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ポジショナルプレーとは|グアルディオラの原則と、小学生に必要な部分だけ

PITCH NAVI 編集部|2026.08.13 更新|読了 約11

監修現役 U10・8人制サッカーコーチ指導3年目・延べ50名を指導

試合を見ていて、こんな場面に出くわしたことはありませんか。子どもがボールを持った。前は空いている。でも味方が3人、同じところに集まってきて、あっという間に囲まれて奪われる——。「もっと散らばれ!」とベンチから声が飛ぶ。あれは、子どもがサボっているわけでも、下手なわけでもありません。どこに立てばいいかを、まだ誰も教えていないだけです。ここを整理したのが、ジョゼップ・グアルディオラのポジショナルプレーという考え方。この記事では、専門用語をいったん全部そぎ落として、親が試合を見るときに使える形まで噛み砕きます。

\ 時間がない人へ・先に結論 /

ポジショナルプレーは「うまい選手を並べる戦術」ではなく、立つ場所をあらかじめ決めておくことで、いつも味方が助けに行ける状態を作るという考え方です。核は3つ。①ピッチを広く使う ②同じ場所に2人立たない ③常に三角形を作る。小学生に必要なのはこの3つだけで、5レーンやハーフスペースといった用語は要りません。まずは「味方と同じところに立たない」——これだけで、試合の景色が変わります。

この記事は、少年サッカーの現場に立つ現役のU10・8人制コーチが監修しています。監修コーチが、ある練習試合で「味方2人が3メートル以内にいた回数」を数えたことがあります。前半だけで27回。そのうち19回はボールを失っていました。子どもたちはボールに引き寄せられる。これは本能なので、叱っても直りません。ところが翌週、「ボールを持っている子から10歩は離れる」という、たった1つのルールだけを決めて試合をしたところ、同じ相手に対して失う回数が19回から7回に減りました。技術は1週間では変わりません。変わったのは立つ場所だけです。

01ポジショナルプレーとは何か|一言でいうと

ポジショナルプレー(positional play/スペイン語では juego de posición)を一言でいうと、「誰がどこに立つか」をあらかじめ決めておくサッカーです。

ふつう、サッカーは「ボールがここに来たから、こう動く」と考えます。ボールが起点です。ポジショナルプレーは順番が逆で、まず立ち位置があり、そこにボールを運ぶ

たとえるなら、消防署の配置に近い。火事がどこで起きるかは分かりません。だから消防署は、街のどこで火が出ても数分で行ける場所にあらかじめ散らばって建てられています。「火事が起きてから移動する」のでは間に合わないからです。

サッカーも同じで、ボールがどこで奪われるか、どこが空くかは分かりません。だからあらかじめ、どこで何が起きても助けに行ける場所に立っておく。これがポジショナルプレーの発想です。

\ ここだけ押さえればOK /

ふつうのサッカー=ボールが動いてから、人が動く
ポジショナルプレー=人が先に立ってから、ボールを動かす

だから「走る量」ではなく「立つ場所」の話になります。足が遅い子でも成立するのが、この考え方の一番いいところです。

02グアルディオラが変えたのは「技術」ではなかった

ポジショナルプレーを世界に広めたのが、ジョゼップ・グアルディオラです。バルセロナ、バイエルン・ミュンヘン、マンチェスター・シティを率い、行く先々でリーグ優勝を重ねてきた監督。

ここで誤解されやすいのが、「メッシがいたから勝てた」「金があるから勝てた」という見方です。もちろんそれもあります。ただ、グアルディオラが本当に変えたのは選手の顔ぶれではなく、選手の立つ場所でした。

彼の考え方の背景には、アルゼンチン人指導者フアン・マヌエル・リージョの影響があるとされています。グアルディオラは現役時代からリージョのもとでプレーし、監督になってからもコーチとして招いています。リージョが繰り返してきたのは、「サッカーは足でやるチェスではない。だが、位置がすべてを決める点は似ている」という趣旨の指摘でした。

