ピッチの真ん中で、我が子が立ち止まって泣いている。試合は続いている。周りの保護者の視線を感じる。行きたい。でも、行っていいのか分からない——。少年サッカーの保護者にとって、これほど落ち着かない時間はありません。「なんで泣くの」「またか」と、つい口が出そうになる自分もいる。でも、泣く理由は1つではありません。この記事を読み終えるころには、その場でどうするか・落ち着いてから何を聞くか・どこに線を引くかが、はっきり整理できます。
その場では「原因を問い詰めない」「泣き止ませようとしない」。この2つだけ守れば大丈夫です。理由を聞くのは、家に帰って落ち着いてから。順番を守るだけで、子どもは自分で立て直せるようになります。試合後の声かけ全般は → 試合後にかけたい言葉・避けたい言葉
この記事は、少年サッカーの現場に立つ現役のU10・8人制コーチが監修しています。監修コーチのチームでは、低学年の公式戦になると、だいたい1試合に1人は泣きます。20人いれば毎回誰かが泣く計算です。つまり、これは特別なことでも、恥ずかしいことでもありません。印象に残っているのは、2年生のある子。試合中に3回泣いて、そのたびに交代を申し出ていました。ところが4年生になったころ、同じ子が、抜かれても顔を上げて走って戻るようになった。何かを教えたわけではありません。泣くのを止めなかっただけです。泣ける子が、泣かなくなるまでには時間がかかる。それだけの話でした。
01泣く理由は1つじゃない|まず見分ける
いちばん大事なところから。「泣いた」という同じ見た目でも、中身はまったく違います。ここを一括りにすると、対応をまるごと間違えます。
- 悔しい:負けた、決められなかった、自分のミスで失点した。これはむしろ良い涙
- 怖い:相手が強い、ボールが速い、体が当たるのが怖い。低学年に多い
- 怒られた:コーチや味方に強く言われた。ショックで固まる
- 体が限界:暑い、痛い、眠い、疲れきっている。理由を言葉にできない
- 思いどおりにならない:出番が短い、ポジションが不満。感情の整理が追いつかない
- 単純に混乱している:ルールが分からない、何をすればいいか分からない
見分け方のコツは、泣いた瞬間の直前に何があったかを思い出すこと。失点の直後なら悔しさか怒られたか。前半の途中で急にならば、暑さや痛みを疑う。体の限界からくる涙だけは、その場で必ず止めて水分と休憩をとらせてください。夏場はとくに、我慢して続けさせないことが最優先です(体調の異変が続くようなら医療機関へ。感じ方には個人差があります)。
02その場では原因を問い詰めない
やってしまいがちなのが、泣いている最中の「どうしたの?」です。心配から出る言葉なのですが、泣いている子は、その瞬間、理由を言葉にできません。
これは性格ではなく脳のはたらきの話で、感情が高ぶっているときは、言葉を組み立てる部分がうまく働かない。大人でも、泣きながら理路整然と説明できる人はほとんどいないのと同じです。そこに「なんで?」「言わないと分からないでしょ」と重ねると、子どもは答えられない自分にさらに追い詰められて、もっと泣きます。
その場でやることは、たった2つ。①安全を確認する(痛いところがないか、暑くないか)。②そばにいるだけ。言葉はいりません。背中に手を置くだけで十分です。
この3つは、いちばん言ってはいけない言葉です。「泣くな」は感情そのものを否定するので、子どもは次から泣くのを我慢するのではなく、つらいことを親に言わなくなります。「みんな見てるよ」は、周りの評価を軸にした言葉。人前で感情を出すのが怖い子になります。言うなら「そっか」だけでいい。それが一番効きます。
03泣き止ませようとしないほうが、早く止まる
不思議に聞こえるかもしれませんが、現場で見ていて確かなのがこれ。止めようとしないほうが、泣いている時間は短いんです。
理由はシンプルで、子どもは「泣きたい」のではなく「気持ちが処理しきれていない」だけだから。処理が終われば自然に止まります。そこに「もう泣かない」「ほら顔上げて」と外から力が加わると、処理が中断されて、感情がその場に残る。結果、時間がかかるうえに、家に帰ってから爆発することもあります。
