公園での自主練。「もっとボールを見ないで!」「体が開いてるよ!」——親が何度言っても直らない。そのうち子どもの顔がくもって、「うるさいなあ」で終わる。あの空気、経験があるはずです。ところが同じことを、動画に撮って本人に見せた瞬間、子どもがぽつりと「あ、ほんまや」。これで一発で直る。何度も現場で見てきた光景です。この記事を読み終えるころには、撮る角度・撮る回数・見せるときのルールまで分かって、スマホ1台が自主練のコーチになります。
自主練の動画は、「斜め後ろから・全身が入る距離で・1メニュー1回だけ」撮れば十分です。そして見せるときはダメ出しから入らず、良かったところを1つ先に言う。この2つで、親の指摘10回分より効きます。試合の撮り方は目的がちがうので → 試合の動画の撮り方
この記事は、少年サッカーの現場に立つ現役のU10・8人制コーチが監修しています。指導していていちばん強く感じるのが、言葉で10回言うより、本人が1回見るほうが速いということ。以前、インサイドキックのときに体が開いてしまう子がいました。3か月ほど、毎週のように口で伝えていましたが、直りませんでした。本人にその自覚がなかったからです。ある日、後ろななめから撮った動画を見せたら、5秒で「あー、開いてる」。次の週にはもう直っていました。直らなかったのは、その子ができないからではなく、自分の姿を見たことがなかったから。それだけの話だったんです。
01結論:斜め後ろ・全身・1メニュー1回でいい
まず結論から。自主練の動画は、①斜め後ろから ②全身がおさまる距離で ③1つのメニューにつき1回だけ。これで十分です。
たくさん撮る必要はありません。むしろ撮りすぎると、見なくなります。動画が20本たまった時点で、親も子も見返す気力がなくなる。これは本当によくある失敗です。1メニュー1回、その場ですぐ一緒に見る。この形がいちばん続きます。
① 角度は斜め後ろ(正面はいちばん分かりにくい)
② 全身が入る距離(足元アップは失敗のもと)
③ 1メニュー1回・その場で一緒に見る
④ 見るときは良かったところを1つ先に
この4つだけ。難しい機材も編集もいりません。
02なぜ効くのか|言葉の指摘と、自分で気づくの差
親の言葉が届かないのは、親の言い方が悪いからではありません。子どもに、そもそも自覚がないからです。
「体が開いてる」と言われても、本人の感覚では真っすぐ蹴っているつもり。頭の中のイメージと、実際の体の動きがズレている——これが小学生年代ではとても多い。ここで大人がいくら言葉を重ねても、子どもは「できてるのに怒られてる」としか受け取りません。だんだん自主練が嫌いになります。
動画は、この構図をひっくり返します。指摘するのが親ではなく、映像になる。子どもは自分で見て、自分で気づく。自分で気づいたことは、言われたことよりはるかに強く残ります。しかも親子ゲンカになりません。ここが最大のメリットです。
せっかく撮ったのに、再生しながら「ほら、ここ! 見て、開いてるでしょ? だから言ったじゃん」とやってしまうと、結局は言葉の指摘と同じになります。しかも証拠つきで責められた形になるので、口で言うより傷つく。まずは黙って一緒に見る。子どもが何か言うまで、10秒待ってください。たいてい、自分から何か言います。
03撮る角度|正面より「斜め後ろ」が圧倒的に分かる
撮り方でいちばん差が出るのが角度です。多くの親が正面から撮りますが、実は正面はもっとも分かりにくい角度です。
理由は、体の向き・足の向き・重心の位置が、正面からだと重なって見えないから。おすすめは斜め後ろ(本人の後方45度あたり)。この角度なら、軸足の向き、上半身のねじれ、ボールを置く位置、そして本人が何を見ているかまで一度に映ります。指導の現場でも、動きを確認するときはこの角度から見ることが多いです。
- 斜め後ろ45度:万能。まずこれ(軸足・体の向き・視線が分かる)
- 真横:フォームを見たいとき(キックの振り、姿勢の前後)
- 正面:表情や顔の上げ下げを見たいときだけ
- 斜め前:ボールタッチの細かさを見たいとき
スマホを子どもの背中側、斜め45度、目線より少し高い位置にかまえてください。少し高いところから撮ると、ボールと足の位置関係が見やすくなります。三脚がなければ、ベンチや車のボンネット、カバンの上に立てかけるだけでOK。手持ちで揺れると、それだけで見返す気が失せます。
04撮る距離と時間|全身が入って、10〜20秒
次が距離です。ここも失敗しやすい。足元だけをアップで撮らないでください。
足元のアップは一見よさそうですが、体全体のバランスがまったく分からない。ボールタッチが悪い原因は、たいてい足ではなく、上半身の姿勢や軸足の位置にあります。全身が映っていないと、その原因が見えません。頭からつま先まで入って、少し余白がある距離。だいたい3〜5メートル離れたあたりです。
