パス練習を見ていると、お子さんの蹴ったボールが味方の2m横へコロコロ……。本人も「あれ?」という顔をしている。ねらって蹴っているのに、ねらったところに行かない。「もっと強く蹴れば届くのに」「回数をこなせばそのうち」と思いたくなりますが、実はキックの正確性は、強さでも回数でもなく「面(めん)」——足のどこにボールを当てるか——で決まります。この記事では、狙ったところに蹴れない子の原因の見つけ方と、面から直す的当て練習を順番に紹介します。
ねらったところに蹴れない原因は、ほぼ3つ。①足のどこに当たるかが毎回バラバラ(面の問題) ②軸足のつま先がねらいと違う方向を向いている ③距離が遠すぎて力んでいる。直す順番は「面→軸足→距離」。まずは3mの近距離で、的に当てる練習から始めてください。距離を伸ばすのは最後です。
→ 蹴り足を支える一足の選び方はこちら
この記事は、少年サッカーの現場に立つ現役のU10・8人制コーチが監修しています。以前、蹴るたびにボールの行き先が違う子がいました。強いキックは蹴れるのに、どこへ飛ぶかは本人にも分からない。そこで壁にガムテープで30cm四方の的を貼り、「強く蹴らなくていい、10本中何本当たるかだけ数えよう」と伝えたんです。初日は10本中2本。ところが的を意識した途端、あれほど毎回違っていた足の当てどころが勝手にそろい始めて、2週間後には10本中8本。フォームを一度も直していないのに、です。的がフォームを直してくれる——この順番を知っているかどうかで、キック練習の効率はまるで変わります。
01正確性は「距離」より「面」
面とは、ボールに当てる足の場所のことです。インサイドキック(足の内側で蹴るキック)なら、土踏まずの少し前あたりの平らな部分。ここは面が広くて平らなので、多少ずれてもまっすぐ飛びます。
ところが、ねらったところに蹴れない子の足元をよく見ると、当たる場所が毎回違う。つま先寄りに当たったり、かかと寄りだったり。当てる場所が毎回違えば、飛ぶ方向も毎回違う。当たり前の話なのですが、ここを飛ばして「もっとねらって!」と声をかけても、子どもはどうしていいか分かりません。
「試合と同じ距離で」と、最初から10m、15mの距離でパス練習をさせるのはNGです。遠いと子どもは力み、力むとフォームが崩れ、面がますますバラバラになります。正確性の練習は、力まなくても届く近距離(3m)から。物足りなく見えるくらいでちょうどいいんです。
02軸足のつま先は「矢印」
面の次にチェックするのが軸足です。ボールの横に置く、蹴らないほうの足。実は、ボールはだいたい軸足のつま先が向いた方向に飛びます。軸足はいわば矢印。つま先が的からずれていれば、どんなにいい面で当てても、ボールはずれた方向へ行きます。
ですから、お子さんのキックがそれる方向に規則性があるなら——いつも右にそれる、いつも左——原因は高い確率で軸足です。蹴った瞬間に足元の写真を撮ってあげると、本人も一発で納得します。
では、練習に入りましょう。用意するのはボールと、的になるもの(ペットボトル・カバン・壁のガムテープ)だけです。
033mの的当て
ペットボトルを立てて、3m離れたところからインサイドキックで当てる。強さは「転がして届く」程度でOK。当たった本数を数える。10本中7本当たるようになったら次のドリルへ。
04軸足矢印キック
ボールの横、こぶし1個半くらいの位置に、テープや小枝で「的へ向かう矢印」を作る。軸足のつま先をその矢印にぴったり合わせて踏み込んでから蹴る。ねらいは的当てと同じでOK。
05壁の的・10本勝負
壁に30cm四方の的(ガムテープや見立てでOK)を作り、4〜5mから10本蹴って何本当たるか記録する。毎回同じ距離・同じ的で、昨日の自分と勝負する形式にする。
壁を使った練習の広げ方は 壁当て練習の記事 に場所の探し方まで含めてまとめています。そして、的当てをやり込むなら、ボールはいつも同じものを使うのがおすすめです。日によってボールの大きさや空気圧が違うと、せっかくそろい始めた面の感覚がリセットされてしまうからです。小学生なら試合と同じ4号球を1つ、練習用に決めてしまいましょう。
△ここだけ注意:4号球は小学生用のサイズです。上のきょうだいの5号球で代用すると、重さで面の感覚が変わってしまうので、そこだけ気をつけてください。
061歩ずつ昇格テスト
3mの的当てで10本中7本当たるようになったら、1歩(約70cm〜1m)だけ下がって同じテスト。7本当たったらまた1歩。クリアできなければ1歩戻る。ゲームのレベル上げのように距離を伸ばしていく。
07よくある質問
何メートルから練習を始めればいいですか?
