「早く準備しなさい」と言わないと動かない。練習に行っても、ぼーっと立っている時間が長い。あんなにサッカーが好きだったのに——。親としては、どうしても「やる気がない」「サボっている」と見えてしまう場面です。ですが現場で子どもを見ていると、この見立てが当たっていることは、実はそれほど多くありません。動かない子には、たいてい動けない理由があります。この記事では、その理由を練習の「前・中・後」の3か所に分けて特定する方法と、待つべきときの見分け方を書きます。
「やる気がない」は結果であって、原因ではありません。原因は①練習の前(行きたくない理由がある)②練習の中(何をすればいいか分からない)③練習の後(できなかった記憶だけが残る)のどこかにあります。まずどこで止まっているかを特定してください。そして、原因が分からないうちは問い詰めない。待つのも育成です。親が焦って動かすほど、子どもは理由を言わなくなります。
この記事は、少年サッカーの現場に立つ現役のU10・8人制コーチが監修しています。監修コーチが、練習中に「動きが少ない」と感じた子を、決めつけずに1か月観察したことがあります。7人いました。結果はこうです。本当にサッカーへの興味が薄れていたのは1人だけ。残り6人の内訳は、メニューの意味が分かっていなかった子が3人、失敗を見られるのが怖かった子が2人、単純に体調・睡眠不足だった子が1人。つまり7人中6人は、やる気の問題ではありませんでした。そして、この6人には共通点がありました。全員、親から「やる気あるの?」と言われていたことです。
01「やる気がない」は原因ではなく、結果です
まず、言葉の整理から始めさせてください。ここがすべての出発点になります。
「やる気がない」は、状態の説明であって、原因の説明ではありません。熱が出ている子に「熱があるね」と言っても、熱は下がりません。原因が風邪なのか、疲労なのか、別の病気なのかを見つけないと、手の打ちようがない。やる気も同じです。
ところが、やる気については「やる気がない」でそのまま止めてしまうことが起きます。「やる気を出しなさい」と言えば、原因を探さずに済むからです。そして子どもは、原因が解消されていないので、当然また動かない。
指導者側も同じ罠にはまります。「あいつはやる気がない」で片付けると、こちらは考えなくて済む。楽なんです。ですが冒頭のとおり、実際に見てみると7人中6人は別の理由でした。決めつける前に見る、というだけで、打てる手がまったく変わります。
02① 練習の前|行きたくない理由を探す
家を出るまでが遅い。準備をしない。「今日休みたい」と言う。ここで止まっているなら、原因は練習の中身ではなく、行く前の何かにあります。
見落とされやすいのが、一番下の「サッカーとは無関係」です。学校で嫌なことがあった日は、サッカーにも行きたくなくなる。当たり前のことですが、親はどうしてもサッカーの中に原因を探してしまいます。
確認のしかたは簡単です。「今日は学校どうだった?」から入る。サッカーの話から始めないでください。サッカーの話から入ると、子どもは「またサッカーの話か」と身構えます。
家では元気なのに、出発前だけ動かない → 前で止まっている
行けば普通にやっている → 前だけの問題。中身は問題なし
この場合、練習内容を変えても意味がありません。行く前の何かを探してください。
03② 練習の中|分からないから動けない
行くのは行く。でも、練習中に立っている時間が長い。ボールを追わない。これが一番多いパターンです。
冒頭の7人中3人がここでした。理由は、やる気ではなく「今、何をすればいいのか分かっていない」。
大人はメニューの意図を知っています。「この練習は、受ける前に周りを見る練習だな」と分かる。ですが子どもには、並んで、順番が来て、ボールが来る、それだけにしか見えていないことがあります。目的が分からない練習で、自分から動ける子はほとんどいません。
説明のときにうなずいているのに、始まると止まる
これは「分かっていない」の典型です。うなずくのは、分かったからではなく分からないと言えないから。子どもは、分からないと言うのが怖い。とくに周りが動き始めているときは。
家でできる確認は1つだけです。「今日の練習、何の練習だった?」と聞くこと。
答えられなければ、それが原因です。責める必要はまったくありません。「じゃあ今度、コーチに聞いてみよう」で十分。聞いていいと分かるだけで、次の練習での動きが変わる子がいます。
04③ 練習の後|できなかった記憶だけが残る
3つめが、練習が終わったあとの記憶の残り方です。
子どもは、その日の練習でできたことよりできなかったことを強く覚えます。これは性格ではなく、失敗のほうが感情が動くからです。そして、できなかった記憶だけが積み重なると、次の練習に行く動機がなくなります。
