ボールが飛んでくると、目をつぶる。顔のほうに来ると、思わずよけてしまう。試合中も、ボールの奪い合いにはなるべく近づかない——わが子のそんな姿を見て、「うちの子、サッカー向いてないのかな」と不安になっていませんか。先に言います。ボールを怖がるのは、子どもとしてまったく自然な反応です。そして、正しい順番で慣らせば必ず直ります。この記事では、怖がる子への練習法と、親がやりがちなNGの関わり方を解説します。
ボールへの怖さは、「怖くないボール」から始めて段階的に慣らすのが唯一の近道です。順番は、①風船 → ②やわらかいボール → ③軽量球 → ④4号球。それぞれで「キャッチ→体に当てる遊び→顔の近くの処理」と進めます。絶対にやってはいけないのが「怖がるな」「逃げるな」と叱ること。怖さは根性では消えず、成功体験の数でしか消えません。
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この記事は、少年サッカーの現場に立つ現役のU10・8人制コーチが監修しています。現場で毎年のように「ボールが怖い子」を見てきましたが、断言できるのは怖がる子は運動神経が悪いのではなく、「痛かった記憶」か「痛そうな想像」があるだけだということ。うちのチームにも、顔にボールが当たって以来よけ続けていた子がいましたが、風船とスポンジボールから3週間かけて段階を踏んだら、胸トラップを自分から手を挙げてやる子に変わりました。怖さは、才能の問題ではなく順番の問題なんです。
01なぜボールを怖がるのか
まず、怖がる理由を知ると、親の焦りがぐっと減ります。理由はたいてい次の3つのどれかです。
- 痛かった記憶:顔やお腹にボールが当たって痛かった経験が一度でもあると、体が勝手に守りに入ります。目をつぶるのは体の防衛反応で、本人の意思では止められません。
- 痛そうな想像:当たった経験がなくても、「速いボール=痛そう」と頭が判断して、体が逃げます。特に慎重な性格の子に多いパターンです。
- ボールとの距離感がまだつかめない:飛んでくるボールがいつ・どこに来るかを予測する力は、経験の量で育ちます。予測できないものは誰でも怖い——大人でも同じです。
つまり、怖がるのは「弱いから」ではなく「体が正しく自分を守っているから」。ここを親が理解しているかどうかで、子どもへの接し方が変わります。
02直すための大原則「怖くない所から」
怖さを消す方法は、世界共通でたった1つ。「絶対に痛くない条件」から始めて、成功体験を積みながら少しずつ条件を上げることです。
道具は次の順番で変えていきます。
- 風船:ゆっくり落ちてきて、当たっても絶対に痛くない。目で追う練習に最適。
- やわらかいボール(スポンジ・布・ビーチボール):当たっても痛くないが、風船より動きがボールに近い。
- 軽量球・3号球:本物に近いが軽い。ここまで来たらゴールは目前。
- 4号球(試合球):最後の仕上げ。「もう痛くない」と体が知っている状態で触る。
大事なのは、次の段階に進むのは「今の段階が余裕で楽しい」になってから。急いで飛び級させると、一度の「痛い」で振り出しに戻ります。焦らないことが、結局いちばん速いです。
では、家でできるドリルを4つ、順番に紹介します。
03風船でキャッチ&タッチ
風船を上に投げて、①両手でキャッチ ②手のひらで打ち返す ③おでこ・胸・ももで触る、と少しずつ体の中心に近づけていく。落とさず何回続くかを数えるゲームにする。
風船の役目は、「飛んでくるものを、目を開けて見続ける」体験を積むこと。目をつぶる癖は、「見ていても痛くなかった」という記憶が増えるほど自然に消えていきます。
04やわらかボールの的当たり
親がスポンジボールなどのやわらかいボールを、子の胸やお腹めがけて下から山なりに軽く投げる。子は逃げずに、胸・お腹・ももに『わざと当てる』。当たったらポイント、よけたらノーカウント。
05転がしボールに体を入れる
親がボールをゆっくり転がし、子はボールの正面に体ごと移動してインサイドで止める。慣れたら少しずつ転がす速さを上げる。ここから本物のボール(軽量球→4号球)に移行していく。
06浮き球を体で受ける
親が下から山なりに投げた軽量球を、胸・もも・足の甲のどれかで地面に落とす。最初はワンバウンドさせてから。ノーバウンドで受けられたら、少しずつ距離を伸ばす。
07NGの関わり方・OKの声かけ