監修コーチが現場でやっているのは、ベンチの端に座らせて、水を渡して、何も言わないで隣にいるだけ。だいたい2〜3分で自分から顔を上げます。そのタイミングで「行けそう?」と聞く。行くと言えば戻す、無理と言えば座らせておく。本人に決めさせるのがポイントです。
04周りの目が気になる親の気持ちについて
ここは、はっきり書いておきたいところです。あの瞬間、いちばんしんどいのは親です。子どもが泣いている姿より、周りの保護者の視線や「またうちの子だけ」という感覚のほうが、心をえぐります。それは弱さではありません。当たり前の感情です。
でも、事実として知っておいてほしいことが2つあります。
ひとつ。周りの親は、思っているほど見ていません。みんな自分の子を目で追っています。そして低学年のうちは、どの家庭も一度は通る道です。「うちも先週やった」と思って見ている人のほうがずっと多い。
ふたつ。親が焦ると、その焦りは子どもに全部伝わります。「早く泣き止んでほしい」という空気は、言葉にしなくても届く。すると子どもは、悲しさに加えて「親に迷惑をかけている」という感情まで背負う。これが一番よくない。
だから、親側の対処はこうです。その場では「大丈夫、よくあること」と自分に言い聞かせて、堂々と座っている。慌てて駆け寄らない。堂々としているだけで、子どもは安心します。
05落ち着いてから聞く順番
理由を聞くのは、家に帰って、ごはんを食べて、落ち着いてから。当日の夜でもいいし、翌日でもいい。順番はこれです。
①事実だけ聞く。「あのとき、何があったの?」。評価を入れずに、起きたことだけ。
②気持ちを名前にしてあげる。「悔しかったんだ」「怖かったんだね」。子どもは自分の感情に名前を持っていないことが多く、名前がつくだけで整理が進みます。
③親の評価を言わない。「そんなことで泣くなよ」「よく泣かなかったね」も含めて、どちらも評価です。
④次どうしたいかは、本人に聞く。「次はどうしたい?」。答えが出なくても構いません。聞かれた経験が残ります。
この4ステップを何回か繰り返すと、子どもは自分で気持ちを言葉にできるようになります。これがそのまま、泣かずに立て直せる力になっていく。試合前に緊張してしまうタイプの子は、試合前に緊張する子への声かけもあわせて読んでみてください。
見落とされがちなのが、「痛くて泣いていた」というケースです。低学年は「靴が痛い」を言葉にできず、ただ動きが止まって涙が出る。監修コーチの経験でも、3か月ぶりに測ったら1cm足りていなかったという子が毎年います。上位モデルは1万円を超えますが、これはその半分ほどで足あたりがやわらかく、はじめの一足に選ばれています。△ここだけ注意:本格的な天然芝のグラウンドが中心のチームでは、TFよりスパイクのほうが合う場面があります。痛みが続くなら整形外科へ(感じ方には個人差があります)。
06「泣けば済む」にしない線引き
ここまで「泣いていい」と書いてきましたが、線は必要です。泣くのは悪くない。でも、泣くことで何かが免除される状態にはしない。ここを混同すると、子どもは泣くことを手段として覚えてしまいます。
具体的な線引きは3つ。
①泣いても、やることは変わらない。泣きながらでいいので、片づけ・あいさつ・整列はやる。「落ち着いてからでいい」ではなく、「泣きながらでもやる」。これが分かれ目です。
②泣いたから交代、にはしない。本人が「無理」と言ったら休ませていい。でも泣いた事実で自動的に交代させると、次から泣けば抜けられると学びます。決めるのは涙ではなく本人の言葉。
③人のせいで泣くのは受け止めない。「あいつがパスをくれないから」で泣いているときは、気持ちは受け止めても、主張の中身には乗らない。「悔しいね。じゃあ、次にパスをもらうにはどうする?」と、話を自分の側に戻します。
① 「そっか」——否定も評価もしない万能の返し
② 「痛いとこある?」——安全確認が最優先
③ 「今日、何が一番いやだった?」——落ち着いてから使う
この3つで、ほとんどの場面をしのげます。気の利いた言葉を探さなくて大丈夫です。