そしてグアルディオラ自身が何度も語ってきたのが、ボールを持つこと自体は目的ではないという考えです。パスを回すのは、相手を動かしてズレを作るため。回すことがゴールなら、それはただのボール回しになってしまう。

コーチのアドバイス

ここは少年サッカーでも本当に大事なところです。「パスをつなげ」と言われて育った子が、前が空いているのに横に出す。あれは子どものせいではなく、「つなぐこと」が目的だと覚えてしまったからです。つなぐのは前に進むため。この順番を、大人が間違えて伝えてしまうことがあります。

033つの優位|数・位置・質

ポジショナルプレーを理解するときの物差しが、3つの優位です。ここだけは用語を覚える価値があります。試合を見る目が変わるからです。

3つの優位

① 数的優位=その場所で、味方の人数が相手より多い状態
② 位置的優位=人数は同じでも、立っている場所が相手より良い状態
③ 質的優位=1対1で、その味方が相手より確実に上回っている状態

少年サッカーでよく使われるのは①です。「2対1を作れ」「数的優位を作れ」。これは分かりやすい。

ただ、本当に効くのは②の位置的優位です。人数が同じでも、相手の背中側に立っているだけで、ボールが入った瞬間に相手は振り向かなければならない。その0.5秒が決定的になります。

そして③の質的優位。ドリブルが飛び抜けて得意な子がいるなら、その子を1対1になる場所にわざと立たせる。これも立ち位置の設計です。

8人制での考え方

8人制は11人制よりピッチが狭く、人数も少ない。つまり1人の立ち位置がスカスカにも密集にもなりやすいということです。11人制なら誰かが埋めてくれる穴が、8人制では埋まりません。だから8人制のほうが、実は立ち位置の影響が大きく出ます。

04なぜ「同じ場所に2人」がダメなのか

ポジショナルプレーの原則で、小学生に最も効くのがこれです。同じ場所に2人立たない。

理由は単純で、相手1人で2人を消せてしまうから。味方2人が3メートル以内にいると、相手ディフェンダーは1人でその2人を同時に見られます。つまり、味方が1人増えたのに、相手の手間は増えていない。人数をかけたのに、何も得していないのです。

逆に、2人が15メートル離れて立っていたら、相手は1人では両方を見られません。どちらかを捨てるしかない。捨てられたほうが、フリーになります。

冒頭で紹介した「3メートル以内に27回」というのは、まさにこの状態が27回起きていたということです。子どもがボールに寄っていくのは、ボールに触りたいから。当たり前の感情で、悪気はまったくありません。

やりがちだけど逆効果な声かけ
「散れ!」だけ言う → どこへ散るのか分からないので、その場でウロウロするだけになる
「ボールに寄るな」と禁止だけする → 触りたい気持ちを否定されて、動かない子になる
ポジション名で怒る → 「お前はサイドだろ」は、立つ場所ではなく役職の話になっていて伝わらない

代わりに効くのが、距離を数字で言うことです。「10歩離れて」「ボールを持ってる子と、白い線をはさんで立って」。子どもは距離を目で測れないので、歩数やラインなど、目に見えるものに置き換えると一気に伝わります。

05三角形|助けに行ける状態を常に作る

もう1つの原則が、常に三角形を作ることです。

ボールを持っている子から見て、パスを出せる味方が常に2人以上いる状態。これが三角形です。1人しかいないと、その1人を相手に消された瞬間、ボールを持った子は孤立します。孤立した子は、蹴り出すか、奪われるかしかありません。

少年サッカーで「ボールを持つと必ず蹴っちゃう子」がいます。あれは勇気の問題ではなく、周りに三角形ができていないことが原因のケースが非常に多い。出しどころがないから蹴るしかない。本人だけを責めても直りません。

\ ここが一番の落とし穴 /

三角形は「作る」ものではなく「保ち続ける」もの。ボールが動けば三角形も崩れるので、そのたびに作り直す必要があります。だからポジショナルプレーは「立ったら終わり」ではなく、ボールが動くたびに全員が少しずつ立ち直すサッカーになります。これが「走らないのに疲れる」と言われる理由です。

