試合の帰り道、車の中で「なんであそこでパスしなかったの?」とつい言ってしまい、後部座席の子どもが黙り込んだ——。もしこの一場面に胸がチクッとしたなら、大丈夫。それは、あなたが我が子のサッカーを本気で応援している、何よりの証拠です。
ここから挙げる例に当てはまっても、あなたはダメな親ではありません。むしろ「自分の声かけ、合ってるかな?」と気づこうとしている時点で、上位1割の保護者です。「少年サッカーで親がやってはいけないこと」と検索したあなたが本当に知りたいのは、きっと禁止リストではなく、「じゃあ、何て言えばいいの?」のほうですよね。
この記事は、未経験のパパ・ママがやりがちな7つを、現役のU10コーチが現場で実際に使う「言い換えの一言」とセットでお渡しします。叱り方も、応援の仕方も、試合会場での関わり方も、今日の帰り道から変えられます。一緒に、見守れる親になっていきましょう。
先に、正直な話をひとつ。これを書いている私は現役のU10・8人制コーチですが、私自身も同じ失敗をしました。 全国につながる大事な大会で「この代は勝てる」と思い込み、つい結果ばかりを求める声かけをしてしまったんです。すると当日の空気はピリつき、子どもたちのプレーは硬くなり、判断が遅れ、本来の良さが出ませんでした。——指導のプロでも、力が入ると陥ります。だから大丈夫。あなたを責める記事ではありません。私自身の反省も込めて、一緒に整理していきます。
01試合中の「早く蹴れ!」が逆効果になる理由|親の声かけ(指示出し)
タッチライン際から飛ぶ「早く!」「蹴れ!」「前を向け!」。よかれと思って出すこの声が、実はいちばん子どもの成長を止めてしまいます。
サッカーは、選手が自分の目で見て、自分の頭で「どうするか」を決めるスポーツです。ところが親の指示が飛ぶと、子どもはボールより先に、お父さん・お母さんの顔色をうかがうようになります。
これは私自身が現場で何度も実感していることです。以前、ある選手が試合でポジションを見失い、判断がバラバラになっていました。私は外から「あそこ!」と指示するのをやめ、その子の後ろについて一緒に動きながら、同じ目線で「今、何が見える?」を共有しました。すると数分でプレーが落ち着き、自分で判断できるようになったんです。後日、その子の保護者から「コーチが後ろについて一緒に見てくれたことで、何をすればいいか分かりやすくなったと、家で話していました」と言っていただきました。外から指示するより、同じ目線で見てあげるほうが、子どもの迷いは減る。これが現場での実感です。
ここで一つ、予想を裏切る現場の話を。口を出さない親の子のほうが、試合中の表情が明るいんです。「怒られない選択」=とりあえず大きく蹴る、安全な横パスばかりになるのは、たいてい声が多いお子さんのほう。指示されるほど、サッカーでいちばん伸ばしたい「自分で考える力」が育たなくなる。これが現場からの、ちょっと切ない真実です。
では、なんと言えばいいのか。
NG:「今の、なんで蹴らないの!」
OK:「今の、よく前を見てたね。次はどうする?」
コツは、プレーを指示するのではなく、見ていたことを伝えること。「見てたよ」が伝わるだけで、子どもは安心して挑戦できます。
02帰りの車で「なんで外したの」が一番こわい|叱り方のNG
指示や叱責で縮んだ子は、次にこう感じ始めます——「ミスしたら、また言われる」。だから、これが7つの中でいちばん気をつけたいものです。
シュートを外した瞬間の「あー!」というため息。試合後の車の中での「なんで今の取られたの?」という問い詰め。この二つは、子どもの心に同じダメージを残します。
ミスを責められた子は、次から「ミスしないこと」を最優先にプレーするようになります。一見いいことのようですが、これは「挑戦しないこと」とほぼ同じ意味です。仕掛けなければ取られない。蹴ってしまえば失敗しない。そうやって、安全だけど面白くないプレーに閉じこもっていきます。サッカーは、ミスの数だけうまくなるスポーツ。挑戦して失敗した子を責めると、その子は二度と挑戦しなくなる——これほどもったいないことはありません。
「でも、家でも何も言えないなら、親は何をすればいいの?」——そう感じたあなたへ。怒鳴る代わりに、今夜できることがあります。
ダメ出しの代わりに、おうちで5分だけ一緒にボールをさわってみてください。叱られた記憶ではなく「お父さん・お母さんと一緒に練習した時間」が積み重なると、子どもは自然とうまくなります。家でできるかんたんなメニューはこちらにまとめました → 親子でできるおうちサッカー練習・ボールタッチ5選
