日曜の午後、公園に集まったのは3人。「これじゃ試合できないね…」と子どもたちがボールを蹴り合って、10分でつまらなそうにしている。あるいは家族で、お父さんと兄弟の3人。人数が中途半端で、何をやればいいか分からない——。実は3人は、少年サッカーの練習でいちばん使い勝手のいい人数です。2人ではできず、5人だと薄まる。3人だからこそ成立するメニューがある。この記事を読み終えるころには、3人で回せる練習6つと、けんかにならない進め方が手に入ります。
3人集まったら、まず「2対1」をやってください。これ一つで、パス・判断・守備が全部入ります。3人の最大の強みはボールに触る回数が圧倒的に多いこと。11人でやる練習の何倍も触れます。回し方は「1メニュー5分・全員が全ポジションを1回ずつ」で固定。親子2人しかいない日の練習は → 親子でできる自主練メニュー
この記事は、少年サッカーの現場に立つ現役のU10・8人制コーチが監修しています。監修コーチのチームで、練習を1回まるごと数えたことがあります。16人でのゲーム形式だと、1人あたりのボールタッチは1分間に平均3回ほど。ところが3人組のメニューにすると、これが1分間に15回以上に跳ね上がります。5倍です。人数が少ない日は「今日は人数いないから」と落ち込みがちですが、実際はその逆。少ない日こそ、うまくなるチャンスなんです。
もう一つ、現場でよく見る光景があります。3人で自主練を始めた子たちが、10分後にはけんかしている。原因はだいたい同じで、「ずっと鬼役の子」ができてしまうこと。これは仕組みで防げます。この記事では、そこも含めて紹介します。
01なぜ3人がベストなのか|触る回数が5倍
まず、3人という人数の価値をはっきりさせておきます。
2人だと、パスは一直線にしかなりません。行って、返して、また行く。これはこれで大事な練習ですが、サッカーの本質である「どっちに出すか選ぶ」がありません。ところが3人になった瞬間、味方が2人になる、または三角形ができる。三角形ができると、選択肢が生まれます。「右に出すか、左に出すか」「自分で運ぶか、預けるか」。これが判断力の入り口です。
そして人数が少ないので、止まっている時間がほぼゼロ。試合形式だと、ボールが遠くにあるあいだは走っているだけの時間ができますが、3人ならほぼ常に自分に関係があります。触る回数、考える回数、決める回数。全部が跳ね上がる。
① ボールタッチが5倍(人数が少ないほど自分の番が来る)
② 三角形ができる=「どっちに出すか」の判断が入る
③ 守る役が必ずいる=相手のいる状況で練習できる
2人だと②③が作れず、5人以上だと①が薄まります。3人は、判断と回数を両立できる最小人数なんです。
023人だからできるメニュー6つ
ここからが本題です。用意するのはボール1個と、目印になるもの(コーンでもペットボトルでも上着でも)2〜4個だけ。公園でも、広めの駐車スペースでも成立します。
012対1(3人練習の主役)
攻める2人、守る1人。10m×10mくらいの範囲で、攻撃側は決めたライン(線でもコーンでも)を、ドリブルかパスで越えたら成功。守備側がボールを奪ったら攻守交代。
これが3人練習の主役です。数的優位(味方のほうが人数が多い状態)をどう使うかという、サッカーで一番よく出てくる場面がそのまま入っています。低学年でも「相手が来たら、来てないほうに出す」だけで通用します。うまくいったときに大きくほめると、一気にコツをつかみます。
02三角形パス回し
3人が三角形に立ちます(1辺は5〜8mくらい)。ボールを止めて→蹴るを繰り返し、時計回りに回します。慣れたら反時計回り、さらに慣れたら『2タッチ以内』の制限をつけます。
見た目は地味ですが、止める・蹴る・顔を上げるの3つが同時に入る優秀なメニューです。三角形になると、ボールを受ける前に体の向きを作らないと次に出せません。この「体の向き」が、実は試合でいちばん差が出るところ。
03鳥かご(2対1のパス回し)
外に2人、真ん中に鬼役が1人。外の2人はパスを回し、鬼はカットを狙います。カットされたら、ミスした人が鬼と交代。範囲は6m四方くらいの狭さで。
プロのチームも必ずやる練習の、いちばん小さい形です。狭い場所で、追われながら正確に蹴る——試合そのものです。楽しいので子どもが勝手に熱中しますが、鬼が固定されないよう大人が見ておいてください。
04ゴール前の合わせ(クロス→シュート)
1人がサイドからボールを転がして入れる役、1人がゴール前で合わせてシュートする役、1人がキーパー。転がしたボールを、止めずに一発で蹴るのがルール。
