公園で、我が子がボールを思いっきり蹴る。「うおりゃっ」と全身に力を込めて——なのに、ボールはポテンと数メートル先に落ちるだけ。隣の子は同じくらいの体格なのに、倍以上飛ばしている。「なんでうちの子だけ飛ばないんだろう」。本人も「あれ?」という顔で、もう一度力いっぱい蹴って、また飛ばない。サッカー未経験のパパ・ママにとって、この場面は地味にこたえます。強く蹴ってるのに飛ばない。理由が分からないから、かける言葉も見つからない。でも、これは才能でも筋力でもありません。ロングキックが飛ぶかどうかは、力の強さではなくボールに力を「伝える」技術で決まります。この記事を読み終えるころには、遠くへ飛ばすための正しい蹴り方と、家や公園で一緒にできる練習の順番が、はっきり分かるようになります。
ロングキックが飛ぶカギは、腕力でも「もっと強く蹴れ」でもなく、①助走の角度(ななめ後ろ) → ②軸足を置く位置 → ③足の甲でボールの下めを叩く → ④飛ばす方向へ大きく振り抜くの4つです。力任せに蹴るクセがつくと、飛ばないうえにフォームも崩れます。まずは正しい流れを、遊びながら体に入れるのが最短ルート。→ 踏み込みを支える一足も飛距離に効く。比較ランキングを見る(30秒)
この記事は、少年サッカーの現場に立つ現役のU10・8人制コーチが監修しています。現場でくり返し見てきたのは、いちばん力を込めて蹴る子が、いちばん飛ばないという現象。ある低学年の子は、顔を真っ赤にして「うおおっ」と全力で蹴るのに、ボールは5メートルほどしか転がりませんでした。その子に、力を抜いて「足の甲でコツンと当てるだけ」を教えたら、その場でスッと10メートル以上飛んだんです。本人がいちばん驚いていました。飛ばす秘訣は、力を足すことではなく、力の逃げ道をなくすこと。ここは体の大きさに関係なく、練習で誰でも身につけられます。
01なぜ飛ばない?原因は「力み」と「当てる場所」
まず、多くの子が飛ばない理由から。意外に聞こえるかもしれませんが、答えは力を入れすぎているからです。
「遠くまで飛ばそう」と思った子は、肩に力が入り、腕を振り回し、つま先で思いっきり突きにいきます。ところが、ガチガチに力んだ体は足がスッと振り抜けません。しかも、つま先という細くて不安定な場所で当たるので、せっかくの力があちこちに逃げてしまう。結果、全力なのに飛ばない、という切ない状態になります。飛ばすために必要なのは、力の「量」ではなく、その力をボールにまっすぐ伝える「当て方」です。
つま先でボールを突くと、①面が小さく力が逃げる ②足首がグラついて安定しない ③つま先を痛めやすい、と良いことがひとつもありません。ロングキックで当てるのはつま先ではなく足の甲(靴ひもの結び目のあたり)。ここは硬くて面が広く、ボールをまっすぐ押し出せます。そして飛ばすときは、ボールの真ん中よりやや下を叩くと、前ではなく前上方向へ伸びていきます。
もうひとつ大事なのが、いま出てきた「ボールのどこを当てるか」。地面を転がすパスならボールの真ん中、遠くへ浮かせて飛ばすなら少し下。ここを知っているだけで、同じ力でも飛距離はまるで変わります。低学年の子には「ボールのおへその、ちょっと下」と言うと伝わりやすいです。
02ロングキックの正体=助走から振り抜きまでの流れ
遠くへ飛ぶキックは、次の4つが順番につながって生まれます。難しく聞こえますが、一つずつなら小学生でも必ずできます。
- ① ななめ後ろから助走:ボールの真後ろではなく、ななめ後ろ(2〜3歩)から入る。この角度が、体重を自然にボールへ乗せてくれます。
- ② 軸足を置く:蹴らないほうの足を、ボールの真横(こぶし1〜2個分あけて)に、つま先を飛ばしたい方向へ向けて置く。この足の向きが、ボールの飛ぶ方向を決めます。
- ③ 足の甲でミート:つま先を下に伸ばし、足の甲(靴ひものあたり)でボールの真ん中よりやや下を叩く。足首はグラつかせず固定。
- ④ 大きく振り抜く:当てて終わりではなく、蹴った足を飛ばす方向へ大きく振り抜く。ここを止めると飛距離が半分になります。
ロングキック=ななめ助走 × 軸足の向き × 足の甲で下めを叩く × 大きく振り抜く。この掛け算です。どれか1つでも欠けると飛びません。逆に、力が弱くてもこの4つがそろえばボールはグンと伸びます。力は最後でいい——まず形、力はあと、の順番が大事です。
ここで多くの親がつまずくのが、この4つを一気に教えようとすること。子どもの頭はパンクします。次の章から、①ボールなし → ②置いたボール → ③数をこなすの順に、一つずつ体に入れていきます。全部を毎日やる必要はありません。まずはステップ①だけでも十分な一歩です。