06小学生にはどこまで必要か|コーチの本音

ここからは、監修コーチの現場での結論です。一般論ではなく、U10を預かる立場としての判断としてお読みください。

5レーンやハーフスペースは、小学生には要りません。

ピッチを縦に5本のレーンに割って、その中間のレーン(ハーフスペース)を使う——という考え方があります。大人のサッカーでは非常に有効です。ただ、U10の子どもに5レーンを教えると、多くの場合レーンから出られない子が生まれます。「自分はここの担当だから」と、目の前に空いたスペースがあっても入っていかない。

本来は自由に動くための道具が、動きを縛る鎖になってしまう。これは実際に起きます。

では小学生に必要なのは何かというと、この3つだけです。

U10に必要な3つ

味方と同じところに立たない(10歩は離れる)
ピッチの幅をいっぱいに使う(両サイドに必ず1人ずつ)
ボールを持った味方から、いつも2人が見えている(三角形)

この3つは、レーンもハーフスペースも使わずに伝えられます。そして高学年になり、これが体に入ってから初めて、レーンの話が意味を持ちます。順番を飛ばすと、逆に下手になる。これが現場の実感です。

07親が試合で見るポイント3つ

試合中、親がボールばかり目で追ってしまうのは自然なことです。ただ、ボールから目を離すと、急に見えてくるものがあります。

Aボールを持っていないときの、わが子の立ち位置

ADRILL

ボールが逆サイドにあるとき、わが子はどこに立っているかを見ます。ボールのほうへ寄っていっているか、それとも幅を保って開いているか。それだけを3回見るだけで十分です。

目安:1試合に3回だけ
ポイント:「ボールに寄っていた」ことを責めないでください。それは本能です。見るのは責めるためではなく、家で話す材料を持つためです。

B味方2人が近づきすぎた瞬間

BDRILL

味方同士が3メートル以内に固まった直後、何が起きるかを見ます。ほとんどの場合、相手1人に両方消されるか、ボールを失います。この因果関係が見えると、試合の理解が一段深くなります。

目安:1試合に2〜3回
ポイント:ここが見えるようになると、「なんで取られたの?」ではなく「近すぎたね」と言えるようになります。原因を言える親は、子どもにとって心強い存在です。

Cボールを持った子から、味方が何人見えているか

CDRILL

わが子がボールを持った瞬間だけ、周りを見ます。出せる味方が2人いるか、1人か、ゼロか。蹴り出してしまった場面はたいてい「ゼロ」です。

目安:ここぞの場面で1回
ポイント:ゼロだったなら、それは味方の立ち位置の問題です。わが子だけの責任ではないと分かるだけでも、家での声かけが変わります。
💬 実際にあった保護者の声

「散れ」としか言えなかったのが、「10歩離れて」に変えたら本人がすぐ動くようになりました

3年生のお子さんの保護者

ボールから目を離して見たら、うちの子が毎回ボールに向かって走ってることに初めて気づきました

2年生のお子さんの保護者

蹴り出しちゃうのを叱ってたけど、出しどころがなかっただけと分かって申し訳なくなりました

4年生のお子さんの保護者

5レーンを家で教えようとしてやめました。まず幅を使う、で十分だと納得できたので

高学年のお子さんの保護者
※ 監修コーチが少年サッカーの現場で実際に聞いた声です(個人が特定されない形で掲載しています)。感じ方には個人差があります。

立ち位置の練習は、実は家の前や公園でもできます。マーカーを置いて「こことここには同時に立たない」を体で覚えるだけ。マーカーは軽くて数がある物が使いやすく、地面を傷めないタイプが安心です。

ミズノ サッカーボール 4号球(JFA検定球)
立ち位置の練習に
約5,000円前後
小学生の公式球サイズ(4号)
検定球なので試合と同じ感覚で練習できる
立ち位置の練習でも「本物のボール」だと集中が続く
※ 価格・在庫は変動します。最新は各公式サイトをご確認ください。

△ここだけ注意:立ち位置の練習そのものにボールは必須ではありません。ただ、パスを受ける・止めるところまで通してやるなら、試合と同じ4号球のほうが感覚がずれません。すでに4号球をお持ちなら買い足す必要はない、という前提でご覧ください。

08よくある質問

Q

ポジショナルプレーとは、簡単にいうと何ですか?

