日曜の夕方、宿題も終わって、外はまだ明るい。「サッカーやりたい」と言われても、上の子は塾、下の子はお昼寝中、親は夕飯の支度で手が離せない——。相手がいないから練習できない、で終わってしまう日が、少年サッカーの家庭には必ずあります。でも、ひとりでもできる練習は山ほどあるし、むしろひとりのほうが伸びる部分もある。この記事を読み終えるころには、子どもが自分で20分回せるメニューと、やる気が出ない日の逃げ道まで手元にそろいます。相手も広い場所も、いりません。
ひとり練習は「ボール1個+畳2枚ぶんのスペース+20分」あれば成立します。大事なのは種目より毎回同じ順番でやること。①足裏タッチ ②両足インサイド ③リフティング ④壁当て ⑤ドリブル——この5つを固定すれば、子どもが自分で回せるようになります。壁が使えるなら → 壁当て練習のやり方
この記事は、少年サッカーの現場に立つ現役のU10・8人制コーチが監修しています。毎年、はっきり感じることがあります。1年で伸びる子は、才能より「家でボールに触った日数」が多い。うちの学年で、入団時はいちばん下手だった子が、半年後に真ん中のグループまで来たことがありました。何をしていたか聞いたら、「毎日、寝る前に足裏タッチ100回だけ」。それだけです。1日3分。でも半年で約180日ぶん、ボールに触っている。週2回の練習しかない子との差は、そこで開きます。長い時間より、短くても切らさないこと。ひとり練習の価値は、ここにあります。
01ひとり練習が効く理由|触った回数が技術になる
サッカーの技術は、頭で理解するものではなく体が勝手にやってくれる状態まで持っていくものです。そのために必要なのは、とにかくボールに触った回数。チーム練習は2時間あっても、そのうち自分のボールに触っている時間は、実はほんの数分ということも珍しくありません。ひとりなら、20分まるごと自分のボールです。
しかもひとり練習には、チーム練習にない利点があります。失敗しても誰にも見られないこと。利き足じゃない足でうまく蹴れなくても、リフティングが3回で落ちても、恥ずかしくない。だから苦手なことに手を出せる。試合で使えるようになるのは、こういう時間に磨いたもののほうが多いです。
親がいちばんやりがちなのが、「せっかくやるなら1時間」と長さを求めること。これで続いた家庭を、ほとんど見たことがありません。子どもは飽きるし、疲れて次の日やらなくなる。OKは「短くて、毎日」。低学年なら10〜15分、中高学年でも20〜30分で十分です。集中が切れる前にやめるのが、明日も続けるコツ。
0220分の型|順番を固定すると子どもが自分で回せる
毎回メニューを考えるのは、親にも子にも負担です。順番を固定してしまうのが正解。うちの学年で自主練が続いている子は、ほぼ全員がこの形です。
- ① 足裏タッチ(体を温める・3分)
- ② 両足インサイドタッチ(ボールに慣れる・3分)
- ③ リフティング(記録に挑戦・4分)
- ④ 壁当て、または止める蹴るの1人版(5分)
- ⑤ ドリブル(まっすぐ・ジグザグ・5分)
これで20分。順番が決まっていると、子どもは考えずに始められます。「今日は何やろう」と迷う時間が、いちばんやる気を削るんです。紙に5つ書いて玄関か冷蔵庫に貼っておく。これだけで自主練の定着率が変わります。
03ひとりでできるメニュー6つ
具体的なメニューです。コーンも相手もいりません。ペットボトルやスリッパで代用できます。
01足裏タッチ
ボールの上に足の裏を軽く乗せて、左右の足で交互にトントンとタッチする。ボールは動かさず、その場でリズムよく。両手は軽く広げてバランスを取る。
02両足インサイドタッチ
足の内側(インサイド)で、ボールを左右に押し合うように動かす。右足の内側で左へ、左足の内側で右へ。足を止めず、小さく速く。
03リフティング(ワンバウンドあり)
ボールを落として、ワンバウンドしたところを足の甲で蹴り上げる。また落として、バウンドさせて蹴る。ノーバウンドで続けるより先に、この形で回数を稼ぐ。
04壁当て(止める蹴る)
壁に向かって足の内側で蹴り、返ってきたボールを足の内側でピタッと止める。止めてから蹴るまでを1回と数える。まず右足だけ、次に左足だけ。
05止める蹴るの1人版(自分に返す)
壁がない場合、ボールを自分で軽く前に投げ、落ちてきたところを足の内側やももで止める。止めたら足元に置いて、また投げる。壁の代わりに自分の手を使う形。
06コーンなしドリブル
ペットボトルやスリッパを2〜3個、3歩ずつ離して置き、そのあいだをジグザグに運ぶ。触る回数を増やして、ボールを体の近くから離さないことだけ意識する。
この6つを回せば、家でやることに困りません。ドリブルをもっと詰めたい場合は家でできるドリブル練習も参考にしてください。
04やる気が出ない日は「5分だけ」の設計
続かない最大の理由は、「やらなきゃいけない日」を作ってしまうことです。毎日20分と決めると、できなかった日に自己嫌悪が生まれて、そこから途切れます。
だから最初から「やる気が出ない日は5分だけ」を制度として組み込んでおく。5分メニューは、①足裏タッチ30秒×2 ②リフティング1回だけ挑戦 ③壁当て10本、これで終わり。ゼロの日を作らないこと自体が目的なので、質は問いません。
