覚えさせてください。
● 「1回で止まったか」で判定する 受けた親が1回の足の動きで止められたら、ちょうどいい強さ。追いかけないと止められなかったら弱すぎ、はじいてしまったら強すぎ。受け手の結果だけで判定できるので、未経験の親でも迷いません。
● 距離で強さを変える練習をする 5歩の距離で10本、10歩に離してまた10本。同じ強さで蹴ると、近いと強すぎ、遠いと届かない。距離が変われば強さも変わると体で分かるのが、この練習の狙いです。
● 「転がり続けるか、止まるか」を見る 届いた場所でボールが止まってしまうパスは弱すぎです。受け手を通り過ぎるくらい転がるなら強すぎ。受け手の足元に来て、そこでちょうど勢いが落ちるのが理想。
言葉にするなら「相手が動かずに足を出して止められる強さ」。これを子どもに一度伝えておくと、試合中に自分で調整するようになります。パスの精度そのものを上げたい場合はキックの正確さを上げる練習も参考にしてください。
08屋外で場所がないときの代替
パス練習は5〜10歩の距離が要るので、家の中だけでは限界があります。かといって、近所に公園がない、球技禁止の公園しかない、という家庭も多い。その場合の現実的な代替を挙げます。
- 廊下を使う:まっすぐ5歩取れれば十分です。やわらかいボールで、転がすだけなら室内でも成立します。
- 壁のある場所を探す:ボール可の公園の壁、河川敷の護岸など。使用可否は必ず現地の掲示を確認してください。
- 駐車場は使わない:車と道路が近い場所は、どれだけ空いていても避けてください。ここは技術より安全が先です。
- リバウンドネットを使う:省スペースで壁の代わりになります。使い方はリバウンドネットの使い方へ。
- 公園の使い方を工夫する:混む時間を外す、端の芝生を使うなど。詳しくは公園でできる練習にまとめています。
なお、球技の可否や使える時間帯は、自治体や施設ごとに運用が違います。掲示や管理者の案内を必ず確認してから使ってください。
09親が教えすぎて子がイヤになる典型パターン
ここは、正直いちばん多い失敗です。パスは親が相手役になるぶん、距離が近すぎて口が出やすい。ドリブルなら離れて見ていられますが、パスは真正面に親がいます。1本ごとに感想を言えてしまう。
典型は3つです。①1本ごとに「今のずれた」と言う ②親が自分の蹴り方を教え始める ③子どもが飽きても『あと10本』と続ける。この3つがそろうと、パス練習は「怒られる時間」に変わります。実際に、家でのパス練習をきっかけにボールを触るのをやめてしまった子を何人か見てきました。技術は落ちていなかったのに、です。
OKの形はこうです。指摘は10本に1回まで。それも技術ではなく事実を言うだけ。「今の、俺は動かずに止められたよ」「今のは追いかけたな」。事実を返すのは指導ではないので、子どもは責められた気がしません。
そしてもうひとつ。子どもが「もう一回!」と言っているうちに終わること。5〜10分で切り上げる。物足りないくらいで止めるほうが、翌日また誘えます。親が満足するまでやると、次がありません。親の関わり方全般については親がやりがちなNGにもまとめてあります。
10親が気をつけたいこと
● ダメ出しより、成功をほめる 「今のずれてる」より「ナイスパス!」。うまくいったときにしっかり喜ぶと、子どもはもっとやりたくなります。
● 親も本気で受ける 親が適当に受けると、子どものねらいが甘くなります。「ここにちょうだい」と足を出して的になってあげると、子どもは的をねらう習慣がつきます。
● 短く、楽しく 5〜10分で十分。「もう一回!」と言われるくらいで終わるのが、長続きのコツです。
学年によって力の入れどころも変わります。低学年(1〜3年生)は正確さより往復の回数。止めて返す、が10往復続けば十分です。中学年は苦手な足を同じ本数だけ。高学年は動きながら受ける形と、強さの調整に時間を割いてください。同じメニューでも、この3つの見方を変えるだけで足ります。
パスの前の「ボールに慣れる」土台づくりは、こちらもどうぞ → 親子でできるおうちサッカー練習・ボールタッチ5選
11現場の声|親子パスを続けた家庭のリアル
「私が足で返せないので手で転がしていましたが、それでも子どものトラップは上手くなりました」
「『止めてから返す』だけをルールにしたら、試合でボールを取られる回数が減りました」
「1本ごとに口を出してしまい嫌がられたので、10本に1回だけにしたら続くようになりました」
「足を開いて的になるだけ。未経験の私でもできる役があると分かって気が楽になりました」
道具はボール1個で足ります。ただ、屋外で長くやるなら足に合った靴を。サイズの合わない靴でのパス練習は、軸足の踏み込みで足に負担がかかります。痛みが続く場合は無理をせず、整形外科の受診を(症状の出方には個人差があります)。
12よくある質問
パスは何歳から教えればいいですか?
ボールを蹴って遊べる年齢なら、何歳からでもOKです。低学年のうちは『インサイドで正確に』と教え込むより、まず親子で転がし合う遊びから。ボールを蹴って、受けて、また返す——この往復自体が、パスとトラップの土台になります。楽しく続けることを最優先にしてください。
つま先で蹴るクセがあります。直したほうがいい?
はい、早めに足の内側(インサイド)で蹴る感覚を覚えると、正確さが大きく変わります。つま先だと当たる面が狭く、方向が安定しません。『足の内側の平らなところで、押し出すように』と声をかけ、まずはゆっくり転がすところから。強く蹴らせず、正確さを優先すると自然に直っていきます。
家の中でもパス練習はできますか?
できます。5歩ほどの距離があれば、転がしパスや足裏ストップの練習は十分可能です。ただし通常のボールは硬く床や家具を傷めるので、室内ではやわらかいトレーニングボールを使いましょう。強く蹴らず『ていねいに転がす』練習は、むしろ室内向き。廊下やリビングの一角でも、親子で楽しめます。
パスとトラップ(止める)、どちらを先に教えるべき?
セットで覚えるのがおすすめです。実際のプレーでは『止めてから蹴る』が連続するため、片方だけでは実戦で活きません。親子の転がしパスで、『来た球をいったん止めてから返す』を習慣にするだけで、両方が同時に伸びます。まずはゆっくりした往復で、止める→蹴るのリズムをつかませてあげてください。
インサイドキックの蹴り方はこちら → インサイドキックの基本/親子で回せる練習をもっと知りたい方は → 親子でできるドリル集
パス・トラップの土台になるボールタッチのメニューはこちら → 親子でできるおうちサッカー練習・ボールタッチ5選
足が速くなる練習とあわせると、実戦での動きがさらに活きます → サッカーで足が速くなる練習
「サッカーが上手い選手より、サッカーを通じて“かっこいい大人”を育てる」
育成年代の指導3年目、延べ50名ほどの子どもたちと向き合ってきた現役コーチ。判断・認知・立ち位置を軸に「個の前進力」と「戦術理解」の両立を追求しています。
用品・ルール・練習の記事は、公開前に監修コーチが内容を確認し、事実に関わる記述は一次情報にあたって整理しています。監修者について →


