試合を見ていて、思うことがあります。「うちの子、走れてるし、蹴れてるのに、なんでいつも取られるんだろう」。技術の問題じゃない気がする。でも何をどう練習させればいいのか分からない——。その答えは「認知・判断」、つまり見て・決める力です。しかもこれ、グラウンドに行かなくても、家のソファで鍛えられます。この記事を読み終えるころには、5分でできる親子クイズのやり方と、絶対にやってはいけない声かけまで分かります。
判断力は「試合の映像や写真を止めて、自分ならどこへ出す?と聞く」だけで伸びます。ポイントは理由を必ず言わせることと親が正解を出さないこと。1回5分、週2〜3回で十分です。判断力そのものの土台は → 試合を読む力の育て方
この記事は、少年サッカーの現場に立つ現役のU10・8人制コーチが監修しています。現場で毎年ぶつかるのが、技術は伸びているのに、試合になると使えない子の存在です。以前、リフティングもドリブルもチームで上位なのに、試合では必ず囲まれてボールを失う子がいました。原因ははっきりしていて、ボールを受ける前にまわりを見ていない。走る量でも足の速さでもなく、ただ「見て、決める」の回数が足りていなかったんです。その子には、体を動かす練習を増やさず、家で1日5分だけ、映像を止めて考えるクイズをやってもらいました。3週間ほどで、パスを受ける前に首を振る回数が明らかに増えた。認知と判断は、走らなくても伸ばせます。
01結論:映像を止めて「自分ならどこへ出す?」と聞く
やり方はびっくりするほど単純です。サッカーの試合映像を再生し、ボールを持った選手が次のプレーをする直前で止める。そして「今、自分ならどこへ出す?」と聞く。これだけ。
写真でもかまいません。試合の一場面が写った画像でも、雑誌の写真でも成立します。大事なのは「答えが出る前に止める」こと。プレーが終わってから「今のよかったね」と話すのは感想であって、判断の練習にはなりません。まだ結果が分からない状態で、自分で決めさせる。ここに全部の価値があります。
① プレーの直前で止める(結果が出る前)
② 「自分ならどうする?」と本人ごとで聞く
③ 理由を必ずセットで言わせる
④ 親は正解を出さない
1回5分、週2〜3回。これで十分に変わります。
02なぜ走らずに伸びるのか|見る→決めるは頭の作業
サッカーのプレーは、ざっくり3つに分けられます。①見る(認知)→②決める(判断)→③やる(実行)。多くの家庭でやっている自主練は、③の実行ばかりです。ドリブル、リフティング、シュート——もちろん大事なのですが、試合でつまずいている子の多くは、①と②で止まっています。
そして①と②は、ボールを蹴らなくても練習できる。将棋やクイズと同じで、頭の中の作業だからです。「まわりを見る」「選択肢を並べる」「決める」。この回数を増やせば増やすほど、試合で迷う時間が短くなります。雨の日も、ケガで走れない日も、これだけはできるのが大きな強みです。
試合で取られるからといって、ドリブル練習の量だけを増やしても、多くの場合は解決しません。ボールを受ける前に見ていないことが原因なら、いくらドリブルがうまくなっても囲まれます。実行の練習と、見る・決める練習は別物。両方いります。まわりを見る習慣そのものは顔を上げる・見る力の練習にまとめました。
03親子クイズのやり方5つ
具体的なやり方です。どれも家の中、5分でできます。
01止めて『どこに出す?』クイズ
試合映像を再生し、ボールを持った選手が蹴る直前で一時停止。『今、自分ならどこへ出す?』と聞きます。指で画面をさして答えてもらってOK。答えたら理由を1つ言わせてから、再生して結果を見ます。
02写真で『まわりに誰がいる?』
試合の写真を5秒だけ見せて、隠します。『味方はどこにいた?』『相手は何人いた?』と聞きます。ボールの位置ではなく、まわりの人の配置を思い出させるのがねらいです。
032択にして選ばせる