03ステップ①ボールなしで蹴る動きを覚える
いきなりボールを蹴ると、子どもは「飛ばすこと」に気を取られて、フォームがめちゃくちゃになります。だから最初はボールなし。地面に置いたボールを蹴らずに、動きだけをゆっくりなぞります。
- ボールの2〜3歩ななめ後ろに立つ
- ゆっくり助走して、軸足をボールの真横に「ドン」と置く
- 蹴る足の甲を、ボールに軽くコツンと当てて止める(強く蹴らない)
- そのまま、蹴る足を飛ばしたい方向へゆっくり振り上げる
この「素振り」を左右10回ずつ。地味ですが、いちばん大事な練習です。当てる場所(足の甲)と軸足の位置を、力が入っていない状態で体に覚えさせる。ここが雑なまま数を蹴っても、間違ったフォームが固まるだけです。
子どもは自分のフォームが見えません。横からスマホで動画を撮って、一緒に見返すと一発で伝わります。「つま先で当ててないかな?」「軸足、ボールから離れすぎてないかな?」を親子でチェック。足の甲の当てる場所を指でさわって「ここだよ」と教えると、言葉より早く伝わります。
急がば回れ。まずはゆっくり10回、正しい形をなぞる。これだけで、次のステップの伸びがまるで違います。
04ステップ②置いたボールをななめ助走で蹴る
形が分かってきたら、いよいよボールを蹴ります。とはいえ、まだ「遠くへ」は狙いません。狙うのはまっすぐ、気持ちよく振り抜くこと。ここでいう「インステップキック」とは、足の甲(インステップ)で蹴る、いちばん飛ぶ蹴り方のこと。難しい言葉ですが、要は「足の甲でズドンと蹴る」ことだと思ってください。
- ボールから2〜3歩ななめ後ろに下がる
- 軽く助走して、軸足をボールの真横にドン
- 体重を前に乗せながら、足の甲でボールの下めをミート
- 前へ大きく振り抜き、蹴った足を前に残す
10球×2〜3セット。広い場所(公園・河川敷・グラウンド)で、10メートルほど先にカバンやコーンを置き、「あそこまで飛ばそう」と目標を作ると集中します。
ここで親がつい言いたくなるのが「もっと強く!」ですが、ぐっと我慢を。強さを命じると、せっかく抜けた力みが戻ってきます。かける言葉は「振り抜いた足、前に残そう」だけで十分。実際、現場でも「強く」を封印して「振り抜き」だけ声かけした子のほうが、明らかに飛距離が伸びます。振り抜きが大きくなれば、飛距離は後からついてきます。
浮かせたい一心で、スコップのようにボールの真下をすくう子がいます。これだとフワッと上がるだけで前に飛びません。当てるのは真下ではなく真ん中よりやや下。あくまで「前へ押し出す延長で、少し下を叩く」意識です。すくうのではなく、振り抜く。ここは言葉で説明するより、素振り(ステップ①)に一度戻って形を確認するのが早いです。
05ステップ③的あて・親子キャッチボールで数をこなす
フォームは、頭で分かっても反復回数がないと体に定着しません。とはいえ、蹴っては拾いに行く…のくり返しは大変で、子どもの集中も切れます。そこでおすすめが2つ。
- 的あて:10〜15メートル先にカバンやコーンを置き、「当てたら1点」でゲーム化。数字より「まっすぐ飛んだか」を一緒に喜ぶ。
- 親子キャッチボール(足で):親子で向かい合い、蹴って→止めて→蹴り返す。距離を少しずつ伸ばしていくと、自然と飛距離への意欲が育つ。
時間は10分で十分。数より丁寧さです。フォームが崩れてきたら、一度止めてステップ①の素振りに戻る。この「戻る」を面倒がらないことが、遠回りに見えて最短です。先日も、的あてゲームにした瞬間に「もう1回!」が止まらなくなり、気づけば普段の何倍も蹴っていた子がいました。楽しいと、勝手に数がこなせる。これが子どもの上達の一番の近道です。
「『力いっぱい蹴れ』ってずっと言ってた。力を抜いて足の甲で当てるだけ、に変えたら逆に飛ぶようになって驚いた」
「ボールの下を叩くって知らなかった。真ん中ばかり蹴らせてたから、ずっと転がるだけだったんだと納得」
「的あてゲームにしたら『もう1回』が止まらない。拾いに行く手間もあるけど、本人が楽しんでるから続く」
「小柄で飛ばないのが悩みだったけど、コーチに『体が育てば飛ぶから今は形だけでいい』と言われて気がラクになった」
06飛距離は「体の成長」も大きく関わる
ここで、親としてぜひ知っておいてほしいことがあります。ロングキックの飛距離は、体の成長そのものにも大きく左右されるということです。