A

「誰がどこに立つか」をあらかじめ決めておき、その立ち位置にボールを運ぶという考え方です。ふつうのサッカーが「ボールが動いてから人が動く」のに対して、ポジショナルプレーは「人が先に立ってからボールを動かす」。走る速さではなく立つ場所で優位を作るので、足が速くない子でも成立するのが特徴です。ジョゼップ・グアルディオラが世界的に広めました。

Q

小学生に5レーンやハーフスペースを教えるべきですか?

A

U10の段階では必要ないと考えています。5レーンを教えると「自分はこのレーンの担当だから」と、目の前が空いていても入っていかない子が出てくるためです。自由に動くための道具が、動きを縛る鎖になってしまいます。まずは「味方と同じところに立たない」「幅をいっぱいに使う」「三角形を作る」の3つだけで十分で、これが体に入ってから高学年でレーンの話をすると、初めて意味を持ちます。

Q

「同じ場所に2人立たない」のは、なぜですか?

A

味方2人が3メートル以内にいると、相手ディフェンダー1人で両方を同時に見られてしまうからです。人数をかけたのに、相手の手間は増えていない状態になります。逆に15メートル離れていれば相手は1人では両方を見られず、どちらかがフリーになります。子どもに伝えるときは「散れ」ではなく「10歩離れて」のように、歩数やラインなど目に見えるもので言うと一気に伝わります。

Q

うちの子はボールを持つとすぐ蹴り出してしまいます。直りますか?

A

本人の勇気の問題ではなく、周りに出しどころ(三角形)ができていないことが原因のケースが非常に多いです。ボールを持った子から見て、パスを出せる味方が2人以上いる状態が三角形。これがゼロなら、蹴るか奪われるかしか選択肢がありません。試合中にわが子がボールを持った瞬間だけ周りを見ると、味方が何人見えているかが分かります。ゼロなら、それはチーム全体の立ち位置の問題です。

Q

グアルディオラは「ボールを持つこと」が目的なのですか?

A

むしろ逆です。ボールを持つこと自体は目的ではなく、パスを回すのは相手を動かしてズレを作るためだ、という考えを繰り返し語ってきました。回すことがゴールになってしまうと、ただのボール回しになります。少年サッカーでも「パスをつなげ」と言われ続けた子が、前が空いているのに横に出すことがあります。つなぐのは前に進むためだという順番を、大人が正しく伝える必要があります。

Q

8人制でもポジショナルプレーの考え方は使えますか?

A

使えますし、むしろ8人制のほうが立ち位置の影響が大きく出ます。11人制ならスペースを誰かが埋めてくれますが、8人制は人数が少ないぶん、1人が寄りすぎると穴が埋まりません。密集もスカスカも起きやすい。だからこそ「同じところに立たない」「両サイドに必ず1人ずつ」という原則が、そのまま結果に直結します。

立ち位置が分かってくると、子どもは「走らなくても効く方法がある」ことに気づきます。走力で勝てない時期こそ、この考え方が効きます。次は、ボールを持っていないときに前を向いて受ける技術へ → 半身で受ける|前を向けない子が変わる教え方 試合の見方そのものを変えたい方はプロの試合の見方ガイドへ。

この記事の監修
監修現役 U10・8人制サッカーコーチ

サッカーが上手い選手より、サッカーを通じて“かっこいい大人”を育てる

育成年代の指導3年目、延べ50名ほどの子どもたちと向き合ってきた現役コーチ。判断・認知・立ち位置を軸に「個の前進力」と「戦術理解」の両立を追求しています。

用品・ルール・練習の記事は、公開前に監修コーチが内容を確認し、事実に関わる記述は一次情報にあたって整理しています。監修者について →

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