07高学年で泣かなくなる、その変化
親として知っておくと気がラクなのが、この問題には終わりがあるということ。監修コーチの実感では、4年生の後半から5年生あたりで、試合中に泣く子はぐっと減ります。
理由は成長そのものです。感情を言葉で整理できるようになり、悔しさを「次はこうする」に変換できるようになる。それと、人の目を意識しはじめる年齢でもあるので、人前で泣くことを自分で選ばなくなります。
ただし、ここで新しい注意点が出てきます。泣かなくなった=平気になった、ではないということ。表に出さなくなっただけで、中身は同じかそれ以上に悔しい。この時期に「もう泣かなくなったね、強くなった」と評価してしまうと、感情を隠すことが正解だと学ばせてしまいます。言うなら「悔しかったな」でいい。表に出さなくなった時期こそ、家では聞いてあげてください。
「泣いてるときに理由を聞くのをやめました。帰ってから聞いたら、ちゃんと話してくれた」
「周りの目が気になって焦ってたけど、実際は誰も見てなかった。自分の問題でした」
「泣いてもあいさつと片づけはやらせる、と決めてから、切り替えが早くなった気がします」
「5年になって泣かなくなったけど、家では悔しいと言う。出さなくなっただけなんだと分かりました」
よくある質問
試合中に泣いてしまったとき、親は駆け寄ったほうがいいですか?
慌てて駆け寄る必要はありません。まずは座ったまま様子を見て、コーチに任せてください。親が焦るとその空気が子どもに伝わり、悲しさに加えて『迷惑をかけている』という感情まで背負わせてしまいます。うずくまって動かない、痛がっているなど安全に関わるときだけ動けば十分です。
泣いている理由を、その場で聞いてはいけませんか?
その瞬間は避けてください。感情が高ぶっているときは言葉を組み立てられず、答えられない自分にさらに追い詰められてしまいます。その場でやるのは、痛いところがないかの確認と、そばにいることだけ。理由は家に帰って落ち着いてから聞くほうが、ずっと正確に話してくれます。
泣くのを止めさせないと、癖になりませんか?
泣くこと自体は癖になりません。問題になるのは『泣けば何かが免除される』状態のほうです。泣きながらでも片づけ・あいさつ・整列はやらせる、泣いた事実だけで自動的に交代させない、という線を引いておけば大丈夫です。感情は止めず、やることは変えない、が基本になります。
周りの保護者の視線がつらいです。どうすればいいですか?
周りは思っているほど見ていません。みんな自分の子を目で追っていますし、低学年ではどの家庭も通る道です。堂々と座っていることが、結果的に子どもをいちばん安心させます。どうしても気になるときは、少し離れた位置から見るだけでも気持ちが軽くなります。
高学年になっても泣きます。心配したほうがいいですか?
泣くこと自体は心配いりません。ただし毎回同じ場面で泣く、行きたがらない、特定の子の名前を出して嫌がるといったサインがあるときは、体の痛みや人間関係が背景にあることがあります。理由を問い詰めず、まずはコーチに『気のせいかもしれませんが』と前置きして様子を共有してください。
気持ちの整理ができたら、次は体の準備です。痛みや不調が涙の原因になっていることも少なくありません。学年と足型からピッタリの一足を選びたい方は、比較ページをどうぞ → 比較ランキングで学年・足型からピッタリのシューズを選ぶ
「サッカーが上手い選手より、サッカーを通じて“かっこいい大人”を育てる」
少年サッカーの育成年代を指導して3年目、これまで延べ50名ほどの子どもたちと向き合ってきた現役コーチ。判断力・認知・立ち位置・パススピード・切り替え、GKからのビルドアップを軸に、「個の前進力」と「戦術理解」の両立を追求しています。毎月、練習設計と自己内省をレポートにまとめてPDCAを回す、分析型の指導者です。
現場でサッカー未経験の保護者の声を大切にしてきました。専門用語をゼロに噛み砕き、「親が今日からできること」に翻訳してお届けします。
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