コーナーキックやクリアボールが、ふわりと空中からゴール前に落ちてくる。うちの子はボールの下で立ち尽くしたまま、結局トラップしようとしてもたついて、相手に取られる——。少年サッカーの試合で、実は一番もったいないのが浮き球をそのまま蹴れないことです。「ボレーなんて上手い子の技でしょ」と思われがちですが、実はやり方の順番さえ守れば、低学年でも数回でパンと当たるようになります。この記事を読み終えるころには、ボレーを分解した練習の順番と、当たらない子への具体的な合図の出し方まで分かります。
低学年のボレーは、「ワンバウンドしたボールを、上がりぎわに叩く」から始めれば必ずできます。空中のボールを直接蹴るのは最後。当てる面はインステップ(足の甲・靴ひもの部分)、そして上体を前に倒す。この3つだけです。まず落下点に入る力が8割を占めます。浮き球の扱い自体が苦手なら → リフティングでボール感覚を育てる
この記事は、少年サッカーの現場に立つ現役のU10・8人制コーチが監修しています。監修コーチのチームで、ある年の低学年12人にボレーを教えたときのこと。最初に空中のボールをそのまま蹴らせたら、当たったのは12人中2人だけでした。ところが翌週、ワンバウンドさせてから叩く形に変えただけで、12人中10人が当たった。技術の問題ではなく、順番の問題だったんです。子どもは「当たらない」経験が続くと、その技術ごと嫌いになります。逆に、最初の1回が当たった子は、家に帰ってからも自分で練習します。ボレーは、教える順番がすべてです。
01結論:ワンバウンドから始めれば低学年でもできる
まず結論から。ボレーシュート(空中のボールを地面に落とさず直接蹴ること)は、いきなり空中を狙わないこと。これが最大のコツです。
理由ははっきりしています。空中を落ちてくるボールは、常に高さが変わり続けます。子どもは足を出すタイミングを合わせられず、空振りするか、つま先に当たって明後日の方向へ飛ぶ。「当たらない」が続くと、子どもはその技術を避けるようになります。
そこで最初はワンバウンドさせる。地面で一度弾んだボールは、上がってくる高さが読みやすく、しかも一瞬「その場に浮いた」ような時間ができます。ここを叩くのが、低学年には圧倒的にやさしい。
しかも、ワンバウンドを叩く技術は試合でそのまま使えます。8人制のゴール前で来るボールは、実際ほとんどがバウンドしたボール。空中のダイレクトボレーより、こちらのほうが出番は多いくらいです。
① まずはワンバウンドの上がりぎわを叩く
② 当てる面はインステップ(足の甲・靴ひも部分)
③ 上体を前に倒す(反ると全部空に飛ぶ)
この3つを守れば、低学年でも数回でパンと当たる音が出ます。
「上がりぎわ」というのは、バウンドしたボールが地面から離れて上に向かい始めた瞬間のこと。子どもには「ボールがぴょんと跳ねて、まだ低いうち」と言うと伝わります。頂点まで待つと高すぎて、足が届きません。
02当てる面はインステップ|足の甲で「面」を作る
浮き球を蹴るときの当てる場所は、インステップ=足の甲、靴ひもが通っているあたりです。未経験の親御さんには馴染みのない言葉かもしれませんが、要するに足の一番平らで硬い部分のこと。
ここが大事な理由は2つ。硬いから力が伝わることと、平らだから面ができること。面が広ければ、多少タイミングがずれても当たります。
対して、子どもがやりがちなのがつま先で突くこと。つま先は当たる面積が小さく、ちょっとずれるとかすってしまいます。しかも足首が固定できないので、力も伝わりません。
コツは足首を伸ばして、つま先を下に向けたまま固定すること。子どもには「足を伸ばしてピーンとして、その形のまま当てる」と伝えます。バレエのつま先のイメージです。この形を作ってから振ると、甲の平らな面が自然にボールに向きます。
低学年に一番多いミスがこれです。足首が固定されていないと、ボールが当たった瞬間に足が負けて、力も方向もばらばらになります。蹴る前に、その場で「足をピーンと伸ばす」形だけを10回作らせてください。足を振る練習より先に、形を作る練習。これで当たる確率がはっきり上がります。
なお、インサイド(足の内側)で当てる方法もあります。強さは出ませんが、面が広くて当てやすいので、ゴール前の近い距離ではこちらのほうが確実。「近ければ内側、遠ければ甲」と使い分けると実戦的です。
03上に飛ばさない|上体を倒すだけで弾道が変わる
ボレーが「難しそう」に見える最大の理由が、当たっても全部空に飛んでいくこと。これはフォームの問題で、原因はほぼひとつ。上体が後ろに反っているからです。
体が後ろに倒れると、足はボールの下側を下からすくうように当たります。当然、ボールは上へ。しかも力を入れようとするほど、人は反ってしまう。「思いきり蹴ろう」とする子ほど空に飛ばすのは、このためです。