3人いると、出す人・決める人・止める人がそろいます。2人ではできない、いちばん実戦に近い形です。子どもたちがいちばん盛り上がるメニューでもあるので、練習の後半に入れると集中が続きます。
05三角形ドリブル通過
目印を三角形に3つ置きます。1人がドリブルで三角形の外側を回り、残り2人は目印の内側から手を出さずに足だけで邪魔する(動ける範囲は三角形の中だけ)。30秒で何周できるか数えます。
ドリブルの練習は、相手がいないと本番で使えません。かといって1対1ばかりだと、抜けない子が心を折ってしまいます。この形なら「相手がいるけど、抜けなくてもいい」ので、低学年でも前向きに取り組めます。
063人ドリブル→パス→シュートの流し
A(スタート)→ドリブルで5m運ぶ→Bへパス→Bが軽くコントロールしてCへ→Cがシュート。1周終わったら全員が1つ役をずらします。止まらず流れるように。
全員が同じ回数だけシュートを打てるのがこのメニューの良いところ。3人練習でありがちな「シュートを打ちたがる子が独占する」問題が、仕組みで解決します。
03けんかにならない回し方の3ルール
3人練習でいちばんの敵は、疲れでも寒さでもありません。もめ事です。実際、監修コーチのチームでも、3人組で自主練をした子たちが「ずっと鬼だった」「あいつがパスをくれない」でけんかになる話は毎年聞きます。
防ぎ方は、根性論ではなく仕組みです。3つだけ守ればほぼ起きません。
① 役割は「時間」で強制交代/「取られたら交代」だけにすると、下手な子が鬼に固定されます。「1分たったら必ず交代」を足す
② 1メニューで全員が全役割を1回ずつ/シュートも守備も、必ず同じ回数
③ 始める前に「今日のメニューと順番」を全員で口に出す/もめる原因の多くは、決まっていないこと
3人のうち1人だけ学年が上、あるいは明らかに上手。このとき上の子に合わせると、下の子は10分で心が折れます。逆に下に合わせると上の子が退屈する。
OK/上の子には制限をつけるのが正解です。「利き足禁止」「2タッチまで」「守備は手を後ろに組む」。同じメニューのまま、難しさだけ変えられます。この方法なら両方が真剣にやれます。
このハンデ方式は本当に効きます。上の子にとっては苦手なほうの足を使う練習になり、下の子にとっては「勝てるかも」という手応えになる。3人の実力差があるときは、まずこれを試してください。
04時間の区切り方|60分をどう使うか
3人での自主練は、60分が上限と考えてください。それ以上は、子どもの集中が持ちません。この年代の集中力は、だいたい1テーマ12〜15分が限界です。
- 0〜10分:ウォームアップ(三角形パス回し・軽く走る)
- 10〜25分:2対1(1分×6本+休憩)
- 25〜35分:鳥かご(2分×4本)
- 35〜50分:ゴール前の合わせ + 三角形ドリブル通過
- 50〜60分:3人ドリブル→パス→シュートの流し(締め)
大事なのは「最後をシュートで終わる」こと。ゴールが決まって終わった日は、子どもは「楽しかった」と言って帰ります。逆に、走って終わったり、うまくいかない練習で終わると、次に誘っても来ません。終わり方が、次回の参加率を決めます。
スマホやキッチンタイマーを子ども自身に管理させると、驚くほどスムーズに回ります。「時間だよ」と大人が言うと文句が出ますが、自分でタイマーを鳴らした子は素直に交代します。1分・2分の設定を任せるだけで、練習が自分たちのものになります。
3人練習は走る量も多く、急に止まって方向を変える動きが連続します。足元がすべると、せっかくの練習が転倒とけがで終わってしまう。公園の土や芝で使うなら、地面をとらえられる靴が1足あると、練習の質が変わります。
△ここだけ注意:トレシューは、ぬかるんだ土のグラウンドでは本格スパイクほど食いつきません。公園や人工芝での自主練用と割り切るのが正解です。1万円を超えるスパイクと違い、この価格帯で1足持っておけると自主練のハードルが下がります。
05兄弟+親の3人でやるときのコツ
友だちが集まらなくても、兄弟+親の3人で十分成立します。むしろこの組み合わせは、家の都合で時間を決められるぶん、続けやすい。
ただし、家族3人ならではの注意点があります。親が本気を出しすぎないこと。大人が守備役に入ると、子ども2人がかりでも抜けません。抜けない練習は、上達につながらないうえに楽しくない。親が入るときは、「歩いて守る」「手を後ろに組む」「片足だけ使う」といった制限を最初に宣言してください。
上の子が下の子に本気で当たる——これが最多です。体格差があるぶん、下の子が転んで泣いて終わる。