NG:「なんで今の外したの?」
OK:「ナイスチャレンジ! あそこ、よく狙ったね」
結果ではなく挑戦そのものをほめる。ミスは責めず、勇気を見つけて声に出す。これだけで子どもの顔つきが変わります。
03「あの子はできてるのに」が一番やる気を削ぐ|他の子との比較
責められて挑戦をやめた子は、自分の価値を「人と比べて」測り始めます。だからこそ、比較の言葉はじわじわ効いてしまう。
「◯◯くんはもう上手なのに」「あの子はレギュラーなのに」。チームの中にいると、つい比べたくなる気持ち、よく分かります。でも覚えておいてください。子どもは、比べる言葉をちゃんと聞いています。 そして大人が思うよりずっと深く傷つきます。
ここにも、現場でしか言えない逆説があります。比べられた子は、親の前で「できるフリ」を覚えるんです。本当はつまずいている課題を、「平気だよ」と隠すようになる。逆に、ぐんぐん伸びる子ほど、親に「これが苦手なんだ」と弱みを見せられている。比較は、子どもが本音で相談してくる扉を、静かに閉じてしまうのです。
そして、ここで一つあなた自身の話を。比べるのをやめると、いちばんラクになるのは、実はあなた自身です。よその子の出来に一喜一憂しなくて済む。試合のたびに胸がざわつくこともなくなる。比べないことは、子どものためであると同時に、あなたの心を軽くしてくれます。
比べる相手は、よその子ではありません。「先週のその子自身」です。先週より今週どこが伸びたか。それを見つけて伝えるのが、育成のいちばんの近道です。
「あの子はできてるのに」「みんなできてるよ」「なんでうちの子だけ」——よその子と並べる言葉は、励ましのつもりでも、子どもにはぜんぶ"ダメ出し"として届きます。
他人と比べる代わりに、過去のその子と比べる。
OK:「先週よりトラップが止まってたね」「前は怖がってた競り合い、今日は行けてたよ」
小さな"きのうより"を見つけられる親が、子どもをいちばん伸ばします。
04「勝った?」より先に聞くべき、たった一つの質問|結果で叱らない
ここまでは「声かけのコツ」の話でした。でも本当にお伝えしたいのは、ここから——もっと根っこの話です。
試合後、開口一番に出る言葉、たいてい「勝った?」「何点取った?」ですよね。この第一声を変えるだけで、子どもの勇気が変わります。
私がこれを強く感じたのは、サッカーではなく大学駅伝を見たときでした。極限まで追い込まれた選手に、監督がかけていたのは「叱責」でも「細かい指示」でもなく、「よくいってる」「今のペースでいい」「苦しいところを越えよう」という、選手を信じる言葉だったんです。人は追い込まれたときほど、安心できる言葉で力を出せる。これは子どもも同じです。負けた試合のスコアより、その子が「初めて自分から仕掛けた」一瞬のほうが、ずっと大きな意味を持ちます。スコアボードに映らないところで、子どもはちゃんと挑戦しているんです。
ここで現場のコーチとして大事なことを。小学生年代(特にU10)は、勝ち負けや得点よりも「判断」と「挑戦」で見てあげたい時期だと、僕は考えています。この年代で身につけた「自分で考えて、勇気を出して仕掛けた経験」は一生もの。逆に、低学年で勝つことだけを覚えた子は、高学年や中学で伸び悩みやすい傾向があると、現場では感じています(あくまで僕が見てきた一例です)。今勝つことより、将来うまくなる種をまく時期なんです。
誤解しないでほしいのは、「結果に無関心でいよう」という話ではないこと。むしろ逆です。勝敗を聞く前に、挑戦を見つけて先にほめる。 これは無関心とは正反対の、いちばん深い関心です。「勝った?」より先に「今日、どんなチャレンジした?」。順番を変えるだけで、子どもは「結果が出なくても、挑戦は見てもらえる」と感じ、もっと勇気を出せるようになります。
評価の順番は 判断 → 挑戦 → 結果。
勝った日も負けた日も、「今日いちばんよかったチャレンジは?」と聞いてあげてください。勝敗で一喜一憂しない親の背中が、ぶれない選手を育てます。
05ルールを知らないまま口を出してしまう|まずオフサイドだけ覚えると黙れる
ここまでは「家での声かけ」の話でした。次は、未経験ゆえに試合会場で起きやすい落とし穴です。