直し方はシンプルで、おでこがボールの真上に来るくらい、上体を前にかぶせる。子どもには「ボールにおじぎするみたいに」と言うと一発で伝わります。上体がかぶさっていれば、足はボールの中心から少し上を叩き、低くて速いボールが出ます。
もうひとつのコツは、足を大きく振らないこと。ボレーは、飛んでくるボールの勢いをそのまま返す蹴り方です。自分で強く振らなくても、当てるだけで十分速いボールが出ます。むしろ大きく振ると、当たるタイミングがずれます。「短くコンパクトに、パン」。これが合言葉です。キックの威力そのものを底上げしたい場合は、キックの強さを上げる練習も参考にどうぞ。
04落下点に入るのが8割|蹴る前の勝負
現場で見ていて断言できるのは、ボレーが当たるかどうかは、蹴る技術より落下点に入れているかで8割決まるということ。
落下点というのは、ボールが落ちてくる場所のこと。ここに先回りして、自分の体を正しい位置に置く。ボレーが上手い子は、蹴る瞬間の足がすごいのではなく、その2秒前に良い場所へ動いているんです。
具体的に、体を置く位置はここです。ボールが落ちてくる真下より、半歩うしろ。真下に立ってしまうと、ボールが体に近すぎて足を振るスペースがありません。半歩下がっていれば、前の足を伸ばして甲で捉えられます。
子どもへの伝え方は「ボールの落ちるところを見つけて、その手前で待つ」。待つ、というのが大事です。落ちてくるボールを追いかけて足を出すと、必ず当たりません。先回りして止まって待つ。この習慣がつくと、ボレーの成功率は一気に変わります。
低学年は、上がったボールを見上げたまま走ります。すると足元がおろそかになって、落下点を通り過ぎたり、真下に入りすぎたり。正しくは、上がった瞬間に落下点の見当をつけて、そこへ走り、そこで一度止まる。「ボールを見るのは1回でいい」と教えてあげてください。ずっと見上げていると、体が動きません。
05手投げから始める段階練習5メニュー
ボレーは、段階を踏めば必ずできるようになります。親御さんがボールを手で投げるだけでできるので、公園や庭で十分です。順番どおりに進めてください。
01ワンバウンド・キャッチで落下点をつかむ
親が3〜4m離れて、子どもの少し前にボールを山なりに投げます。子どもはワンバウンドしたボールを、蹴らずに両手でキャッチするだけ。ただし『落ちる場所へ先に走って、止まってから取る』を条件にします。
蹴る練習の前に、まずここです。落下点に入る動きだけを、単独で練習する。ここを飛ばして蹴らせるから当たらないんです。キャッチならほぼ100%成功するので、子どもも嫌になりません。
02置きボール・インステップ確認
ボールを地面に置いたまま、足首を伸ばして固定した形(つま先を下に向ける)で、甲の平らな部分だけを当てて前に押し出します。振らずに、当てて押すだけ。壁に向かってやるとボールが戻ってきて効率的です。
動かないボールで、当てる面だけを覚える段階です。ボレーの失敗の半分は、そもそも甲に当たっていないこと。止まっているボールで正しい面を体に入れておくと、動くボールでも同じ形が出ます。
03手落とし・ワンバウンドボレー
子ども自身が、ボールを胸の高さから手で真下に落とします。地面でワンバウンドして上がってきたところを、甲で前に蹴る。相手も投げ手も不要で、一人で完結します。壁の3〜4m手前でやると、跳ね返りを拾えます。
いよいよ蹴る段階ですが、自分で落とすので条件が一番やさしい。ここで「パン」と当たる成功体験を作るのが、この記事で一番大事なところです。1回当たれば、子どもは勝手に繰り返します。
04親の手投げ・ワンバウンドボレー
親が3〜4m離れて、子どもの利き足側にワンバウンドするよう山なりに投げます。子どもは落下点に入って、上がりぎわを甲で蹴り返す。投げるコースは毎回少しずつ変えて、動いて入る練習にします。
ここで初めて「動いて落下点に入る」+「蹴る」が合体します。急に難しくなるので、当たらなくなっても焦らないでください。当たらないときはメニュー01に戻って、落下点だけをやり直します。
05ノーバウンド(ダイレクト)ボレー
親が下から山なりに、子どもの腰から膝あたりの高さに落ちるよう投げます。子どもは地面に着く前に、甲で直接蹴る。狙いは低く前へ。高いボールは狙わず、必ず腰より下の高さで当てる設定にします。
最終段階です。ここまで順番どおり来ていれば、多くの子が当たります。それでも当たらない子は、必ず前の段階に戻す。飛ばさないことが、結局は最短ルートです。
06当たらない子への合図とケガ防止
何度やっても当たらない子には、言葉ではなく「合図」が効きます。現場で実際に使っている方法を3つ。
