「リフティング、10回もできない」。そう言って、子どもがボールを蹴るのをやめてしまった——。少年サッカーの家練で、いちばん多い行き止まりがこれです。リフティングは黙々とした反復で、できない子にはただの苦行。数字が伸びないと、そのままボール嫌いになります。そこで現場でよく使うのがサッカーテニス。ネット(または線)をはさんで、ワンバウンドありでボールを蹴り合う遊びです。ルールが単純で、親子2人でも成立して、しかも浮き球の処理・体の向き・落下点に入る力がまとめて身につく。この記事を読み終えるころには、今日の夕方から庭や公園でそのまま始められるルールが手に入ります。
サッカーテニスは、「線を1本引いて、ワンバウンドありで蹴り合うだけ」で成立します。ネットも道具もいりません。親子2人なら3m×3mのスペースで十分。リフティングが苦手な子ほど伸びるのがこの遊びの特長です。→ リフティングが続かない子への段階練習
この記事は、少年サッカーの現場に立つ現役のU10・8人制コーチが監修しています。監修コーチのチームで、リフティングが5回止まりだった3年生の子に、練習前の10分だけサッカーテニスをやらせ続けたことがあります。2か月後、リフティングは30回を超えました。本人はリフティングの練習をほとんどしていません。理由ははっきりしていて、サッカーテニスはワンバウンドで間ができるぶん、落ちてくるボールの下に入る時間がある。この「入る」動作が身につくと、リフティングも自然についてくるんです。しかも全部、勝ち負けのある遊びとして進みます。
01サッカーテニスとは|ワンバウンドありの蹴り合い
サッカーテニスは、その名のとおりテニスをサッカーのボールと足でやる遊びです。ネットや線をはさんで向かい合い、相手のコートにボールを蹴り返す。相手が返せなければ得点。プロのチームでもウォーミングアップに使われる、れっきとした練習でもあります。
少年サッカーで使う場合、ワンバウンドありにするのが絶対条件です。ノーバウンドだけにすると難しすぎて、低学年は3往復も続きません。バウンドを1回はさむだけで、ラリーは一気に続くようになります。続くこと自体が、この遊びの価値です。
経験のある親ほどやりがちです。上手な形を先に見せたい気持ちは分かりますが、ノーバウンド縛りは低学年には成立しません。1本も続かず、5分で「もうやらない」になります。
OK:最初はワンバウンド+手で1回さわってもOKくらい緩くしてスタート。ラリーが5往復続くようになってから、少しずつ縛りを足していきます。
02基本ルール|今日から使えるいちばん簡単な形
細かいルールを覚える必要はありません。この3行だけで始められます。
- 線をはさんで向かい合い、相手のコートに蹴り返す
- 自分のコートでワンバウンドまでOK(2回バウンドしたら相手の点)
- 足・もも・胸・頭はOK、手だけNG
得点は5点先取か、時間を決めて多いほうの勝ち。低学年なら5点先取を3セットくらいが集中の続く長さです。
01サッカーテニス・基本形(親子2人)
3〜4m離れて線をはさんで向かい合います。下から手で投げるサーブでスタート。自分のコートでワンバウンドさせてから、足のインサイド・もも・胸のどれかで相手コートへ返します。2バウンドしたら相手の得点。
023タッチ・ルール(慣れてきたら)
自分のコートで最大3回まで足でさわってから返してよい、というルールを足します。「止める→整える→返す」の3ステップが自然に身につきます。
03ノーバウンド・チャレンジ(上級)
バウンドさせずに返し合います。ボレー(浮いたボールを直接蹴る)の練習そのもの。連続何回続いたかを2人の共通記録として数えると、勝負ではなく協力の形になります。
03コートの代わり|線・ベンチ・ひもで十分
「ネットがないからできない」——これは誤解です。境目が分かれば何でもコートになります。現場で実際に使われている代用品はこのあたり。
- 地面に引いた線(土なら足で1本引くだけ・アスファルトならチョーク)
- 公園のベンチ(ちょうどいい高さの「ネット」になります)
- ひもやテープを2本のペットボトルに渡す(庭向き・高さ50cmで十分)
