土のグラウンド、笛が鳴る。「え、今の反則?」——お子さんのチームに不利な判定が出た瞬間、隣にいたお父さんが立ち上がって「今のはないでしょ!」と声を上げた。その声に、ピッチの上の子がびくっと肩をすくめ、次のプレーで足が止まる。少年サッカーの現場で、じつはよく起きる光景です。審判も人間、しかも少年サッカーでは保護者が笛を吹くことも珍しくありません。この記事を読み終えるころには、納得できない判定が出たとき、親としてどう受け止め、子にどんな声をかければいいかが分かります。
誤審や微妙な判定は、少年サッカーでは必ず起きるもの。抗議しても判定は覆りません。親がやるべきは、「抗議より受け止める」「子の前で審判を責めない」「切り替えを後押しする声かけ」の3つ。判定に親がヒートアップすると、いちばん萎縮するのはピッチの上の我が子です。
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この記事は、少年サッカーの現場に立つ現役のU10・8人制コーチが監修しています。先日も、ある試合でPKかどうか微妙な接触があり、不利な判定を受けたチームの保護者席がざわつきました。数人のお父さんが立ち上がって審判に詰め寄る空気になった——その3分後、当のチームは連続で2失点。子どもたちの足がぴたりと止まっていました。判定そのものより、大人の空気が子を縛る。これが少年サッカーの誤審問題の本質です。専門用語は使わず、現場のリアルから解説します。
01誤審は必ず起きる|まず前提を変える
大前提として、ミスジャッジ(審判の見間違い・判定ミス)はどんな試合でも起きます。プロの試合ですらVAR(ビデオ判定)を入れても議論が残るのですから、走りながら一瞬を目で見て笛を吹く少年サッカーの審判が、すべてを完璧に裁けるはずがありません。
大事なのは、「誤審はゼロにできない」を最初の前提に置くこと。ここが揺らぐと、判定が出るたびに一喜一憂して、親も子も消耗します。ミスジャッジは天気のようなもの。雨が降ったら濡れる、それと同じで「起きるもの」として受け止める。この構えができているかどうかで、試合中の心の余裕がまるで変わります。
「お金を払っているのだから正確に裁いてほしい」——大人の試合ならまだしも、少年サッカーでこの期待を持つと苦しくなります。審判の多くはボランティア。完璧を求める視線は、審判を萎縮させ、結果的に笛が慎重になりすぎて試合が止まりがちになることも。期待値を「人間がやること」に戻しましょう。
02保護者審判という事情
少年サッカー、とくに8人制の地域リーグや練習試合では、審判を保護者やコーチが務めることがよくあります。専門の審判員ではなく、我が子のために時間を割いて笛を吹いてくれている——この事情を知っているかどうかは大きい。
先日の交流戦でも、急きょ人数が足りず、あるお母さんが「初めてなんですけど…」と言いながら副審の旗を持ってくれました。当然、オフサイドの判定は迷うし、旗を上げるタイミングも遅れる。でも、その方がいなければ試合は成立しませんでした。誤審を責める前に、まず笛を吹いてくれる人がいることのありがたさ。ここに立てるかどうかで、判定への見方が180度変わります。
ちなみにオフサイド(攻撃側の選手が、パスの瞬間に相手の最後方の選手より前でボールを受けると反則になるルール)は、少年サッカーで最も判定が難しいものの一つ。大人でも間違えます。「保護者審判が見逃した/取った」で熱くなるのは、いちばん不毛な争いです。
03抗議しても判定は覆らない
これはハッキリさせておきたいこと。観戦席から抗議しても、判定はまず覆りません。サッカーは審判の判定が絶対で、やり直しはないのが原則です。声を上げて得られるのは、覆らない判定への不満と、周囲の気まずい空気だけ。
「今の見えてた!?」「ちゃんと見てよ!」と審判に大声を飛ばす/相手チームの保護者と判定をめぐって言い合う/自分の子に「今のは相手の反則だぞ、ちゃんと言え」と吹き込む。どれも判定は変わらず、子の集中を削り、チーム全体の空気を悪くするだけです。
もちろん、明らかに危険なプレーが見逃されて子どもの安全に関わる場合は別です。その場合も、試合後にコーチを通じて冷静に伝えるのが筋。観戦席から感情的に叫ぶのとは、まったく別の行動です。判定への疑問は「その場で審判へ」ではなく「試合後に穏やかに」。この置き換えを覚えておいてください。
04ヒートアップが子を萎縮させる
この記事でいちばん伝えたいのが、ここです。判定に親がヒートアップすると、萎縮するのはピッチの上の我が子。
冒頭の話の続きですが、保護者席が審判への不満でざわついたあのチーム、じつは前半は互角に戦っていました。ところが大人が声を荒げた直後から、子どもたちのプレーが明らかに変わった。ボールを持っても前を向かず、安全なバックパスばかり。挑戦しなくなったんです。親が怒っている=この場は失敗できない、と子どもは肌で感じ取ります。半年間見てきて、この因果関係は何度も目にしました。
子どもは親の顔色を、大人が思う以上によく見ています。判定への怒りは子には「自分が責められている」ようにすら映る。だからこそ、判定が不利に出たときの親の第一声が大切なんです。舌打ちや「あーあ」の一言が、子の背中から挑戦する勇気を奪います。
05切り替えられる子の声かけ
では、切り替えられるチームは何が違うのか。前述の試合の相手チームは、微妙な判定で有利になった場面でも保護者席が静かでした。そして不利な判定が出たときには、あるお父さんが「ドンマイ! 次いこう!」と明るく声をかけていた。子どもたちはすっと切り替えて、次のプレーに入っていきました。
