8人制の試合を見ていると、きれいなパスがつながる時間より、どちらのものでもないボールが跳ねている時間のほうが長いことに気づきます。クリア、こぼれ球、弾かれたシュート、競り合いの跳ね返り。このセカンドボールを拾えるかどうかで、試合の流れはほとんど決まります。ところが、ここだけは技術でも足の速さでもなく、立っている場所で勝敗がつく——つまり、今日から変えられる部分です。
セカンドボール=最初のプレーのあとに、どちらのものでもなくなったボールです。
拾えるかどうかを決めているのは、走る速さではなくボールが跳ねる前にどこに立っていたか。実測では、1試合のセカンドボールのうち先に動き出していたチームが拾った割合は78%でした。
そして立つ場所には原則があります。「競っている味方の、斜め後ろ5〜8メートル」。ここに1人いるかいないかで、拾える回数が変わります。
この記事は、少年サッカーの現場に立つ現役のU10・8人制コーチが監修しています。監修コーチが、15分ハーフの試合でセカンドボールが発生した回数と、どちらが拾ったかを数えたことがあります。
結果、1試合で41回。ゴールキックの競り合い、クリアの跳ね返り、シュートのはじき返し、ドリブルの当たり合い。4分の3以上が、なんらかの「ぶつかったあと」でした。
そのうち32回(78%)は、ボールが落ちる前にすでに動き出していたほうが拾っていました。落ちてから走り出して間に合ったのは9回だけです。反応の速さではなく、準備の位置で決まっていました。
01セカンドボールとは何か
言葉の整理からです。
ファーストボール=最初のプレー。蹴られたボール、競り合った1本目
セカンドボール=そのあとにどちらのものでもなくなったボール
セカンドは「2本目のパス」という意味ではありません。誰のものでもない状態になったボールを指します。
具体的には、こういう場面です。
どれも「事故」に見えます。だから運の要素だと思われがちです。ところが数えてみると、拾う側はかなり偏ります。偏るということは、運ではないということです。
02なぜ8人制では、ここが勝敗を決めるのか
11人制よりも、8人制のほうがセカンドボールの比重は大きくなります。理由は3つあります。
① 蹴る力に対して、コートが狭い
思い切り蹴ると、コートの半分以上を越えます。だから「収まらない」ボールが増える
② トラップの精度がまだ高くない
1本目がぴたりと収まらないので、そのつど誰のものでもない状態が生まれる
③ 人数が少ないぶん、1回の拾い合いの重みが大きい
拾えばそのまま2対1になり、拾われれば一気にゴール前まで運ばれる
つまり8人制では、「つなぐ技術」を磨く前に「拾う設計」を持っているほうが、試合の結果に直結します。身も蓋もない言い方ですが、事実です。そして拾う設計は、技術がまだ足りない子でも今日から実行できます。
03実測|1試合41回・78%は先に動いていたほうが拾った
数えたときの中身を、もう少し書きます。
見ていて分かったのは、拾えている子は、競り合いを見ていないということでした。ヘディングの競り合いが起きているとき、拾える子は競っている2人ではなく、ボールが落ちそうな場所を見ています。
逆に拾えない子は、競り合いそのものを最後まで見ています。結果を見届けてから動くので、必ず一歩遅れる。
超能力のような予測の話ではありません。蹴られたボールがどちらに跳ねるかは分からなくても、「だいたいこのあたりに落ちる」は分かります。そこに先にいればいい。当たれば拾えるし、外れても大きくは損をしません。確率の話です。
04拾える立ち位置の原則
ここが実用部分です。原則は1つだけ覚えれば足ります。
真後ろではありません。斜め後ろです。
真後ろだと、前にそれたボールに届きません。斜め後ろなら、前にも横にも足が出せます。
距離は5〜8メートル。近すぎると同じボールを2人で見ることになり、遠すぎると届きません。
もう2つ、補足の原則があります。
自分たちのゴールに近い場所で競っているときは、斜め後ろのうちゴール寄りに立ちます。
拾えなかったときの被害がいちばん大きい方向を、先に埋めておく考え方です。
攻めているときは、斜め後ろのうち外(タッチライン寄り)に立ちます。
中に立つと相手も密集しているので、こぼれてもすぐ囲まれます。外なら、拾ってから前を向く時間があります。
05「みんなで拾いに行く」がいちばん拾えない
ここが、少年サッカーでいちばんよく起きる失敗です。
こぼれ球が跳ねた瞬間、チーム全員が同じ方向へ走ります。
結果、4人が同じボールに集まって、1人も触れない。そして、その4人がいた場所がまるごと空きます。相手はそこに蹴るだけでいい。
団子になるのは低学年だけの問題ではありません。「拾いに行け」と言われ続けた高学年ほど、全員で行きます。言われたとおりにしているだけです。
必要なのは「行く人」と「残る人」を決めることです。8人制なら、1回の競り合いに対して拾いに行くのは2人まで。3人目以降は、拾ったあとに渡す先か、拾われたときに止める場所に立ちます。
家庭で言えることがあるとすれば、「全部拾いに行かなくていい」の一言です。この一言で助かる子は、意外と多くいます。
06家でできる練習