答えが出てこないときは『右の味方に出すのと、自分でドリブルするの、どっち?』と選択肢を2つに絞ります。選んだら『なんでそっち?』と理由だけ聞きます。
04逆の立場クイズ(守る側で考える)
同じ場面を、今度は守る側で考えます。『もし自分が相手のディフェンスだったら、どこを止める?』。攻める側と守る側、両方から同じ場面を見るのがポイントです。
05自分の試合動画で止める
自分が映っている試合動画を使って、同じことをやります。自分がボールを受ける直前で止めて『このとき、まわりに誰がいたか覚えてる?』『今なら、どうする?』と聞きます。
04理由を必ず言わせる|答えより大事なもの
このクイズの本体は、実は答えではなく理由のほうです。「右!」で終わらせず、必ず「なんで?」とセットで聞いてください。
理由が言えるということは、その子の頭の中に判断の材料があるということ。「右の子がフリーだから」「相手が左に寄ってるから」「後ろにスペースがあるから」——こう言えるようになると、試合中に同じ言葉が頭の中で走ります。逆に、理由が「なんとなく」しか出てこないうちは、試合でも毎回ばくちのような選択になります。
① 「どうしてそこ?」(いちばんシンプル)
② 「相手はどこにいた?」(判断の材料に目を向けさせる)
③ 「じゃあ、他にはどんな手があった?」(選択肢を増やす)
③まで行けたら上出来です。選択肢が2つ以上見えている子は、試合で急に落ち着きます。
現場でも、理由を言葉にできる子は、ミスからの立ち直りが速い。なぜ選んだかを自分で分かっているので、失敗しても次の修正点が具体的だからです。
05正解を出さない|正解は1つじゃない
ここが、親がいちばん失敗するところです。親が正解を言ってしまう。
サッカーの判断に、絶対の正解はありません。同じ場面でも、味方の特徴、点差、残り時間、風向きで、良い選択は変わります。プロの試合ですら、解説者どうしで意見が割れるくらいです。それを親が「いや、そこはこうでしょ」と言い切ってしまうと、子どもは考えるのをやめて、「親が正解と言うほう」を当てにいくゲームに変わります。これでは判断力は育ちません。
再生して答え合わせしたあと、「ほら、やっぱり右じゃなかったでしょ」と言うのは避けてください。映像の中の選手がやったことは、その選手が選んだ1つの手であって、唯一の正解ではありません。しかも、その選択が失敗している場面も山ほどあります。正しい返し方は「この人は左を選んだね。〇〇はなんで右だと思ったの?」。子どもの選択を、対等な1つの案として扱ってください。
親がサッカー未経験でも、まったく問題ありません。むしろ知らないほうが上手にできます。「へえ、そう考えたんだ」と本気で言えるからです。教える必要はゼロ。聞き役に徹してください。
06詰まったときの助け方と、回数の設計
子どもが黙り込んでしまったときの助け方は、選択肢を2つに減らす。これに尽きます。「どこに出す?」は自由度が高すぎて、慣れていない子にはきつい質問です。「右の味方? それとも自分で運ぶ?」と2択にすれば、必ず答えが出ます。答えが出れば、理由を聞ける。会話が止まらないことがいちばん大事です。
回数の設計は、こうしてください。1回5分、3〜5場面、週2〜3回。これ以上やると、子どもは飽きます。
- 1回の時間:5分(長くても10分)
- 1回の場面数:3〜5場面
- 頻度:週2〜3回
- タイミング:ごはんのあと、寝る前、雨で練習が流れた日
- やめどき:子どもの返事が短くなったら、その日は即終了
効果が見えると、つい時間と回数を増やしたくなります。でもこれは勉強と同じで、量を増やした瞬間に「やらされるもの」になります。「もっとやりたい」と言われても、物足りないところで切り上げるのが続けるコツ。次のときに、子どものほうから「あれやろう」と言ってきます。
07現場の声+グラウンドにつなげる
監修コーチのチームで実際に聞こえてくる、保護者のリアルな声です。
