週末の試合。左から転がってきたボールを、わが子がわざわざ体ごと回り込んで、右足で触り直している——。「あれ、左足って使わないの?」。ベンチの後ろで見ていて、ふとよぎる不安。家に帰って「左足でも蹴ってみたら?」と言うと、「だって蹴れないもん」とふてくされる。逆足(利き足じゃない方の足)って、どう練習させればいいの?そもそも親が口を出していいの?この記事を読み終えるころには、逆足が苦手な子に、家で・何を・どんな順番でやらせればいいかが、迷わず分かるようになります。
逆足の近道は、特訓ではなく「使う場面を日常に混ぜる」こと。そして順番は「止める → 運ぶ → 当てる」です。いきなり逆足でリフティングやシュートをさせるから、できなくて嫌いになる。まずは1日5分、逆足でボールを「止める」からで十分です。この記事のドリル4つを、上から順にどうぞ。
この記事は、少年サッカーの現場に立つ現役のU10・8人制コーチが監修しています。現場で試合を見ていると、逆足側に来たボールを利き足で触るために回り込む子がとても多い。この「回り込み」にはおよそ1秒かかります。たった1秒に思えますが、少年サッカーの1秒は、相手が2〜3歩寄せてくる時間。せっかくフリーだったのに、触り直している間に囲まれる——そんな場面を毎週のように見ます。逆に、逆足で「止めるだけ」できる子は、回り込まないぶん速い。逆足は、上手に蹴れなくても「触れるだけ」で武器になるんです。
01なぜ逆足は苦手になる?いちばんのNGは「利き足禁止」
逆足が苦手なのは、才能の問題ではありません。理由はシンプルで、触っている回数が圧倒的に少ないからです。子どもは楽しい方・できる方を選びます。利き足なら思い通りに転がる、逆足だと変な方向に飛ぶ。だったら利き足で触りますよね。こうして差はどんどん開いていく。つまり逆足の練習とは、特別なテクニックを教えることではなく、逆足でボールに触る回数を、生活の中に混ぜてあげることなんです。
ここで、やりがちな大失敗をひとつ。
気合いを入れた親やコーチがやりがちなのが「利き足禁止令」。気持ちは分かりますが、これは逆効果になりやすいやり方です。得意な足を取り上げられた子どもは、ボールが思い通りにならない時間だけが続き、サッカー自体をつまらなく感じてしまうから。逆足は「禁止」で伸ばすのではなく、「逆足でできた!」を少しずつ増やして伸ばします。利き足は取り上げない。逆足の出番を混ぜる。この違いがとても大きいんです。
もうひとつ大事なのが順番です。逆足でいきなりシュートやリフティングをやらせると、難しすぎて心が折れます。おすすめは「止める → 運ぶ → 当てる」の順。①まず逆足でボールを止められるようになる(トラップ)、②次に逆足で運べるようになる(ドリブル)、③最後に逆足で狙った所に当てられるようになる(パス・シュート)。かんたんな方から積み上げるから、「できた」が続きます。ここからのドリル4つも、この順番に並べてあります。
02逆足インサイドパス往復
親子で3〜4m離れて向かい合い、逆足のインサイド(足の内側の平らな部分)だけでパスを往復します。親は手で転がしてあげるだけでもOK。強さより「インサイドの真ん中に当てること」を優先します。
インサイドとは、足の内側の平らな面のこと。面が広いので、逆足でもいちばん成功しやすい場所です。最初はコロコロの弱いパスで構いません。「逆足でも、ちゃんと相手に届いた」という成功体験を貯金するのがこのドリルの目的。親は上手なパスを返す必要はなく、転がして・受けて・「今の良かったね」と言うだけで十分です。
03逆足トラップ(止めるだけ)
親が手または足で転がしたボールを、逆足のインサイドでピタッと止めます。蹴り返さなくてOK、止めるだけ。慣れてきたら「止めた後、利き足で返す」まで繋げます。
冒頭でお話しした「回り込みの1秒」を消すのが、この逆足トラップです。実は、試合で逆足に求められる仕事の大半は、蹴ることではなく止めること。左から来たボールを左足でピタッと止められれば、それだけで回り込みが消えて、プレーがまるごと1秒速くなります。トラップの基本をもっと深くやりたい場合は、トラップ練習の記事もあわせてどうぞ。
04逆足だけコーンジグザグ
ペットボトルや靴を1〜1.5m間隔で4〜5個並べ、逆足だけを使ってジグザグにドリブルします。インサイドとアウトサイド(足の外側)を交互に使うのが理想ですが、最初はインサイドだけでOK。
「運ぶ」の練習です。専用のコーンはなくてOK、ペットボトルで十分。ポイントは、利き足のジグザグと同じ速さを求めないことです。逆足は利き足の半分のスピードで当たり前。「ゆっくりでいいから最後まで逆足だけで行けた」を合格ラインにしてあげてください。ジグザグドリブル自体のコツや発展メニューはコーンドリブルの記事に詳しくまとめています。
05逆足シュート的当て
壁やフェンスに的(ガムテープで四角を作る、レジ袋を貼るなど)を用意し、3〜5mの距離から逆足のインサイドで当てます。強いシュートではなく「狙った所に当てる」ゲームにします。
最後が「当てる」。ここまで来て初めてシュート系の練習です。コツは、ゴールではなく「的当てゲーム」にしてしまうこと。ゴールに強いシュートだと、逆足では入らなくてつまらない。的当てなら、コロコロのキックでも「当たった!」が起きます。当てる遊びの延長で、気づいたら逆足のキックフォームが出来上がっている——これが理想の流れです。
06両足が使えると、何が変わるのか
「そもそも、逆足ってそんなに大事?」という疑問にも答えておきます。現場のコーチ目線で言うと、両足が使える子は守備側から見て、圧倒的に守りにくいです。