①「イチ、ニ」の声を親が出す。「イチ」でボールが地面に着き、「ニ」で蹴る。親がリズムを声で作ってあげると、子どもはタイミングを体で覚えます。タイミングは説明より、音でしか伝わりません。
②「ここ!」と、蹴る瞬間に地面を指さす。当てる高さの目安を、視覚で示します。子どもは「いつ」より「どこで」のほうが理解しやすい。
③手を叩く。蹴ってほしい瞬間にパン、と手を叩く。声より短く鋭いので、体が反応しやすいです。
ボレーは足を高く振り上げる動きです。蹴る子の前後左右、特に振り足が通る側には、絶対に人を立たせないでください。監修コーチの現場でも、順番待ちの子が近づきすぎて足が当たりかけたことがあります。蹴る子の周囲2mは空ける、順番待ちは必ず後方で待つ。この2つをルールにしてください。また、空振りで足首をひねることもあるので、必ず軽い準備運動をしてから始めましょう。痛みが出たら中断し、続くようなら整形外科へ。
浮き球を蹴る練習は、足の甲に繰り返し衝撃がかかります。サイズの合っていないシューズや、甲の当たりが硬すぎるモデルだと、痛みが出やすくなります。
△ここだけ注意:トレーニングシューズなので、深い芝や柔らかい土のグラウンドではスパイクほど食いつきません。上位のスパイクは1万円を超えますが、これはおよそ半額。浮き球を甲で蹴る練習が中心の低学年には、むしろこちらのほうが足への負担が少なくて向いています。
「空中のボールを蹴らせても全然当たらなかったのが、ワンバウンドに変えたら5本目で当たって本人が驚いてました」
「ボレーは全部空に飛んでいってたけど、『ボールにおじぎ』の一言で低く飛ぶようになった」
「自分でボールを落として蹴るやつは一人でできるので、家の壁の前で毎日やってます」
「『イチ、ニ』と声を出してあげるだけでタイミングが合うようになったのが不思議でした」
よくある質問
ボレーシュートは低学年でもできますか?
できます。ただし順番が大事で、いきなり空中のボールを蹴らせると当たりません。まずワンバウンドしたボールの上がりぎわを叩く形から始めてください。地面で一度弾んだボールは高さが読みやすく、成功率が大きく上がります。試合でもバウンドしたボールのほうが多く来るので、そのまま実戦で使えます。
ボレーが全部空に飛んでいってしまいます。
上体が後ろに反っているのが原因です。体が反ると足がボールの下をすくうため、必ず上に飛びます。「ボールにおじぎするみたいに」と伝えて、おでこがボールの真上に来るくらい前にかぶせてください。あわせて、足を大きく振らず短くコンパクトに当てることも意識させると低い弾道が出ます。
当てる場所は足のどこですか?
インステップ=足の甲、靴ひもが通っている平らな部分です。硬くて面が広いので、多少ずれても当たります。足首を伸ばしてつま先を下に向けたまま固定するのがコツ。つま先で突くと当たる面積が小さく、力も方向もばらつきます。ゴール前の近い距離では、面の広いインサイド(足の内側)で当てるほうが確実です。
何度やっても当たらない子にはどう教えればいいですか?
言葉より合図が効きます。「イチ(着地)、ニ(蹴る)」と親がリズムを声に出す、蹴る瞬間に手を叩く、当てる高さを指さす。この3つが現場でも効果的です。それでも当たらないときは、蹴るのをやめて「落下点に入ってキャッチするだけ」の段階に戻してください。当たらない経験を続けさせないことが一番大事です。
ボレー練習で気をつけるケガはありますか?
足を高く振り上げるので、周囲の人に当たる事故に注意してください。蹴る子の周囲2mは空け、順番待ちは必ず後方で。また空振りで足首をひねることがあるため、軽い準備運動をしてから始めましょう。足の甲に繰り返し衝撃がかかる動きなので、痛みが出たら中断を。痛みが続く場合は整形外科で診てもらってください。
浮き球が蹴れるようになると、ゴール前でボールが来るのが楽しみになります。あとは、その足元。甲に当てる感覚は、シューズの当たり方でかなり変わります → 比較ランキングで学年・足型からピッタリのシューズを選ぶ ボール感覚の土台づくりはリフティング練習のコツへ。
「サッカーが上手い選手より、サッカーを通じて“かっこいい大人”を育てる」
少年サッカーの育成年代を指導して3年目、これまで延べ50名ほどの子どもたちと向き合ってきた現役コーチ。判断力・認知・立ち位置・パススピード・切り替え、GKからのビルドアップを軸に、「個の前進力」と「戦術理解」の両立を追求しています。毎月、練習設計と自己内省をレポートにまとめてPDCAを回す、分析型の指導者です。
現場でサッカー未経験の保護者の声を大切にしてきました。専門用語をゼロに噛み砕き、「親が今日からできること」に翻訳してお届けします。
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