試合の後半、ボールを追いかけていた我が子が、急にスピードをゆるめて下を向いた。「あ、ほどけてる」——足を止めて、しゃがんで結び直す数秒。その間に相手はスルスルと前へ。ベンチから見ていて、思わず「なんで試合前にちゃんと結んでこなかったの」と言いたくなる。でも本当は、結び方が悪いんじゃなくて、ほどけない結び方をまだ知らないだけなんです。スパイクのひもは、ちょっとしたコツで別物のようにほどけなくなる。この記事を読み終えるころには、試合中にほどけない結び方・平ひもと丸ひもの違い・低学年の「結ばない」選択肢・ひもの交換のしかたまで、ぜんぶ分かるようになります。
ほどけない対策は3段階。①結び方を「イアンノット」か「二重結び(ダブルノット)」に変えるだけで、ほとんどほどけなくなる ②ほどけやすいのは断面が丸い「丸ひも」。平たい「平ひも」に替えると摩擦が増えてゆるみにくい ③まだ自分で固く結べない低学年は、そもそも“マジックテープ式”という手がある。まずは結び方から。今日の家練でできます。→ 学年・足型で選べる比較ランキングを見る(30秒)
この記事は、少年サッカーの現場に立つ現役のU10・8人制コーチが監修しています。声を大にして言いたいのは、「ひものほどけ」は性格やだらしなさの問題ではなく、ただの技術だということ。実際、去年1年だけでも、試合中にひもがほどけて自分で踏んづけて転んだ場面を、5〜6回は見ました。転んだ本人が悪いわけじゃない。結び方を「イアンノット」に変えた子は、それ以降ほとんどほどけなくなりました。直すべきは子どもの意識ではなく、結び目のかたち——ここを親御さんが知っているだけで、週末のイライラがひとつ減ります。
01なぜ試合中にほどける? ゆるむ本当の理由
まず知っておいてほしいのは、ひもがほどけるのは「結び方が根本的にゆるい」からだということ。きつく結んだつもりでも、走る・止まる・蹴るの繰り返しで、結び目には小さな衝撃が何百回とかかります。この衝撃が、少しずつ結び目をほどく方向に働くんです。
とくにほどけやすいのが、ちょうちょ結び(蝶結び)の「向き」が間違っているケース。同じちょうちょ結びでも、結ぶ向きひとつでほどけやすさは大きく変わります。
最初のひと結び(下でクロスさせて縛る部分)と、そのあとのちょうちょ結びが同じ向きになっていると、結び目が「縦」になり、ゆるみやすくなります。これは俗に「縦結び」と呼ばれる失敗。見た目は結べているのに、走っているうちにスルスルほどけていきます。子どもが「ちゃんと結んだのにほどけた!」と言うとき、たいていこの縦結びになっています。
見分け方はかんたんです。結んだあと、ちょうちょの羽が「横(左右)」にきれいに広がっていれば正解、羽が「縦(上下)」を向いていたら縦結びです。縦結びになっていたら、最初のクロスと最後のちょうちょを逆向きにするだけで直ります。まずはここをチェックしてください。
でも、正しい向きで結んでも、走り回ればいつかはゆるむもの。そこで登場するのが、次に紹介する「イアンノット」と「二重結び」です。
02ほどけない結び方①|イアンノット(速い・ほどけない)
サッカーをやっている子に、いちばんおすすめしたいのがイアンノットという結び方です。名前は聞き慣れないかもしれませんが、「速く結べるのに、ほどけにくい」という、いいとこ取りの結び方。世界中の陸上選手やサッカー選手が使っている、定番のテクニックです。
- 最初のひと結びは、ふつうと同じ:左右のひもを1回クロスさせて、ぎゅっと縛ります。ここはいつも通り。
- 両手で、左右それぞれに「輪っか(ループ)」を作る:ちょうちょ結びのときは片方だけ輪を作りますが、イアンノットは左右“両方”に輪っかを作るのがポイント。
- 2つの輪っかを、互い違いに通してキュッと引く:左の輪を右の輪の“内側”に、右の輪を左の輪の“内側”にくぐらせて、同時に外へ引きます。これで完成。
言葉だけだと難しく感じますが、「両手に輪っかを作って、交差させて引くだけ」。慣れると、ふつうのちょうちょ結びより速く結べます。しかも、結び目の構造がしっかりかみ合うので、ほどけにくさは段違い。