ここで効くのが、できたことを1つだけ言語化して持ち帰らせることです。
01今日できたこと1つだけ
帰り道に「今日できたこと1つだけ教えて」と聞きます。プレーでなくても構いません。「最後まで走った」「声を出した」でも十分です。1つ言えたら終わり。それ以上聞きません。
02できなかったことは、聞かれるまで聞かない
親からは一切聞きません。子どもが自分から話し始めたら、そのときだけ聞きます。
031週間前と比べる
「先週できなかったのに、今日できたことある?」と聞きます。今日の中だけで探すより、1週間の幅で見るほうが見つかりやすいです。
05「やる気あるの?」が一番効かない理由
冒頭で書いた共通点をもう一度。やる気の問題ではなかった6人は、全員が親から「やる気あるの?」と言われていました。
この言葉が効かない理由は、はっきりしています。
① 質問の形をしているが、答えがない——「ある」と答えれば「じゃあ動きなさい」、「ない」と答えれば大ごとになる。どちらも詰みです
② 本当の理由を言う機会を奪う——理由を聞かれていないので、理由を言えません
③ 「自分はやる気がない子だ」と学習する——繰り返されると、子どもはそれを自分の性格として受け入れます
とくに③が重いです。何度も言われた子は、本当にやる気のない子として振る舞い始めます。周りからの評価が、自己像になる。これは元に戻すのに時間がかかります。
代わりに使えるのは、やる気を主語にしない質問です。
「やる気あるの?」→ 「今日の練習、何の練習だった?」(②の確認)
「なんでやらないの?」→ 「今日は学校どうだった?」(①の確認)
「もっと真剣にやりなさい」→ 「今日できたこと1つ教えて」(③の確認)
3つとも、やる気に触れずに原因を探る質問です。子どもは責められていないと分かるので、答えます。
06待つのも育成|動かしてはいけない時期
ここが、この記事で一番言いたいところです。
原因が特定できないうちに、親が焦って動かそうとすると、ほぼ確実に逆効果になります。追加の練習を入れる、スクールを増やす、厳しく言う——どれも、原因が①や③にある子には効きません。むしろ、行きたくない理由の上に、さらに負荷を積むことになります。
・理由を聞いても「別に」としか言わない
・練習には行っている(完全に拒否はしていない)
・サッカー以外のことは普通にできている
この状態なら、今は待つ時期です。原因が本人の中で整理されるのを待ちます。無理に引き出そうとすると、話す気そのものがなくなります。
待つというのは、放置とは違います。見てはいるが、動かさない。声はかけるが、答えを迫らない。この距離が一番難しく、一番効きます。
そして、子どものほうから話し始めたら、そのときは何を置いても聞いてください。待った意味は、その瞬間に全部回収されます。
「「やる気あるの?」を封印して「何の練習だった?」に変えたら、答えられないことに気づきました」
「学校で嫌なことがあった日だと分かって、サッカーは関係なかったと知りました」
「できたこと1つだけ聞くようにしたら、帰り道に自分から話すようになりました」
「待つのが一番きつかったですが、1か月で本人から理由を言ってきました」
動けない理由が足元の痛みだったケースもあります。マメや靴擦れは、本人が言い出さないまま動きだけが減ることがあるので、確認する価値があります。
△ここだけ注意:やる気の話をしているところに靴の話を出すのは唐突に見えるかもしれません。ただ、実際に足が痛いのを言えずに動きが減っていた子がいました。原因の候補として一度は確認してほしい、という意味です。サイズが合っているなら買い替える必要はありません。判断はサッカーする子の足のケアへ。
07本当に興味が薄れているとき
最後に、正直な話をします。本当にサッカーへの興味が薄れていることも、当然あります。冒頭の7人のうち1人がそうでした。
このとき大事なのは、それを失敗として扱わないことです。
小学生の時期に興味が移るのは、まったく普通のことです。他のスポーツに惹かれる、音楽やゲームに夢中になる、単に休みたい。どれも異常ではありません。問題なのは、興味が薄れていること自体ではなく、それを言えない空気があることです。
「辞めたい」と言えない子は、辞める代わりに動かなくなります。これが「やる気がない」に見える正体であることも、少なくありません。
だから、原因を探る過程では「辞めてもいい」という前提を、親が先に持っておく必要があります。前提として持っているだけで、子どもの話し方が変わります。実際に辞めるかどうかは、その後の話です。辞めたいと言われたときの考え方は「サッカー辞めたい」と言われたらにまとめています。
08よくある質問
「やる気がない」子は、本当にサボっているのですか?