筋力や骨がしっかりしてくる時期には個人差があり、同じ学年でも半年〜1年の成長差で、ボールの飛び方はガラッと変わります。今飛ばないのは、才能でもフォームだけの問題でもなく、単に体がまだ育っている途中ということも多いのです。実際、低学年のころは10メートルがやっとだった子が、半年で体がひとまわり大きくなった途端、同じフォームのまま倍近く飛ぶようになる場面を何度も見ています。伸びたのは筋力そのものより、正しいフォームが入ったまま体が育ったから。だからこそ、今は飛距離を競わせず、楽しく正しい形を身につけておくのが最善です。
07ケガをさせないための注意点
飛距離を伸ばしたい気持ちは分かりますが、無理な蹴り込みはケガのもとです。成長期の体は、まだ骨や関節が完成していません。ここだけは親が必ず守ってあげてください。
硬い地面(アスファルト)で何十球も蹴り続ける/痛いのを我慢して蹴らせる/大人と同じ本数を課す——これらは足首・ひざ・股関節を痛める原因になります。とくにロングキックは全身を大きく使うぶん、負荷も大きめ。「かかとやひざ、股関節が痛い」と言ったら、その日は必ず中止を。成長期の痛みは放置せず、続くようなら整形外科など専門家に相談してください(成長には個人差があります)。
安全に飛距離を伸ばすコツは、短時間・正しいフォーム・やわらかい地面(芝・土)の3つ。1回の練習で蹴る数を追うより、フォームを崩さず気持ちよく振り抜けている状態を大事にしてください。それがいちばん、ケガなく確実に伸びる道です。
そしてもう一つ、地味に効くのが足に合ったシューズ。ロングキックは踏み込んだ瞬間、軸足に体重がドンと乗ります。大きすぎる靴や足型に合わない靴だと、この軸足がグラついて、せっかくの力がボールに伝わりません。飛距離が伸び悩むとき、原因が足元にあることも意外と多いです。学年・足型からの選び方は ジュニアスパイクの比較ランキング で確認できます。
よくある質問
子どものロングキックを飛ばすには、筋トレが必要ですか?
成長期の小学生に大人向けの筋トレは必要ありません。飛距離は筋力より、ななめ助走・軸足の向き・足の甲でボールの下めを叩く・大きく振り抜く、という「フォーム」で大きく変わります。まずは正しい形を遊びながら身につけるのが近道。体の土台は、片足バランスやケンケンなどの遊びで自然に育ちます。
『もっと強く蹴れ』と言っても飛びません。なぜ?
強く蹴らせようとすると体が力んで、足がスッと振り抜けず、かえって飛ばなくなることが多いです。声かけは『強く』ではなく『足の甲で当てよう』『振り抜いた足を前に残そう』が効果的。力ではなく、当てる場所と振り抜きを意識させてあげてください。
ボールのどこを当てると遠くへ飛びますか?
つま先ではなく足の甲(靴ひもの結び目のあたり)で、ボールの真ん中よりやや下を叩きます。真ん中だと転がるパスになり、やや下を叩くと前上方向へ伸びていきます。ただし真下をスコップのようにすくうと、フワッと上がるだけで前に飛ばないので注意してください。
小柄でボールが飛びません。あきらめたほうがいい?
その必要はまったくありません。飛距離は体の大きさより当て方で決まり、小柄な子が力を抜いた瞬間に飛ぶようになる例はよくあります。加えて飛距離は体の成長にも左右されるため、今飛ばないのは単に体が育つ途中というだけのことも。今は焦らず正しいフォームを身につけておけば、体が育ったときに一気に伸びます。
毎日たくさん蹴らせても大丈夫ですか?
硬い地面での蹴りすぎや、痛みを我慢しての蹴り込みは、成長期の足首やひざ・股関節を痛める原因になります。ロングキックは負荷が大きめなので、短時間・正しいフォーム・やわらかい地面を心がけ、痛みが出たらその日は中止を。数を追うより、気持ちよく振り抜けている状態を優先してください。痛みが続くなら専門家に相談を。
正しいフォームで振り抜けるようになったら、次は「もっと強い一発」と「狙ったところへ」を伸ばす番です。あわせて読むと理解が深まります → 子どものキック力を上げる練習【現役コーチ監修】。そして、踏み込みを支える足元を見直すと、飛距離はさらに伸びます → 学年・足型からピッタリの一足を選ぶ
「サッカーが上手い選手より、サッカーを通じて“かっこいい大人”を育てる」
少年サッカーの育成年代を指導して3年目、これまで延べ50名ほどの子どもたちと向き合ってきた現役コーチ。判断力・認知・立ち位置・パススピード・切り替え、GKからのビルドアップを軸に、「個の前進力」と「戦術理解」の両立を追求しています。毎月、練習設計と自己内省をレポートにまとめてPDCAを回す、分析型の指導者です。
現場でサッカー未経験の保護者の声を大切にしてきました。専門用語をゼロに噛み砕き、「親が今日からできること」に翻訳してお届けします。
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