OK/上の子には最初に「今日はお前がコーチ役」と伝えてください。教える立場になると、驚くほど手加減が上手になります。上の子にとっても、説明することは理解を深める最高の練習です。
親の役割としては、キーパーか、パスの出し手がおすすめ。この2つなら、体力を使わずに子ども2人をたっぷり動かせます。とくにゴール前の合わせ(ドリル04)は、親がキーパーに入るだけで一気に本番らしくなります。
「公園に3人しか集まらなくてがっかりしてたのに、2対1をやり始めたら1時間夢中でやってた。人数が少ないほうが触れるんですね」
「鬼が交代しないでもめたので、1分で強制交代のルールにしたら一切けんかしなくなりました」
「兄と弟でやると必ず弟が泣いてたけど、兄をコーチ役にしたら別人みたいに優しくなった」
「最後をシュートのメニューで終わるようにしてから、『また明日もやりたい』って言うようになりました」
063人練習でやりがちなNGと、現場の声
最後に、よくある失敗を3つだけ。心当たりがあれば、次回から直してみてください。
ひとつめは「メニューを決めずに始める」。3人で公園に着いて、なんとなくパスを蹴り始めると、10分でだれます。着く前に、3つだけメニューを決めておく。それだけで別物になります。
ふたつめは「広すぎる場所でやる」。公園が広いと、つい距離をとってパスをします。でも実際の試合で必要なのは、狭い場所で追われながら正確に扱う力。あえて狭くやってください。5〜8mで十分です。
みっつめは「大人が指摘しすぎる」。3人だと大人の目が全員に届くので、つい細かく口を出したくなります。でも、声をかけるのはうまくいったときだけでいい。「今の判断いいね」の一言のほうが、10個のダメ出しより効きます。
よくある質問
3人しか集まりませんでした。練習になりますか?
むしろ3人はいちばん効率のいい人数です。試合形式だと1人あたりのボールタッチは1分に3回程度ですが、3人のメニューなら15回以上に増えます。さらに三角形ができるので『どちらに出すか』という判断も入り、守る相手もいる。2人ではできず、5人以上だと薄まる要素が、3人にはすべてそろっています。
3人でできる練習で、まず何をやればいいですか?
2対1がおすすめです。攻める2人と守る1人に分かれ、決めたラインをドリブルかパスで越えたら成功というシンプルなルール。パス・判断・守備が全部入り、低学年でも『相手が来たら来ていないほうに出す』だけで通用します。役割は1分ごとに強制交代させてください。
3人だとすぐけんかになります。どうすればいいですか?
役割の交代を『取られたら交代』だけにしないでください。それだと下手な子が鬼役に固定されます。『1分たったら必ず交代』を加え、1メニューで全員が全役割を1回ずつ経験するようにすると、ほぼもめなくなります。始める前にメニューと順番を口に出して共有するのも効果的です。
3人の実力差が大きいときはどうすればいいですか?
メニューを変えるのではなく、上手な子に制限をつけてください。『利き足禁止』『2タッチまで』『守備は手を後ろに組む』など。上の子には苦手な足の練習になり、下の子には勝てる手応えが生まれるので、両方が真剣に取り組めます。上の子をコーチ役にするのも有効です。
3人練習は何分くらいがちょうどいいですか?
60分が上限の目安です。小学生の集中は1テーマ12〜15分が限界なので、メニューを細かく区切ってください。前半はパス回しと2対1、後半にシュート系を置き、必ずシュートで終わるようにすると『また来たい』につながります。タイマーを子ども自身に持たせると回し方がスムーズです。
3人練習は、急停止と方向転換の連続です。足元がすべると練習が転倒で終わってしまうので、地面をとらえられる一足が土台になります。学年・足型に合うものを選びたい方は、比較ページをどうぞ → 比較ランキングで学年・足型からピッタリのシューズを選ぶ 人数がそろわない日は親子でできる自主練メニュー、1人の日は壁当ての正しいやり方が使えます。
「サッカーが上手い選手より、サッカーを通じて“かっこいい大人”を育てる」
少年サッカーの育成年代を指導して3年目、これまで延べ50名ほどの子どもたちと向き合ってきた現役コーチ。判断力・認知・立ち位置・パススピード・切り替え、GKからのビルドアップを軸に、「個の前進力」と「戦術理解」の両立を追求しています。毎月、練習設計と自己内省をレポートにまとめてPDCAを回す、分析型の指導者です。
現場でサッカー未経験の保護者の声を大切にしてきました。専門用語をゼロに噛み砕き、「親が今日からできること」に翻訳してお届けします。
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