理由を噛み砕くと、守備の基本は「相手の得意な方を消す」こと。右利きの子には、右足で蹴れないように右側に立って寄せます。利き足しか使えない子は、これで八方ふさがり。ところが逆足でも「止める・運ぶ」ができる子は、消された瞬間に逆側へ持ち出せる。守備側はどちらを消せばいいか分からなくなるんです。
- 回り込みが消える:逆足側のボールをそのまま処理できるので、プレーが約1秒速くなる
- 選択肢が2倍になる:右にも左にも運べる・蹴れるので、守備に進路を読まれにくい
- ポジションの幅が広がる:左サイドは「左足で止められる子」から起用されやすいのが現場のリアル
- 体の向きが良くなる:利き足に合わせて体をねじる必要がなくなり、前を向いてプレーしやすくなる
もちろん、利き足を磨くことも同じくらい大事です。プロでも利き足中心の選手はたくさんいます。目指すのは「両足まったく同じ」ではなく、「逆足でも止める・運ぶは困らない」くらいのライン。そこまでで十分、プレーは見違えます。
07続けるコツと、あると便利なもの
逆足練習がいちばん挫折しやすいのは、実は技術ではなく気持ちの設計です。逆足は「できない」からスタートする練習なので、扱いを間違えるとすぐ嫌になります。続けるコツは3つ。
- 1日5分・ドリル1つでいい:4つ全部やらない。今日は「止める」だけ、で十分です
- 利き足タイムとセットにする:逆足5分やったら、最後は利き足で気持ちよくシュートして終わる。「できる感覚」で締めるのが長続きの秘訣です
- 比べる相手は昨日のわが子だけ:「お兄ちゃんはできるのに」は禁句。10本中2回→3回になったら、それは立派な成長です
逆足の動きは、ふだん使わない筋肉を使います。張り切って長時間やると、足首やひざに負担がかかることも。1回5〜10分で切り上げ、痛みを訴えたらすぐ休ませてください。成長期の体は個人差が大きいので、痛みが続くようなら早めに専門家・医師に相談を。
道具は基本、ボールとペットボトルがあれば足ります。ひとつ足すなら、毎日の自主練で気軽に履けるトレシュー(ゴム底のトレーニングシューズ)。公園のアスファルト混じりの地面や人工芝でも使えて、スパイクを温存できるので、自主練用の相棒にちょうどいい一足です。
最後に、監修コーチのチームで実際に聞こえてくる保護者の声を紹介します。逆足の悩みは、どこの家庭も驚くほど同じです。
「『左足禁止!』とやったら本人がふてくされて逆効果。止めるだけに変えたら、文句を言わずにやるようになった」
「お風呂の前に5分だけ、逆足パス往復を日課に。1か月したらコーチに『左、触れるようになったね』と言われた」
「的当てゲームにしたら、逆足の練習と気づかずに勝手にやってる。ゲーム化は本当に効く」
「利き足まで下手になるんじゃと心配だったけど、逆足を触るほど利き足も丁寧になった気がする」
よくある質問
逆足の練習は何歳から始めればいいですか?
何歳からでも大丈夫ですが、低学年〜中学年(小1〜小4ごろ)は特に吸収が速い時期です。とはいえ焦る必要はありません。年齢よりも「嫌いにさせずに回数を積めるか」が大事なので、この記事の『止める→運ぶ→当てる』の順で、1日5分から始めてみてください。
利き足を禁止して練習させるのは効果がありますか?
おすすめしません。得意な足を取り上げると、ボールが思い通りにならない時間だけが続き、サッカー自体を嫌いになるリスクがあります。禁止ではなく『逆足の出番を日常に混ぜる』方式で、逆足の成功体験を少しずつ増やすほうが結果的に早く伸びます。
どのくらいの期間で逆足は上達しますか?
個人差はありますが、『逆足でトラップして返す』程度なら、1日5分を続けて1〜2か月で変化を感じるご家庭が多いです。利き足と同じレベルを目指す必要はなく、『止める・運ぶは困らない』ラインまでで十分プレーは変わります。
逆足の練習で、利き足が下手になることはありませんか?
心配いりません。逆足の練習は利き足の時間を奪うほどの量ではありませんし、逆足を意識するとボールの触り方全体が丁寧になり、利き足のプレーにも良い影響が出ることが多いです。練習の最後は利き足で気持ちよく締めるのがおすすめです。
そもそも利き足がどちらか分かりません。どう見分けますか?
いちばん簡単なのは、ボールを軽く蹴らせたときに自然に出る足を見ることです。階段を上るときの最初の一歩や、ケンケンする足も参考になります。低学年ではまだ固まっていない子もいるので、その場合は両方バランスよく触らせてあげれば大丈夫です。
逆足の練習は、道具いらずで今日から始められます。まずは今晩、「逆足で止めるだけ」の5分から。そして毎日の自主練がはかどる足元を整えたい方は、学年・足型からピッタリの一足が分かる比較ページをどうぞ → 比較ランキングで学年・足型からピッタリを選ぶ
「サッカーが上手い選手より、サッカーを通じて“かっこいい大人”を育てる」
少年サッカーの育成年代を指導して3年目、これまで延べ50名ほどの子どもたちと向き合ってきた現役コーチ。判断力・認知・立ち位置・パススピード・切り替え、GKからのビルドアップを軸に、「個の前進力」と「戦術理解」の両立を追求しています。毎月、練習設計と自己内省をレポートにまとめてPDCAを回す、分析型の指導者です。
現場でサッカー未経験の保護者の声を大切にしてきました。専門用語をゼロに噛み砕き、「親が今日からできること」に翻訳してお届けします。
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