「インテンシティが足りない」——プロの試合の解説でよく出てくる言葉です。日本代表の試合後にも必ず誰かが言います。ところが、これを「もっと激しく」「もっと走れ」という意味だと思って子どもに言うと、逆に伸びが止まります。強度とは、走った量のことではありません。少年サッカーの現場で数えてみると、息が上がっている練習ほど、中身が薄いことがあるのです。
インテンシティ=強度。訳としては「激しさ」ですが、現場で意味があるのは「ボールが動いてから次のプレーが起きるまでの時間の短さ」です。つまり判断と実行の速さであって、走った距離ではありません。
だから強度は「たくさん走らせる」では上がりません。上がるのはコートを狭くする・人数を減らす・時間や条件を制限するの3つ。同じ4分間でボールに触る回数が11回と48回に分かれた実測があります。
この記事は、少年サッカーの現場に立つ現役のU10・8人制コーチが監修しています。監修コーチが、練習中に1人がボールに触った回数をひたすら数えたことがあります。8人が1列に並んでコーンドリブルをする形式で、4分間・1人あたり平均11回。同じ日、同じ4分間で3対3のゲーム形式にしたら平均48回でした。4倍以上です。
しかも、疲れた顔をしていたのは前者のほうでした。走る距離は列で待つドリブルのほうが長かったからです。きつそうに見える練習と、中身が濃い練習は、別物でした。
01インテンシティとは何か|3つの意味で使われている
まず言葉の整理から。インテンシティ(intensity)は英語で「強さ・強度」という意味の一般語です。サッカー専用の用語ではありません。だからこそ、使う人によって指しているものがずれます。
解説で「インテンシティが足りない」と言われるとき、多くは②と③が混ざった意味で使われています。ところが日本語に置き換わるとき、なぜか①だけが残ることが多い。「運動量が足りない」「走れていない」という言い方になるのです。
ここが分かれ道です。①の意味で受け取った大人は、子どもに「もっと走れ」と言います。③の意味で受け取った大人は、「もっと早く決めよう」と言います。同じ言葉から出てくる指示が、まったく違うものになります。
02現場で意味があるのは「時間」だけ
小学生を見ている立場から言うと、使えるのは③の意味だけです。理由は単純で、①と②は体格でほぼ決まってしまうからです。
体が大きい子は当たりが強く、心肺が育っている子は長く走れます。それは今日の練習で変わりません。変えられないものを「足りない」と言い続けても、子どもは自分を責めるだけです。
一方、③の「時間」は変えられます。
受ける前に見ておく時間(=顔を上げるのが1秒早い)
止めてから蹴るまでの時間(=踏みかえが1歩少ない)
取られてから守りに戻るまでの時間(=切り替えが2秒早い)
どれも足の速さと関係がありません。体が小さくても、遅い子でも、今日から短くできます。
だから、この記事では以降インテンシティ=プレーとプレーのあいだの時間の短さとして話を進めます。
03「たくさん走らせる」で強度が上がらない理由
冒頭の実測に戻ります。4分間で11回と48回。
なぜこんな差がついたのか。列に並ぶドリブル練習では、1人の子が実際にボールを持っている時間は、4分のうち30秒ほどしかありませんでした。残りは並んで待っているか、終わって列の最後尾に走って戻っているか。走ってはいるのです。ただ、その走りの最中に決めていることが何もない。
共通点は「決める場面が来ない」ことです。体は動いていても、頭は止まっている。
「うちのチームは練習がきつい」=良いチーム、と評価してしまう。
きつさは強度の証明になりません。きつくするだけなら走らせればできます。難しいのは「短い時間で決める場面を、何度も来させること」のほうです。
04強度が足りない練習は、見学席から分かる
サッカー未経験の保護者でも、数えるだけで分かる指標があります。難しい戦術の知識は要りません。
① わが子が並んで待っている時間
1本のメニューで、待ち時間が実施時間より長いなら強度は低い
② 1分間にボールに触った回数
ストップウォッチも要りません。指を折って数えるだけ
③ 相手(守備役)がいるか
守備がいない練習は、判断が要りません
④ コートの広さ
広いほど楽になります。狭いほど強度は上がります
③は特に効きます。守る人がいないパス練習は、どれだけ丁寧にやっても試合の速さになりません。相手がいないと「いつ出すか」を決める必要がないからです。
これはチームを採点するための物差しではありません。低学年は待ち時間があってもいいし、フォームを固める時期には相手がいない反復も必要です。ここで言いたいのは「家でやる分は、待ち時間ゼロにできる」ということです。チームでできないぶんを、家で補える。
05強度を上げる4つのつまみ
ここが本題です。走らせる以外に、強度を上げる方法は4つあります。いずれもコーチが練習で使っている調整で、家でもそのまま使えます。
8対8より4対4、4対4より2対2のほうが強度は上がります。
1人あたりに回ってくる場面の数が増えるからです。人数を半分にすると、触る回数はおよそ倍になります。
同じ人数でも、コートを狭くすると相手がすぐそこにいます。
考える時間が物理的に短くなるので、判断が速くなります。広いコートで上手にできても、狭くすると急にできなくなる子は、そこが伸びしろです。
「3タッチまで」「2タッチまで」と決めるだけ。
止めてから蹴るまでの時間が強制的に短くなります。ただし低学年に2タッチ制限をかけると、ボールを見る時間が無くなって全部ミスになるので、まずは「5タッチまで」くらいから。