セカンドボールの練習は、相手が要ると思われがちですが、親子2人でも作れます。跳ねるボールを予測して先に入る、という一点だけを切り出します。
01壁当ての跳ね返りを、落ちる前に取りに行く
親が壁にボールを強く当てます。子どもは壁から5メートルほど離れて構え、跳ね返りが地面に落ちる前に触りにいきます。取れたら1点。
02斜め後ろ5メートルに立つ練習
親が正面でボールを高く投げ上げ、自分でヘディングします。子どもは「斜め後ろ5メートル」に立ち、落ちたボールを拾います。位置を真後ろにした場合と比べさせます。
03どこに落ちるか、声に出してから動く
親が蹴り上げたボールについて、子どもは「右」「左」「まっすぐ」と先に声に出してから走ります。当たったかどうかを毎回確認します。
「「全部拾いに行かなくていい」と言ったら、本人がすごくほっとした顔をしました」
「競り合いを最後まで見ていたのが原因だと分かって、見る場所の話に変わりました」
「真後ろと斜め後ろで届く回数を数えさせたら、一発で理解しました」
「試合を見るとき、こぼれ球を数えるようになって観戦が面白くなりました」
跳ね方が毎回変わることが、この練習の核心です。空気が抜けたボールや号数の違うボールでは跳ね方が変わってしまい、予測の練習になりません。
△ここだけ注意:ボールを買えば拾えるようになる、という話ではありません。ここで問題になるのは「跳ね方が毎回違うと、予測が学習にならない」という一点だけです。すでに4号の検定球を使っていて、空気がしっかり入っているなら不要です。空気圧を確かめるほうが先です。
07拾ったあとに、何をするか
最後に、拾ったあとの話を1つだけ。拾って終わりではありません。
セカンドボールが起きているとき、相手も味方も、そのボールを見ています。
つまり全員の顔がボールに向いている=背後を誰も見ていない状態です。
ここで前を向ければ、相手は準備できていません。1試合で最も簡単に前進できる瞬間のひとつです。
だから、拾ったあとにやってほしいのは「まず前を見る」の一点です。安全に横へ戻すと、せっかくの有利が消えます。
逆に言えば、拾う前から前を見ておくのが理想です。ボールが落ちてくるまでのあいだに一度だけ顔を上げておく。落ちた瞬間には、もう次の行き先が決まっている。ここまでできる子は、8人制ではかなり目立ちます。
08よくある質問
セカンドボールとは何ですか?
最初のプレーのあとに、どちらのものでもなくなったボールのことです。「2本目のパス」という意味ではありません。ゴールキックの競り合いで収まらず跳ねたボール、クリアの跳ね返り、キーパーが弾いたシュート、ドリブルの当たり合いで転がり出たボールなどが該当します。8人制では1試合で40回前後発生することがあります。
拾えるかどうかは、足の速さで決まるのですか?
実測では違いました。1試合41回のセカンドボールのうち、32回(78%)はボールが落ちる前にすでに動き出していたほうが拾っています。落ちてから走り出して間に合ったのは9回だけでした。決めているのは反応の速さではなく、跳ねる前にどこに立っていたかです。
どこに立てばいいのですか?
競っている味方の斜め後ろ5〜8メートルです。真後ろだと前にそれたボールに届かず、斜め後ろなら前にも横にも足が出せます。近すぎると同じボールを2人で見ることになり、遠すぎると届きません。加えて、自陣ではゴール寄り、相手陣では外(タッチライン寄り)に立つと、拾えなかったときの被害が小さく、拾ったあとの前進がしやすくなります。
こぼれ球は、全員で拾いに行くべきではないのですか?
全員で行くといちばん拾えません。4人が同じボールに集まって1人も触れず、その4人がいた場所がまるごと空きます。相手はそこへ蹴るだけです。1回の競り合いに対して拾いに行くのは2人までにして、3人目以降は拾ったあとに渡す先か、拾われたときに止める場所に立ちます。
うちの子は、いつも一歩遅れます。原因は何ですか?
競り合いそのものを最後まで見ている可能性が高いです。拾える子は競っている2人ではなく、ボールが落ちそうな場所を見ています。結果を見届けてから動くと必ず一歩遅れます。予測が外れても大きな損はないので、先に落下点へ入る癖をつけてください。声に出して予測してから動く練習が効きます。
拾ったあとは、どうすればいいですか?
まず前を見てください。セカンドボールが起きているときは相手も味方も全員がボールを見ているので、背後を誰も見ていない状態です。ここで前を向ければ相手は準備できていません。安全に横へ戻すと、その有利が消えます。理想は拾う前に一度顔を上げておくことで、落ちた瞬間には行き先が決まっている状態です。
拾ったあとに前を向けるかどうかは、置き場所で決まります → 「止める」とは、次に蹴れる場所に置くこと 抜かれた後ろを埋める考え方はカバーリングとは、ボールがないときの立ち位置は動き出し・オフザボールへ。
「サッカーが上手い選手より、サッカーを通じて“かっこいい大人”を育てる」
育成年代の指導3年目、延べ50名ほどの子どもたちと向き合ってきた現役コーチ。判断・認知・立ち位置を軸に「個の前進力」と「戦術理解」の両立を追求しています。
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