現場での実感を言うと、「試合中にほどける常連」だった子に、このイアンノットを1回教えただけで、ほどけの相談がぱたっと来なくなったことが何度もあります。動画サイトで「イアンノット 結び方」と検索すると、手の動きが一発で分かる動画がたくさん出てきます。親子で一度見ながらやってみると、5分で覚えられます。
自分でしっかりひもを結べる中学年〜高学年には、まずこれを覚えさせるのがおすすめ。速く結べてほどけにくいので、試合の合間の結び直しもスムーズです。まだ結ぶこと自体が苦手な低学年は、無理にこれを覚えさせるより、次に紹介する二重結びか、後半で触れる“マジックテープ式”のほうが現実的です。→ 結び直しやすさも含めた足型別の選び方はこちら
03ほどけない結び方②|二重結びと結び直しのコツ
「イアンノットはちょっと難しそう…」という場合の、いちばんお手軽な対策が二重結び(ダブルノット)です。やり方は超シンプル。
ふつうにちょうちょ結びをしたあと、できた2つの輪っかを、もう一度くるっと結ぶ。 たったこれだけ。ちょうちょの羽同士でもう一回ちょうちょ結びをするイメージです。ひと手間かけるだけで、ほどけにくさがぐんと上がります。
- まず、縦結びにならないよう正しくちょうちょ結び:羽が横に広がる向きで結びます(01を参照)。
- できた2つの輪を、もう一度結ぶ:輪っか同士を交差させて、くぐらせてキュッ。これで二重結びの完成。
- 結び目は、甲の真ん中より少し内側に寄せる:ボールを蹴る面(インサイド)に結び目が乗らないようにすると、蹴り心地がよくなります。
ただし、二重結びにはひとつだけ注意点があります。
ほどけないようにと二重結びをぎゅうぎゅうに固くしすぎると、練習後に自分でほどけなくなることがあります。低学年だと「ほどけない!」と半泣きで戻ってくることも。二重にするのは1回まで、そして最後のちょうちょはほどける向き(縦結びにしない)でつくること。これで「ほどけにくいけど、自分で外せる」バランスになります。
もうひとつ、地味だけど効くコツを。ひもを通すとき、上のほうの穴(履き口に近い2〜3個)は少しきつめに締めると、かかとが浮かず、結び目もゆるみにくくなります。「下はほどよく、上はきつめ」——この締め方を覚えると、同じひもでもフィット感がまるで変わります。
04平ひもと丸ひも|ほどけにくいのはどっち
意外と知られていないのが、ひもの“形”でほどけやすさが変わるということ。スパイクのひもには、大きく2種類あります。
- 平ひも(ひらひも):断面が平たい、きしめんのようなひも。多くのサッカースパイクに最初から付いています。
- 丸ひも(まるひも):断面が丸い、ロープ状のひも。ランニングシューズなどでよく見かけます。
結論から言うと、ほどけにくいのは「平ひも」です。理由は摩擦。平たいひもは結び目で接する面積が広く、しっかりかみ合ってゆるみにくい。一方、丸ひもは接する面積が小さく、つるっと滑ってほどけやすい傾向があります。
もし今使っているのが表面がツルツルした化学繊維の丸ひもで、しょっちゅうほどけるなら、ひも自体が原因かもしれません。結び方を変えても改善しないときは、平ひもに交換するだけで一気に解決することがあります。数百円で買えるので、コスパのいい対策です。
とはいえ、スパイクに最初から付いているのは、たいてい平ひも。だからまずは「今のひもの向き(縦結びチェック)」と「結び方(イアンノット・二重結び)」を見直すのが先。それでもダメなら、ひもの種類を疑う——この順番で十分です。専門用語でいう「グリップ(滑りにくさ)」は、結び方とひもの種類、両方で決まると覚えておいてください。
05低学年は「結ばない」も正解|マジックテープという選択肢
ここまで結び方の話をしてきましたが、そもそも「ひもを結べない」年齢の子には、別の答えがあります。それがマジックテープ(面ファスナー/ベルクロ)式のシューズです。