たとえばオフサイド。これを知らないと「なんで今の点、取り消されたの!?」とサイドラインでつい声が出てしまいます。でも、親が一つルールを覚えるだけで、応援はぐっと落ち着き、的外れな指示も自然と減ります。
ここでも一つ、意外な現場の話を。ルールをまったく知らない親の応援のほうが、実は子どもは気楽だったりします。いちばん口を出してしまうのは、中途半端に知った親。だからこそ、まずオフサイドだけでいいんです。これを覚えると、不思議とサイドラインで黙れます(笑)。
NG:「今の絶対オフサイドだろ!」(審判に向かって)
OK:「ナイス、よく抜け出した!」
ルールを覚えると、責める声が"ほめる声"に変わります。知識は、いちばん前向きな応援に化けるんです。
難しくないので、ここでサッと押さえておきましょう → サッカーのオフサイドのルールをやさしく解説
06審判への文句・家でコーチと違うことを教える|親の関わり方
ルール以上に気をつけたいのが、審判やコーチへの態度と、家での「教え」です。子どもは、親が他の大人にどう接するかを、驚くほどよく見て育ちます。判定に不満な日も、ぐっとこらえる親の姿が、いちばんの教育になります。
家での「教え」も同じ。コーチが「まず止めてから蹴ろう」と言っている横で、家で「もっと早く蹴れ」と言えば、子どもは誰を信じればいいか分からなくなります。技術の指導はコーチに任せて、家では「楽しかった?」「今日のチャレンジは?」の応援役に徹する。これが、いちばん子どもを伸ばす役割分担です。
審判への「今のは違うだろ!」、コーチへの「うちの子、もっと使ってよ」、そして家での「コーチはああ言うけど、本当はこうだ」——この3つは、子どもを大人の板挟みにします。
07試合観戦・サポートで親が気をつけたいこと|マナーと唯一できる応援
最後は、声かけ以外で未経験のパパ・ママが迷いやすい「観戦・サポート」の話です。難しく考えなくて大丈夫。ポイントだけ、薄く広く押さえておきましょう。
- 動画・写真の撮影:記録は素敵ですが、撮ることに夢中で「もっと右!」と指示が飛ぶと本末転倒。撮るなら無言で、あとで一緒に見て楽しむのがおすすめです。
- お茶当番・送迎:完璧を目指さなくてOK。できる範囲で、無理なく。親同士で比べ合わない空気をつくれる人が、チームをいちばん助けます。
- コーチへの相談:「練習方針への口出し」と「子どもの様子の共有」は別物です。心配なことは、試合中のヤジではなく、後日おだやかに相談する。これが正しい窓口です。
- 練習・習い事の詰め込みすぎ:「上手くさせたい」と焦ってスクールを掛け持ちさせる前に、ひと呼吸。現場でも、連戦や練習が続くと疲労で集中と判断が落ちるのははっきり感じます。休む日も“伸びるための時間”。量より、子どもが「またやりたい」と思える状態を守るほうが、結局は近道です。
そして、ここまで「何を言わないか」「何をこらえるか」ばかりお願いしてきました。正直、少しさみしくなったかもしれません。でも、あなたにしかできない応援が、一つだけ確実に残っています。それが「道具」です。
技術は教えられなくても、足に合うスパイクを選んであげることは、親にしかできない最高のサポート。サイズの合わない靴は、痛みやプレーのしづらさにつながることがあります。
声かけは「手放す」。でも道具は「整えてあげられる」。
何もできないんじゃありません。足に合う一足を選ぶこと、それは親にしかできない、最高に前向きな応援です。
とはいえ、「どれを買えばいいか分からない」「高い買い物で失敗したくない」——それが本音ですよね。大丈夫、学年と足型で選ぶだけの早見表を用意しました。失敗しない選び方だけ、ここで確認できます → 少年サッカー用ジュニアスパイクの選び方・比較を見る
08じゃあ、未経験の親は何をすればいいの?(今日からの声かけ早見表)
ここまで読んで、「自分、ぜんぶ当てはまるかも…」と落ち込んだかもしれません。でも安心してください。気づけた時点で、あなたはもう半分直っています。 あとは、言葉を置き換えるだけ。
この早見表があれば、もう試合のたびに「何て声をかけよう」と緊張しなくて済みます。あなた自身が、サッカー観戦をいちばん楽しめるようになります。スマホに保存して、試合の前にチラッと見返してください。

これは私がチームの現場で、意識して入れ替えている言葉です。
減らす:「勝てる、いける」/「なんでできないの」/「もっと集中しろ」
増やす:「今、何を選んだ?」/「次はどうしたい?」/「チャレンジしたのはOK」