3mからで十分です。正確性の練習は「力まなくても届く距離」で行うのが鉄則で、遠いと力んでフォームが崩れ、面の感覚が育ちません。10本中7本的に当たるようになったら1歩ずつ距離を伸ばす「昇格テスト」方式にすると、力みを持ち込まずに距離を伸ばせます。
いつも同じ方向にボールがそれます。原因は?
それる方向に規則性がある場合、原因は軸足の向きであることが多いです。ボールはおおむね軸足のつま先が向いた方向に飛びます。蹴る瞬間の足元をスマホで撮って、つま先が的を向いているか親子で確認してみてください。地面に矢印を作って軸足を合わせる練習が効きます。
強いキックと正確なキック、どちらを先に練習すべき?
正確性(面と軸足)が先です。面が毎回バラバラなまま強く蹴る練習をすると、「速いけれどどこへ飛ぶか分からないキック」が身についてしまいます。的に当てられるフォームを近距離で固めてから振りを大きくすると、強さと正確さが両立します。キック力の伸ばし方は別記事で解説しています。
的に当たったり外れたりで、なかなか安定しません。
本数を記録して「昨日の自分」と比べる形式にしてみてください。10本中の当たり数を毎回メモするだけで、子どもは自分で面の微調整を始めます。また、蹴る前に足の内側の当てる場所を手でさわる、当たる瞬間だけボールを見る、の2つを合言葉にすると散らばりが減ります。
インステップ(足の甲)のキックも同じ練習でいいですか?
考え方は同じです(面を決める→軸足→距離)。ただし足の甲は面が小さく、インサイドより難易度が高いので、まずインサイドの的当てで「面をそろえる感覚」を作ってからがおすすめです。甲のキックは靴ひもの結び目あたりに当てる意識で、同じく近距離の的当てから始めてください。
今夜の一手は、ペットボトルを1本立てて「3mの的当てを10本、当たった数だけ数える」。これだけです。フォームの説明は何もいりません。的が、フォームを直してくれます。
蹴りの基本形から確認したい方は インサイドキックの蹴り方 を、面が安定してきて飛距離を伸ばしたい方は キック力を伸ばす練習 をどうぞ。そして、軸足の踏み込みがすべると面もずれます。足に合った一足を選びたい方は → 学年・足型から選ぶ比較ランキング へ。
「サッカーが上手い選手より、サッカーを通じて“かっこいい大人”を育てる」
少年サッカーの育成年代を指導して3年目、これまで延べ50名ほどの子どもたちと向き合ってきた現役コーチ。判断力・認知・立ち位置・パススピード・切り替え、GKからのビルドアップを軸に、「個の前進力」と「戦術理解」の両立を追求しています。毎月、練習設計と自己内省をレポートにまとめてPDCAを回す、分析型の指導者です。
現場でサッカー未経験の保護者の声を大切にしてきました。専門用語をゼロに噛み砕き、「親が今日からできること」に翻訳してお届けします。
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