共通しているのが「カレンダーに丸をつける」だけの記録。5分でも丸、20分でも丸。丸が並ぶこと自体がごほうびになります。月末に「今月20日できたね」と数えるのがポイント。うまくなったかどうかは目に見えませんが、日数は目に見える。ここを見せてあげると、子どもは驚くほど続きます。
05親の声かけ|言ってはいけない一言
ひとり練習で、親の役割は教えることではありません。技術の指摘はコーチの仕事です。親がやるのは、始めやすくすることと、続いたことを認めることの2つだけ。
いちばん子どものやる気を折るのが、親からの技術的なダメ出しです。本人はうまくいかないことを分かっていて、それでもやっている。そこに指摘が乗ると、練習が「怒られる時間」に変わります。OKは結果ではなく行動をほめること。「今日もやったね」「昨日より1回多かったじゃん」で十分。うまくなったかどうかは、コーチが見ています。
もうひとつ効くのが親が5分だけ相手をすること。ずっと付き合う必要はありません。「最後の5分だけ、パス受けるよ」と言って混ざるだけで、子どもの集中がぐっと戻ります。逆に、ずっと見ているとプレッシャーになる子もいるので、そこは性格を見て。
06室内・狭い場所でのやり方と注意点
雨の日や夜は、家の中でもできます。ただし条件があります。ボールは蹴らず、足裏・インサイドのタッチだけ。リフティングもやるなら、天井と照明から離れた場所で、やわらかいボールかリフティング用の小さいボールに替えてください。
床がフローリングだと滑るので、裸足か室内シューズで。マンションの場合は下の階への音があるので、ジョイントマットを敷くと安心です。10分でも、ボールに触った日数はしっかり1日ぶんカウントされます。
△ここだけ注意:トレシューは土のグラウンドではスパイクほど止まりません。試合はスパイク、自主練はトレシューという使い分けが現実的です。上位モデルのスパイクは1万円を超えますが、これは約半額。自主練でスパイクを消耗させないぶん、試合用の一足が長持ちします。
07現場の声+続けるための道具の話
「寝る前の足裏タッチ100回だけ続けさせたら、半年でボールを見ずに運べるようになりました」
「メニューを紙に書いて冷蔵庫に貼ったら、言わなくても自分で始めるようになった」
「つい口を出してしまって嫌がられたので、見ないことにしたら逆に長くやるようになりました」
「カレンダーに丸をつけるだけ。月末に数えるのが本人の楽しみになっています」
道具はほとんどいりません。ボール1個と、足に合った靴。ただ、サイズの合っていない靴でひとり練習を続けると、靴ずれや足の痛みにつながります。痛みが続く場合は無理をせず、整形外科の受診を(症状には個人差があります)。
よくある質問
ひとり練習は毎日どれくらいやればいいですか?
低学年なら10〜15分、中高学年でも20〜30分で十分です。大事なのは長さより日数。1時間を週1回より、15分を週5回のほうが確実に伸びます。集中が切れる前にやめるのが、翌日も続けるコツです。
壁が使える場所がありません。どうすればいいですか?
自分でボールを軽く投げて、落ちてきたところを足やももで止める『止める蹴るの1人版』で代用できます。壁当ての目的はボールを止める感覚を育てることなので、壁がなくても練習は成立します。足裏タッチやドリブルは、そもそも壁がいりません。
やる気が出ない日はどうすればいいですか?
最初から『やる気が出ない日は5分だけ』を決めておいてください。足裏タッチ30秒×2、リフティング1回挑戦、壁当て10本で終了。目的はゼロの日を作らないことなので、質は問いません。カレンダーに丸をつけるだけの記録も効果的です。
親はどう関わればいいですか?
技術のダメ出しはしないでください。本人はできていないことを分かっています。親の役割は、始めやすくすることと、続けたことを認めることの2つ。『今日もやったね』で十分です。最後の5分だけ相手をする、くらいの関わり方が続きます。
家の中でもできますか?
できます。ただしボールは蹴らず、足裏タッチとインサイドタッチだけにしてください。リフティングをするなら、やわらかいボールや小さいボールに替えて、照明から離れた場所で。マンションならジョイントマットを敷くと音の心配も減ります。
ひとり練習を続けるほど、足元の道具の差が出てきます。サイズの合った一足は、痛みを防いで、練習の質そのものを上げてくれる。学年・足型からぴったりのシューズを選びたい方は → 比較ランキングで学年・足型からピッタリのシューズを選ぶ
「サッカーが上手い選手より、サッカーを通じて“かっこいい大人”を育てる」
少年サッカーの育成年代を指導して3年目、これまで延べ50名ほどの子どもたちと向き合ってきた現役コーチ。判断力・認知・立ち位置・パススピード・切り替え、GKからのビルドアップを軸に、「個の前進力」と「戦術理解」の両立を追求しています。毎月、練習設計と自己内省をレポートにまとめてPDCAを回す、分析型の指導者です。
現場でサッカー未経験の保護者の声を大切にしてきました。専門用語をゼロに噛み砕き、「親が今日からできること」に翻訳してお届けします。
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