そう見える子の多くは、別の理由で動けていません。ある1か月の観察では、動きが少ないと感じた7人のうち、本当にサッカーへの興味が薄れていたのは1人だけでした。残りは、メニューの意味が分かっていなかった子が3人、失敗を見られるのが怖かった子が2人、体調・睡眠不足が1人。「やる気がない」は状態の説明であって、原因の説明ではありません。
原因はどうやって特定すればいいですか?
練習の「前・中・後」の3か所に分けて見てください。家では元気なのに出発前だけ動かないなら「前」、行くけれど練習中に立っている時間が長いなら「中」、帰ってきてから元気がないなら「後」です。どこで止まっているかで打つ手がまったく変わるので、まず場所の特定から始めます。
「やる気あるの?」と言うのはダメですか?
最も効かない言葉の1つです。質問の形をしているのに答えがなく、「ある」と答えれば「じゃあ動きなさい」、「ない」と答えれば大ごとになる。本当の理由を言う機会も奪います。そして繰り返されると、子どもは「自分はやる気がない子だ」と学習し、本当にそう振る舞い始めます。代わりに「今日の練習、何の練習だった?」「今日は学校どうだった?」など、やる気を主語にしない質問を使ってください。
練習中に動かない子には、何を確認すればいいですか?
「今日の練習、何の練習だった?」と聞いてみてください。答えられなければ、目的が分かっていないことが原因です。大人はメニューの意図を知っていますが、子どもには「並んで、順番が来て、ボールが来る」だけにしか見えていないことがあります。説明のときにうなずいているのに始まると止まる子は、分からないと言えないだけのことが多いです。
無理にでも練習を増やしたほうがいいですか?
原因が特定できないうちに動かすと、ほぼ逆効果になります。行きたくない理由がある子に練習を増やせば、その理由の上にさらに負荷を積むことになります。理由を聞いても「別に」としか言わない、練習には行っている、サッカー以外は普通にできている——この状態なら今は待つ時期です。待つのは放置とは違い、見てはいるが動かさない、という距離です。
本当にサッカーへの興味が薄れている場合は?
それを失敗として扱わないでください。小学生の時期に興味が移るのは普通のことです。問題は興味が薄れていること自体ではなく、それを言えない空気があること。「辞めたい」と言えない子は、辞める代わりに動かなくなります。原因を探る過程では、親が先に「辞めてもいい」という前提を持っておくだけで、子どもの話し方が変わります。
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育成年代の指導3年目、延べ50名ほどの子どもたちと向き合ってきた現役コーチ。判断・認知・立ち位置を軸に「個の前進力」と「戦術理解」の両立を追求しています。
用品・ルール・練習の記事は、公開前に監修コーチが内容を確認し、事実に関わる記述は一次情報にあたって整理しています。監修者について →