- 判定が出た瞬間の第一声を用意する:「ドンマイ、切り替え!」「大丈夫、次!」。判定に触れず、前を向かせる言葉を先に口から出す。
- 結果でなくプレーを見る:「今の判定は残念だったけど、その前の突破よかったよ」。判定に埋もれた子の good play を拾う。
- 家に帰ってから蒸し返さない:「あの審判ひどかったな」を家庭に持ち込まない。子は判定を引きずる理由がなくなる。
- 審判の苦労に触れる:「審判の人、走り回って大変だったね」。この一言が、子のリスペクトを育てる。
切り替えの早い子は、才能でそうなっているわけではありません。周りの大人が「切り替えていい」という空気を作っているんです。判定は変えられないけれど、そのあとの声かけは親が100%コントロールできる。ここに集中しましょう。
06審判へのリスペクトを子に見せる
最後に。少年サッカーは勝ち負けの前に人を育てる場です。判定への向き合い方は、子にとって最高の教材になります。
試合の終わりに、親が審判に「ありがとうございました」と頭を下げる姿を子が見ている。判定に不満があった日ほど、その一礼には価値があります。不利な判定でも審判に敬意を払う大人を見て育った子は、理不尽なことがあっても人のせいにせず、自分にできることに向かう強さを身につけます。逆に、判定のたびに大人が審判を責める姿を見て育てば、子もミスを人のせいにする癖がつく。どちらの背中を見せるかは、親次第です。
リスペクト——相手・審判・仲間を敬う心は、サッカーの土台。誤審は、その土台を子に教える絶好のチャンスでもあります。
「微妙な判定でカッとなって声を上げたら、その後うちの子が全然ボールをもらいに行かなくなった。反省しました」
「『ドンマイ次いこう』を第一声にすると決めてから、子どもの切り替えが早くなった気がする」
「審判が保護者ボランティアだと知って、判定への見方が変わった。感謝が先に来るようになった」
「試合後に審判へお礼を言う夫を見て、息子が真似して頭を下げるようになった」
判定が不利に出た瞬間の第一声を、事前に決めておくこと。「ドンマイ、次!」でも「切り替えいこう!」でも構いません。とっさに口をつく言葉が決まっていれば、舌打ちや不満が出る前に、前向きな声が先に出ます。判定は変えられないが、子の背中を押す言葉は今日から変えられる。
よくある質問
明らかな誤審でも抗議してはいけないの?
観戦席から審判へ大声で抗議するのは避けてください。サッカーは判定が絶対で、抗議しても覆らないのが原則です。得られるのは覆らない不満と気まずい空気だけ。どうしても伝えたい疑問があれば、試合後にコーチを通じて冷静に伝えるのが筋です。ただし、危険なプレーの見逃しなど安全に関わる場合は、その場でも落ち着いてコーチや審判に伝えて構いません。
少年サッカーの審判は誰がやっているの?
地域リーグや練習試合では、保護者やコーチがボランティアで務めることがよくあります。専門の審判員ではなく、我が子のために時間を割いて笛を吹いてくれている方が多いのが実情です。だからこそ、誤審を責める前に、笛を吹いてくれる人がいるありがたさに立てるかどうかが大切になります。
判定に納得できないとき、子どもに何と声をかければいい?
判定そのものには触れず、前を向かせる言葉を第一声にしましょう。『ドンマイ、切り替え!』『大丈夫、次いこう!』が基本です。加えて、判定に埋もれた子のいいプレーを『さっきの突破よかったよ』と拾ってあげると、子は判定を引きずらずに済みます。家に帰ってから『あの審判ひどかった』と蒸し返さないことも大切です。
親がヒートアップすると、子どもにどんな影響があるの?
いちばん萎縮するのはピッチの上の我が子です。親が怒っていると子どもは『この場は失敗できない』と感じ取り、挑戦をやめて安全なプレーばかりになります。子どもは親の顔色をよく見ていて、判定への怒りを『自分が責められている』ように受け取ることさえあります。切り替えの早い子は、周りの大人が切り替えていい空気を作っているのです。
審判へのリスペクトは、どう子どもに伝えればいい?
言葉より背中で見せるのがいちばんです。試合後に親が審判へ『ありがとうございました』と頭を下げる姿を、子どもは見ています。判定に不満があった日ほど、その一礼には価値があります。不利な判定でも審判に敬意を払う大人を見て育った子は、理不尽なことを人のせいにせず、自分にできることへ向かう強さを身につけます。
判定に振り回されず、子が伸び伸びとプレーできる環境を整えたい。その一つが、足に合った道具です。試合で気持ちよく踏ん張れるよう、足元も見直したい方は比較ページをどうぞ。
観戦の「今の笛なに?」を減らすなら、審判のジェスチャーの意味・応援のマナー もあわせてどうぞ。
「サッカーが上手い選手より、サッカーを通じて“かっこいい大人”を育てる」
少年サッカーの育成年代を指導して3年目、これまで延べ50名ほどの子どもたちと向き合ってきた現役コーチ。判断力・認知・立ち位置・パススピード・切り替え、GKからのビルドアップを軸に、「個の前進力」と「戦術理解」の両立を追求しています。毎月、練習設計と自己内省をレポートにまとめてPDCAを回す、分析型の指導者です。
現場でサッカー未経験の保護者の声を大切にしてきました。専門用語をゼロに噛み砕き、「親が今日からできること」に翻訳してお届けします。
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