- 置いたカバンやコーンを一列に(低学年ならこれで十分機能します)
高さは低いほどラリーが続きます。テニスのネットのような高さは、少年サッカーにはいりません。むしろ地面の線だけから始めるのが、いちばん失敗しない形です。
親子2人なら合計6m×3mもあれば成立します(1人あたり3m四方)。マンションの共用スペースや道路ではやらず、公園・河川敷・広めの庭で。壁や窓、駐車中の車の近くは避けてください。ボールが浮く遊びなので、周囲の安全確認は屋外練習の中でも特に大事です。
04人数別のやり方(2人・3人・4人以上)
サッカーテニスの強みは、人数が変わってもそのまま成立することです。
2人(親子):1対1。いちばんボールに触れる回数が多く、練習効率は最高です。親が返す役に徹すれば、子どもは10分間ずっと動き続けられます。
3人:1対2にするか、「王様」形式にします。勝ったほうが残って、負けたほうが交代。待ち時間が短く、順番待ちで冷めません。
4人以上(きょうだい・友だちと):2対2が最適です。1人が止めて、もう1人が返す「連係プレー」が生まれるので、味方を見る力まで育ちます。「止める人」「返す人」を最初に決めておくと、ぶつかりません。
5人以上で1面を回すと、1人あたりの触る回数が激減します。待っている時間が長い練習は、子どもの集中が切れる最大の原因。人数が増えたら、コートを2面に分けるか、王様形式で高速に回してください。「1人が10秒に1回はボールにさわれているか」を目安にすると判断しやすいです。
05これで身につく力|浮き球・体の向き・落下点
遊びに見えて、サッカーテニスで鍛えられる力は、そのまま試合につながります。大きく3つあります。
① 浮き球の処理。少年サッカーの試合は、実は浮いたボールがとても多い。キーパーからのパント、クリア、ミスキック。ところが練習では地面を転がるボールばかり扱うので、いざ浮き球が来ると手が出ない子が続出します。サッカーテニスは、ほぼ全部のタッチが浮き球です。
② 落下点に入る力。落ちてくるボールの真下に体を運ぶ——これは意外と難しい動きで、経験の少ない子は必ず遅れます。サッカーテニスは1回のラリーごとにこれをやるので、10分で数十回の反復になります。ヘディングやトラップが急に上手くなる子の多くが、ここを通っています。
③ 体の向きを作る。返す方向を意識すると、自然と体を半身にして構えるようになります。試合で「相手に背中を向けてボールを受けて詰まる」子には、この感覚が効きます。
① ボールが来たときにその場で待たず、1歩動いているか
② 最初のタッチで自分の前に落とせているか(体の真下や後ろだと苦しい)
③ 返すときに相手のコートを見ているか
指摘ではなく質問で。「今、どこ狙った?」と聞くだけで、子どもは自分で意識するようになります。
浮き球を足の甲や内側で扱う遊びなので、靴が足に合っていないと当てる面が安定しません。特に足の幅が広い子・甲が高い子は、細いモデルだと指先が外に逃げて、当てるたびに微妙にズレます。幅にゆとりのあるモデルを選ぶだけで、この違和感は解消します。
△ここだけ注意:幅にゆとりがあるぶん、足が細い子にはゆるく感じることがあります。足の形は個人差が大きいので、まず今の足幅を測ってから選んでください。上位モデルは1万円を超えますが、これはその半額前後。低学年の成長期には、この価格帯を短いサイクルで買い替えるほうが現実的です。
06リフティングが苦手な子ほど効く理由
ここがこの記事のいちばん大事なところです。リフティングが苦手な子ほど、サッカーテニスは効きます。理由は3つあります。
①「間」がある。リフティングは、落ちてくるボールに0.5秒で対応し続ける連続作業です。苦手な子はそのテンポについていけない。サッカーテニスはワンバウンドをはさむので、考える時間と、体を運ぶ時間ができる。この余裕が、できる回数を一気に増やします。
② 失敗が「点」で終わる。リフティングは1回のミスで数字がゼロに戻ります。苦手な子には、これがかなりつらい。サッカーテニスは、ミスしても相手に1点入るだけで、すぐ次のラリーが始まります。ミスが引きずられない構造なんです。