「『どこに出す?』を止めて聞くだけ。うちは寝る前の5分でやってます。だんだん理由が具体的になってきた」
「最初は『わかんない』ばっかり。2択にしたら急に答えるようになって、そこから話が続くようになりました」
「つい『そこじゃないでしょ』と言ってしまって、やらなくなった時期があります。正解を言わないのは本当に大事」
「自分の試合動画でやったら食いつきが全然ちがった。他人のプレーより真剣に考えてます」
家で考えたことを、グラウンドで一度でも試せると、定着が段違いになります。試合の前に「今日は受ける前に1回まわりを見る、それだけ」と決めて送り出す。帰ってきたら「見れた?」と聞くだけでいい。できた・できなかったを評価せず、やろうとしたことだけをほめてください。
家の近くで軽くボールを触りながらやるなら、足元は土や人工芝でも滑りにくいトレーニングシューズが安心です。判断のクイズに答えたことを、その場ですぐ体で試せます。
△ここだけ注意:本格的な芝のグラウンドでは、スパイクよりグリップが弱く感じることがあります。試合用は別に用意して、自主練用と分けるのが現実的です。上位のスパイクは1万円を超えますが、これはその半額前後。「家のまわりで気軽に試す」用の一足としてちょうどいい価格帯です。
よくある質問
親がサッカー未経験でもできますか?
むしろ未経験のほうが上手にできます。このクイズは親が教えるものではなく、子どもに考えさせて理由を聞くものだからです。知らないから『へえ、そう考えたんだ』と本気で言える。答えを持っている親ほど、つい正解を言ってしまって失敗します。聞き役に徹してください。
1回どれくらいやればいいですか?
1回5分、3〜5場面、週2〜3回で十分です。長くやったり毎日やったりすると、勉強と同じで『やらされるもの』になります。子どもが『もっとやりたい』と言うところで切り上げるのがコツ。物足りないくらいで終わると、次は向こうから誘ってきます。
子どもが『わかんない』しか言いません。
選択肢を2つに絞ってください。『右の味方に出す? それとも自分でドリブル?』と聞けば必ず答えが出ます。答えが出たら『なんでそっち?』と理由だけ聞く。ゼロから考えるのは大人でも大変です。慣れてきたら3択に、最後は選択肢なしに戻していきます。
答えが実際のプレーと違ったら、教えたほうがいいですか?
教えないでください。映像の中の選手がやったことは、その選手が選んだ1つの手であって唯一の正解ではありません。実際、その選択が失敗している場面もたくさんあります。『この人は左を選んだね。なんで右だと思ったの?』と、子どもの案を対等に扱ってください。
何歳くらいから効果がありますか?
低学年でも、2択形式ならしっかり成立します。ただし場面数を減らして、1回2〜3場面くらいから。中学年以降は自由回答でも答えられるようになります。低学年のうちは『まわりに誰がいた?』という配置を思い出すクイズのほうが入りやすいです。
判断が変わってきたら、あとは足元がそれについてくるかどうか。合わないシューズは、決めた動きの邪魔になります。学年・足型からピッタリの一足を選びたい方は、比較ページをどうぞ → 比較ランキングで学年・足型からピッタリのシューズを選ぶ
「サッカーが上手い選手より、サッカーを通じて“かっこいい大人”を育てる」
少年サッカーの育成年代を指導して3年目、これまで延べ50名ほどの子どもたちと向き合ってきた現役コーチ。判断力・認知・立ち位置・パススピード・切り替え、GKからのビルドアップを軸に、「個の前進力」と「戦術理解」の両立を追求しています。毎月、練習設計と自己内省をレポートにまとめてPDCAを回す、分析型の指導者です。
現場でサッカー未経験の保護者の声を大切にしてきました。専門用語をゼロに噛み砕き、「親が今日からできること」に翻訳してお届けします。
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