現場でよく見る光景があります。練習開始のホイッスルが鳴っているのに、ひもが結べなくて、一人だけスタートに間に合わない低学年の子。本人は焦って半泣き、周りはもう走り出している。悪いのは子どもじゃありません。「自分でひもを固く結ぶ」というのは、6〜8歳にはけっこう高度な作業なんです。指の力もまだ弱く、朝の忙しい時間に親が結んでも、昼にはほどけてしまう。
①自分で着脱できる=自立につながる(親が毎回しゃがまなくていい)/②途中でほどける心配がほぼない=プレーに集中できる/③朝の「早く履いて!」バトルが消える。ひもを結ぶ練習は家でゆっくりやればいい。まずはプレーを止めないことを優先してあげるのが、この時期は正解です。
とくに、幅広・甲高で、ひも靴だと横がきつくなりがちな低学年の子には、マジックテープ式のワイドモデルがよく合います。実際、「ひもが結べなくて毎回もめていた家庭」が、マジックテープ式に替えただけで朝の支度が5分早くなった、という声を何度も聞きました。
まだスパイクではなく、ゴム底のトレシュー(トレーニングシューズ)で始めるご家庭には、こちらも定番。ひもタイプでも、上で紹介した結び方を覚えれば十分戦えます。
06ひもの交換ガイド|長さ・通し方・替えどき
ひもは消耗品です。使っているうちに先端のプラスチック(アグレット)が取れてほつれたり、途中が切れかけたりします。ここでは、いざ交換するときに困らないポイントをまとめます。
まず「長さ」。 これを間違えると、結び目が長すぎて踏んだり、短すぎて結べなかったりします。目安は、スパイクの穴(ハトメ)の数で決まります。
- 穴が片側5個(計10個)前後のジュニア用:おおよそ110〜120cmが目安。
- 迷ったら、今ついているひもを外して長さを測る:これがいちばん確実。同じ長さを買えば失敗しません。
- 長すぎるより、少し短めが扱いやすい:余ったひもは踏んで転ぶ原因になります。
次に「通し方」。 難しく考えず、外したひもと同じ通し方を再現すればOKです。心配なら、外す前にスマホで写真を撮っておくと安心。基本は、下(つま先側)から左右交互にクロスさせて通し、履き口の穴まで上げていきます。
ひもの先端(アグレット)が取れてボサボサにほつれると、穴に通しにくくなり、朝の支度で毎回イライラすることに。応急処置として、ほつれた先端に透明なセロテープをきつく巻くと、しばらく通しやすくなります。ただし根本的には交換が確実。100円ショップやスポーツ店で、平ひもが数百円で手に入ります。
替えどきのサインは、①途中がすり切れて細くなっている、②何度結んでもすぐほどける(ひも自体が劣化して滑る)、③先端がほつれて通しにくい——このどれか。靴本体はまだ使えるのに、ひものせいで買い替えを考えるのはもったいない話。ひもだけ替えれば、また気持ちよく使えます。ちなみに、お手入れをサボると靴もひもも一気に傷みます。ここは合わせて押さえておきたいところ。
07現場の声+試合前の安心メモ
最後に、監修コーチのチームで実際に聞こえてくる、保護者のリアルな声を紹介します。同じ「サッカー少年の親」の実感なので、いちばん参考になるはずです。
「イアンノットを親子で覚えたら、あれだけ試合中にほどけてたのが本当になくなった。もっと早く知りたかった」
「ひもが結べなくて練習に出遅れるのがかわいそうで、思いきってマジックテープの靴に。朝がラクになった」
「結び方を変えても直らなくて、平ひもに交換したらピタッとほどけなくなった。原因はひもだった」
「二重結びを固くしすぎて、脱げなくて半泣きで帰ってきたことが…。ほどける向きで結ぶのが大事だと学んだ」
こうして見ると、悩みの多くは「結び方」か「ひもの種類」か「年齢に合った靴か」のどれか。原因さえ分かれば、対策はどれもお金をかけずにできます。
① 結ぶ前にちょうちょの羽が「横」に広がる向きか確認(縦結びはほどける)
② 結べる子はイアンノットか二重結び、まだ難しい子はマジックテープ式を検討
③ 何度直してもほどけるならツルツルの丸ひもを疑い、平ひもに交換
この3つを押さえておけば、試合中にひもがほどけて足を止める場面は、まず起きません。あとは当日、家を出る前にもう一度きゅっと締め直すだけ。
よくある質問
サッカースパイクのひもが試合中にほどけます。どうすれば防げますか?