③ 相手がいる。1人で数を数える練習は、うまくいかない日に心が折れます。相手がいると、勝ち負けや笑いで気持ちが持続します。実際、監修コーチのチームでリフティング嫌いだった子が、サッカーテニスなら30分続けたことがありました。
そして冒頭に書いたとおり、この遊びを続けた子はリフティングの回数も伸びます。落下点に入る動きと、足に当てる面の感覚が、遊びながら育つからです。リフティングを直接練習させるより、遠回りに見えて速いことがある——これは覚えておいて損はありません。浮いたボールの扱い方そのものは浮き球の処理の基本にまとめています。
07盛り上げるハンデのつけ方・現場の声
親と子、あるいは兄と弟でやると、実力差で一方的になりがちです。ハンデは最初に宣言して、堂々とつけるのがコツ。こっそり手を抜くのは、子どもに必ずバレます。
- 親だけ利き足と逆足のみで返す
- 親だけノーバウンドで返す(子どもはワンバウンドOK)
- 親のコートを広くする(守る範囲が増える=不利になる)
- 子どもは3タッチOK、親は1タッチのみ
このどれかを入れると、実力差があっても最後まで競ります。接戦になった試合は、必ず「もう1回やろう」につながります。
「リフティングは10回で泣いてたのに、サッカーテニスなら1時間やってる。同じボールなのに不思議です」
「庭にひもを1本張っただけ。準備30秒でこんなに盛り上がるとは思わなかった」
「兄弟でやらせると勝ち負けでもめるので、2人の連続記録を数える形にしたら平和になりました」
「私が逆足だけのハンデにしたら本気で負けて、子どもが大喜びしてました」
よくある質問
サッカーテニスはネットがないとできませんか?
必要ありません。地面に引いた線1本でも成立します。公園のベンチ、ペットボトル2本にひもを渡したもの、置いたカバンを一列に並べたものでも十分です。むしろ高さは低いほうがラリーが続くので、低学年は地面の線から始めるのがおすすめです。
何人からできますか?
親子2人から成立します。2人ならボールに触る回数が最も多く、練習効率は最高です。3人なら勝った人が残る王様形式、4人以上なら2対2が最適。5人以上で1面を回すと待ち時間が増えるので、コートを2面に分けてください。
サッカーテニスで何が身につきますか?
主に3つです。浮き球の処理、落ちてくるボールの真下に入る動き、そして返す方向に体を向ける『体の向き』。少年サッカーの試合は浮き球がとても多いのに、普段の練習では転がるボールばかり扱うため、この3つは差がつきやすいポイントです。
リフティングが苦手な子でもできますか?
むしろ苦手な子にこそ向いています。ワンバウンドをはさむぶん考える時間と動く時間ができるうえ、ミスしても1点取られるだけで次のラリーがすぐ始まるため、リフティングのように数字がゼロに戻る挫折がありません。続けるうちにリフティングの回数も伸びる子が多いです。
実力差がある親子や兄弟でも成立しますか?
ハンデを最初に宣言してつければ成立します。親だけ逆足のみ、親だけノーバウンド、親のコートだけ広くする、子どもは3タッチまでOKなど。こっそり手加減すると子どもに見抜かれて白けるので、ルールとして堂々と設定するのがコツです。
浮き球を扱う遊びは、足に当てる面が安定してこそ伸びます。サイズや足型が合っていない靴は、その感覚をじゃまします。今の学年と足に合った一足を確認しておきましょう → 比較ランキングで学年・足型からピッタリのシューズを選ぶ
「サッカーが上手い選手より、サッカーを通じて“かっこいい大人”を育てる」
少年サッカーの育成年代を指導して3年目、これまで延べ50名ほどの子どもたちと向き合ってきた現役コーチ。判断力・認知・立ち位置・パススピード・切り替え、GKからのビルドアップを軸に、「個の前進力」と「戦術理解」の両立を追求しています。毎月、練習設計と自己内省をレポートにまとめてPDCAを回す、分析型の指導者です。
現場でサッカー未経験の保護者の声を大切にしてきました。専門用語をゼロに噛み砕き、「親が今日からできること」に翻訳してお届けします。
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