ポイントは、プレーを指示する言葉を減らし、本人の判断を引き出す問いに変えること。コーチも親も、これだけで子どもの“自分で考える力”が伸びていきます。
そして、いちばん大事な「今夜の一言」を一つだけ。帰り道、車のドアを閉めて、最初にかける言葉は——
「今日のサッカー、楽しかった?」
これだけでいいんです。プレーの評価でも、反省会でもない。「楽しかった?」のひと言が、子どもにとって「また明日も頑張ろう」のエネルギーになります。
帰り道の最初の一言を「今日のサッカー、楽しかった?」に変える。たった一つ。これができたら、今日は大成功です。
想像してみてください。次の試合の帰り道、同じ車の中で。今度はあなたはこう言います。「今日のサッカー、楽しかった?」。すると後部座席から——先週は黙り込んでいたあの子の声が、返ってくる。
最後に、私が指導でいちばん大事にしていることを。私が目指しているのは、サッカーが上手い選手ではなく、サッカーを通じて「かっこいい大人」になれる子を育てることです。挨拶ができる、感謝できる、人の嫌がることをしない——勝ち負けより、その土台のほうがずっと大切。だから、親の声かけも「勝たせるため」ではなく「いい大人に育てるため」だと考えると、力みが抜けて、自然とやさしい言葉が選べるようになります。
正直に言うと、これを書いている私自身も、試合中につい口が出てしまうことが、今でもあります。完璧な親も、完璧なコーチもいません。大事なのは「気づいて、また戻ってくること」。
ここまで読んでくれたあなたは、もう「良い親」です。我が子のサッカーをここまで本気で考えられる人が、ダメな親なわけがありません。知らなかっただけ。だから、今日から一緒に、見守れる親になっていきましょう。大丈夫、あなたなら直せます。
そして今夜やらなければ、明日の試合でまた同じ一言が出てしまうかもしれません。口で言う代わりに、今夜の5分を。その5分が、次の帰り道の「楽しかった!」をつくります → 親子でできるおうちサッカー練習・ボールタッチ5選を見る
よくある質問
周りの親が指示を出していると、自分だけ黙っているのが不安です。
黙っていて大丈夫、むしろ正解です。少年サッカーで親がやってはいけないことの筆頭が、試合中の指示出し。指示が飛び交う中で静かに見てくれる親は、子どもにとって一番の安心です。声を出したくなったら「ナイス!」「よく走ってた!」と頑張りに反応するだけでOK。周りに合わせる必要はありません。
応援しないと、やる気がないと思われませんか?
応援はぜひしてください! ダメなのは“指示”や“ダメ出し”であって、応援は大歓迎です。「ナイスチャレンジ!」「よく走ってたね!」のように、プレーを指示せず頑張りを認める声かけなら、どんどん出してOKです。
未経験でルールも分かりません。まず何を覚えれば?
オフサイド、一つだけでOKです。これが分かると試合の流れがぐっと見やすくなり、サイドラインでの的外れな声かけも自然と減ります。やさしい解説記事があるので、5分だけ読んでみてください。
下手だとレギュラーになれないのでは、と焦ってしまいます。
U10年代は“今の上手さ”より“伸びしろ”の時期だと、現場では感じています。今レギュラーかどうかより、挑戦を続けられているかが大切です。焦って人と比べるより、過去のその子と比べて小さな成長を伝えてあげるほうが、結果的に伸びていくことが多いです。
家で技術を教えたいのですが、未経験でも教えていい?
技術指導はコーチに任せて、家では“一緒に楽しむ役”がおすすめです。教えるのではなく、おうちでボールにさわる遊びを一緒にやるだけで、子どもはぐんぐん伸びます。簡単なメニューを記事にまとめています。
「うちの子の場合は?」という悩みは、人それぞれ。あなたと同じように悩んだ親へのヒントを、ほかにもまとめています → 他の「親の関わり方」の記事を見る
「サッカーが上手い選手より、サッカーを通じて“かっこいい大人”を育てる」
少年サッカーの育成年代を指導する現役コーチ。判断力・認知・立ち位置・パススピード・切り替え、GKからのビルドアップを軸に、「個の前進力」と「戦術理解」の両立を追求しています。毎月、練習設計と自己内省をレポートにまとめてPDCAを回す、分析型の指導者です。
現場でサッカー未経験の保護者の声を大切にしてきました。専門用語をゼロに噛み砕き、「親が今日からできること」に翻訳してお届けします。