「10秒以内にシュートまで」「取られたら3秒で奪い返す」。
切り替えの速さだけを上げたいときに使います。走る量は増えませんが、止まっている時間が消えます。
つまみを回す順番にもコツがあります。いきなり全部を厳しくしないこと。4つ同時にきつくすると、ミスばかりになって子どもが楽しくなくなります。1回につき1つだけ動かします。
06強度は、上げすぎてもいけない
ここは正直に書いておきます。強度は高ければ高いほど良い、ではありません。
強度を上げすぎると、次の2つが起きます。
とくに2つ目は見落とされます。狭くしすぎたコートでは、失う恐怖のほうが大きくなって、挑戦が消えます。「強度が高い=良い練習」だと思っていると、この副作用に気づけません。
目安として、監修コーチは成功が半分をやや超えるくらいに設定しています。10回やって6回できる難しさです。全部できるなら簡単すぎ、3回しかできないなら難しすぎ。できた回数を数えて、つまみを戻す判断をするところまでがセットです。
07家でできること
家では人数がそろいません。ですがつまみ②③④は、親子2人でも回せます。
01狭いところで1対1(コートを縮めるだけ)
マーカーで縦5歩・横5歩ほどの四角を作り、その中だけで1対1。親は本気で奪いに行かず、手を後ろに組んで足だけで寄せます。四角から出たら交代。
02タッチ数を決めた壁パス
壁に向かって、止めて蹴るを繰り返します。最初は自由に、次は「3タッチまで」、最後は「2タッチまで」。回数ではなく、決めたタッチ数を守れたかを数えます。
033秒ルールの奪い返し
親子でボールを取り合い、取られた側は「3秒だけ全力で取り返す」。3秒で取り返せなければ、そこで一度止めてやり直します。
「練習を見学して「待っている時間」を数えたら、想像よりずっと長くて驚きました」
「コートを狭くしただけで、家の練習が急に本気になりました」
「「もっと走れ」と言うのをやめて「もう1秒早く決めよう」に変えたら、本人の顔つきが変わりました」
「きつい練習=良い練習だと思い込んでいたので、考えが変わりました」
なお、つまみ②(狭くする)を家でやるには、区画を目に見える形にする道具が必要です。線が見えないと、子どもは無意識に広く使ってしまい、強度が上がりません。
△ここだけ注意:コーンを買えば強度が上がる、という話ではありません。ペットボトルでも靴でも代用できます。ただ、家練習を続けるなら20枚ほどあると広さを1歩ずつ変えられるので、難易度の調整が細かくできるようになります。すでに何かで代用できているなら不要です。
08よくある質問
インテンシティとは、結局どういう意味ですか?
英語で「強さ・強度」を指す一般語で、サッカーでは主に「プレーの激しさ」と「プレーの速さ」の意味で使われます。日本語に置き換わるときに「運動量」の意味だけが残りやすいのですが、少年サッカーで実際に変えられるのは「ボールが動いてから次のプレーが起きるまでの時間の短さ」です。走った距離ではなく、判断と実行の速さだと考えてください。
きつい練習ほど強度が高いのではないですか?
違います。8人が列に並ぶドリブル練習と3対3のゲーム形式で、同じ4分間にボールに触った回数を数えたところ、平均11回と48回でした。走る距離は前者のほうが長かったのに、決める場面は4分の1以下です。心拍だけ上げても、判断の回数は増えません。
家では人数がそろいませんが、強度を上げられますか?
上げられます。強度を動かすつまみは「人数」「広さ」「タッチ数」「時間」の4つで、後ろの3つは親子2人でも使えます。5歩四方に区切った中での1対1、3タッチまでの壁パス、取られたら3秒で奪い返す——このどれもが、走る量を増やさずに強度だけを上げる形です。
強度は高ければ高いほどいいのですか?
いいえ。上げすぎると成功体験がゼロになり、その動きを覚える前に嫌いになります。もう一つ見落とされやすい副作用として、追い込まれ続けた子は前を向かず後ろに戻すだけになります。目安は10回やって6回できる難しさで、できた回数を数えてつまみを戻す判断までがセットです。
見学のとき、何を見れば練習の強度が分かりますか?
4つ数えてください。①わが子が並んで待っている時間、②1分間にボールに触った回数、③守備役の相手がいるか、④コートの広さ。とくに③が効きます。奪いに来る相手がいない練習は「いつ出すか」を決める必要がないので、どれだけ丁寧にやっても試合の速さにはつながりません。
「もっと走れ」と言ってはいけないのですか?
禁止すべき言葉ではありませんが、多くの場面で効きません。走る量は体力と体格でほぼ決まり、今日の一言では変わらないからです。代わりに「もう1秒早く決めよう」「取られた瞬間に足を出そう」と、時間の話に置き換えてください。体の小さい子や足の遅い子でも今日から短くできます。
強度を上げる前に、そもそも「決める場面が来ない練習」になっていないかを確かめる価値があります → 練習ではできるのに試合でできない理由3つ 切り替えの3秒を掘り下げるなら攻守の切り替え(トランジション)、走らずに判断だけ鍛えるなら判断力を鍛える親子クイズへ。
「サッカーが上手い選手より、サッカーを通じて“かっこいい大人”を育てる」
育成年代の指導3年目、延べ50名ほどの子どもたちと向き合ってきた現役コーチ。判断・認知・立ち位置を軸に「個の前進力」と「戦術理解」の両立を追求しています。
用品・ルール・練習の記事は、公開前に監修コーチが内容を確認し、事実に関わる記述は一次情報にあたって整理しています。監修者について →