まずは結び方を見直してください。おすすめは「イアンノット」(両手に輪っかを作って交差させて引く結び方)か、ちょうちょ結びのあともう一度結ぶ「二重結び(ダブルノット)」です。どちらも普通のちょうちょ結びよりぐんとほどけにくくなります。それでも直らないときは、ツルツル滑る丸ひもが原因のことがあるので、摩擦の大きい平ひもに交換すると改善することが多いです。
縦結びになっているとほどけやすいと聞きました。どう見分けますか?
結んだあと、ちょうちょの羽の向きを見てください。羽が「横(左右)」にきれいに広がっていれば正しい結び、羽が「縦(上下)」を向いていたら縦結びで、走るうちにゆるみやすい状態です。直し方は簡単で、最初のクロス(下の縛り)と最後のちょうちょ結びを逆向きにするだけ。これで横向きの、ほどけにくい結びになります。
平ひもと丸ひも、サッカーにはどちらがいいですか?
ほどけにくさで選ぶなら、断面が平たい「平ひも」がおすすめです。結び目で接する面積が広く、しっかりかみ合ってゆるみにくいためです。断面が丸い「丸ひも」、とくに表面がツルツルした化繊のものは滑ってほどけやすい傾向があります。多くのスパイクは最初から平ひもが付いていますが、丸ひもでほどけに困っているなら、数百円の平ひもに替えるのが手軽な対策です。
低学年の子がひもをうまく結べません。どうしたらいいですか?
6〜8歳でひもを固く結ぶのは、じつはかなり高度な作業です。無理に結ばせるより、この時期は「マジックテープ(面ファスナー)式」のシューズを選ぶのが現実的。自分で着脱でき、途中でほどける心配もないので、練習にすぐ入れてプレーに集中できます。ひもを結ぶ練習は、家でゆっくりやれば大丈夫。まずはプレーを止めないことを優先してあげてください。
スパイクのひもだけ交換できますか?長さの目安は?
もちろん交換できます。ひもは消耗品で、100円ショップやスポーツ店で数百円から買えます。長さの目安は、穴が片側5個(計10個)前後のジュニア用でおよそ110〜120cm。いちばん確実なのは、今ついているひもを外して長さを測り、同じ長さを買うことです。先端がほつれて通しにくいときは、応急処置として透明テープを先端にきつく巻くと通しやすくなります。
ひもがほどけなくなったら、次は靴そのものを長持ちさせる番です。泥落としから乾かし方まで、寿命が倍変わるお手入れをまとめました → サッカースパイクの洗い方・お手入れ完全ガイド
そもそもの一足選びから見直したい方は、学年・足型別の選び方から → 失敗しないジュニアサッカースパイクの選び方
結び方まで整ったら、あとは機種選び。学年・足型からピッタリの一足を選びたい方は、比較ページを用意しています → 比較ランキングで学年・足型からピッタリを選ぶ
「サッカーが上手い選手より、サッカーを通じて“かっこいい大人”を育てる」
少年サッカーの育成年代を指導して3年目、これまで延べ50名ほどの子どもたちと向き合ってきた現役コーチ。判断力・認知・立ち位置・パススピード・切り替え、GKからのビルドアップを軸に、「個の前進力」と「戦術理解」の両立を追求しています。毎月、練習設計と自己内省をレポートにまとめてPDCAを回す、分析型の指導者です。
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