練習メニューと同じくらい大事なのが、親の関わり方です。まずNGから。
① 「怖がるな!」「逃げるな!」と叱る——怖さは意思で消せません。叱られると「怖い+怒られる」の二重の恐怖になり、サッカー自体が嫌いになります。
② いきなり硬いボールで慣れさせようとする——「当たれば平気だと分かる」は大人の理屈。痛い経験が一度増えるだけで、克服が数か月遠のきます。
③ ほかの子と比べる——「○○くんは怖がらないのに」は最悪の一言。怖さのペースは性格によって違って当たり前です。
逆に、OKの声かけはこの3つです。
- 「怖いよね、それが普通だよ」:まず怖さを認めてあげる。否定されないと分かると、子どもは挑戦する余裕が生まれます。
- 「今、最後まで目で見られたね」:結果(止められたか)ではなく、目を開けて見られたこと自体をほめる。怖さ克服の進歩はそこに表れます。
- 「昨日より1歩前でできたね」:他人ではなく、昨日の本人と比べる。小さな前進の見える化が、いちばんのガソリンになります。
「『怖がるな』と言い続けて逆効果でした。風船から始めたら、遊びの延長で自然に目をつぶらなくなった」
「顔にボールが当たって以来ずっとよけていたのが、やわらかいボールの的当てゲームで笑いながら克服できた」
「『それが普通だよ』と言ってあげただけで表情が変わった。怖さを認めてもらえるだけで違うみたい」
「3週間かかったけど、今は胸トラップが得意技に。焦らず段階を踏むのが一番の近道だった」
08よくある質問
どのくらいの期間で直りますか?
個人差が大きいですが、風船→やわらかいボール→軽量球と段階を踏んで、数週間〜数か月が目安です。大事なのは期間ではなく順番で、各段階が『余裕で楽しい』になってから次へ進むこと。急ぐほど遠回りになります。一度の『痛い』で戻ることもありますが、それも普通のことです。
ヘディングも怖がります。無理にやらせるべき?
無理は禁物です。ヘディングは特に恐怖心が出やすいプレーで、低年齢では練習量に配慮する考え方が世界的にも広がっています。風船→やわらかいボールでおでこに当てる遊びから、痛くない範囲で少しずつで十分です。詳しい段階練習は当サイトのヘディング記事も参考にしてください。
試合でボールの奪い合いを避けます。関係ありますか?
大いにあります。ボールや相手との接触への怖さがあると、無意識に密集を避けるようになります。まずはボール単体への怖さをこの記事の順番で消し、そのあと親子で軽く体を寄せ合いながらボールをキープする遊びをすると、接触への抵抗も減っていきます。
本人が『怖くない』と言い張るのに、体はよけています。
よくあるケースです。プライドで認めたくない気持ちと、体の防衛反応は別物なので、矛盾して当然です。『怖いかどうか』を話題にせず、風船やゲーム形式の練習を『遊び』として一緒にやるのがおすすめ。本人の自尊心を守ったまま、体だけ慣らしていけます。
メガネをかけています。怖がりと関係ありますか?
関係することがあります。『メガネに当たったら壊れる・痛い』という不安は、ボールを避ける立派な理由になります。スポーツ用のゴーグルや丈夫なフレームを使うと安心感が変わる子は多いです。メガネの子のサッカーについては当サイトの専用記事で詳しく解説しています。
怖さが消えてくると、次は「ボールを思い通りに扱う」段階です。ボールに触る回数を増やす基礎メニューは ボールタッチ練習 で、ヘディングへの段階的な慣らし方は ヘディングの基礎 で詳しく解説しています。
また、「足元がすべって踏ん張れない」ことも、子どもの怖さ・及び腰の一因になります。学年と足型に合った一足を選びたい方は → スパイクの選び方ランキング をどうぞ。
「サッカーが上手い選手より、サッカーを通じて“かっこいい大人”を育てる」
少年サッカーの育成年代を指導して3年目、これまで延べ50名ほどの子どもたちと向き合ってきた現役コーチ。判断力・認知・立ち位置・パススピード・切り替え、GKからのビルドアップを軸に、「個の前進力」と「戦術理解」の両立を追求しています。毎月、練習設計と自己内省をレポートにまとめてPDCAを回す、分析型の指導者です。
現場でサッカー未経験の保護者の声を大切にしてきました。専門用語をゼロに噛み砕き、「親が今日からできること」に翻訳してお届けします。
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