時間は10〜20秒で十分。1回のメニューまるごとを撮る必要はありません。長い動画は、あとで見返すのが面倒になって、結局は放置されます。
録画ボタンを押しっぱなしで5分、10分と撮ってしまうと、あとで見るのが苦行になります。しかも子どもは「ずっと見られている」と感じて、動きが硬くなります。撮るのはメニューごとに1回、10〜20秒。「今から1回撮るよ」と声をかけてから撮る。この一言があるだけで、子どもは「見られている」ではなく「チェックしてもらっている」と受け取ります。
05見るときのルール|ダメ出しから入らない
ここが、この記事でいちばん大事なところです。動画を見るときは、良かったところを1つ先に言う。例外なしです。
順番はこうしてください。①黙って一緒に1回見る ②親が良かったところを1つ言う ③子どもに「どう思った?」と聞く ④直すところは1つだけ。この順番を守るだけで、自主練の動画が「反省会」ではなく「作戦会議」になります。
とくに④の「1つだけ」が重要です。動画を見ると、大人の目には直したいところが5つも6つも見えます。全部言いたくなる。でも一度に複数言われた子どもは、結局どれも直せません。しかも「自分はダメだらけだ」という気持ちだけが残る。今日はここ1つ、と決めて、次の動画までそれだけ。これが結局いちばん速いです。
① 黙って1回、通しで見る(実況しない)
② 「ここ、前よりよくなってるね」と1つほめる
③ 「自分で見てどう思った?」と聞く
④ 直すのは1つだけ。次の動画までそれだけ
③で子どもが自分から課題を言ったら、その日はもう成功です。親が言う必要はありません。
「〇〇くんはもっとこうしてたよ」——これは絶対にやめてください。比べる相手は他の子ではなく、先月の自分です。他人と比べられた子は、動画そのものを見たがらなくなります。動画の目的は、順位づけではなく自分の変化を見ること。ここを外すと、せっかくの道具が凶器になります。
06月1で同じメニューを撮る|成長は比較でしか見えない
自主練の動画で、いちばん子どものやる気に効くのがこれです。月に1回、まったく同じメニューを、同じ角度で撮る。
理由は単純で、成長は、比べないと見えないから。毎日やっている本人は、自分がうまくなっている実感をほとんど持てません。だから途中でやめたくなる。ところが1か月前の自分の動画と並べて見ると、はっきり違いが分かります。「え、こんなにヘタやったん?」——この一言が出たら、その子はもう続けます。
やり方は簡単です。毎月1日、または月初の週末と決めて、決まったメニュー(例:インサイドキック10本、ドリブル往復1本)を同じ場所・同じ角度で撮る。スマホのアルバムに専用のフォルダを作っておくと、並べて見るのがラクです。
① インサイドキック10本(フォームの変化が分かりやすい)
② コーンをジグザグに往復1本(タッチと顔の上がり方)
③ リフティング(回数ではなく姿勢を見る)
どれも1〜2分で終わります。撮る日を決めておくのが唯一のコツ。「気が向いたら」だと、絶対に続きません。
自主練のメニューそのものは、家でできる自主練メニューにまとめています。撮る対象に迷ったら、そちらから選んでください。
07現場の声+続けるためのしくみ
監修コーチのチームで実際に聞こえてくる、保護者のリアルな声です。
「口で言うと反発するのに、動画を見せたら黙って『ほんまや』って。あれ以来ケンカが減りました」
「正面から撮ってたときは全然分からなかった。斜め後ろに変えたら軸足の向きが一目瞭然でした」
「直したいところを3つ言ったら、次から撮らせてくれなくなった。1つだけにしたら戻ってきた」
「月1で同じ練習を撮ってます。半年前と並べたら本人がいちばん驚いてた。やめると言わなくなりました」
続けるためのしくみは、3つだけ。①撮る日を決める ②専用フォルダを作る ③良かった動画は消さない。とくに③は効きます。うまくいった日の動画を残しておくと、調子を落としたときの薬になる。「前はこう蹴れてたよ」と見せるだけで、感覚が戻る子はけっこう多いです。
気づいたことをひとこと書き残すと、さらに定着します。書き方はサッカーノートの書かせ方にまとめました。動画で気づく → ノートに1行書く。この組み合わせが、いまのところいちばん強いです。
家のまわりで撮りながらの自主練なら、足元は土でも人工芝でも安定するトレーニングシューズが扱いやすい。フォームを見るときに、足元が滑っていると原因が分からなくなります。
△ここだけ注意:やわらかさ重視のモデルなので、試合レベルの激しい切り返しではサポートが物足りなく感じることがあります。試合用のスパイクは別に用意して、こちらは自主練専用に回すのが現実的です。上位モデルは1万円を超えるなか、これは半額以下。「毎日の自主練で気兼ねなく使いつぶす一足」としてちょうどいい価格帯です。
よくある質問
スマホのカメラで十分ですか?特別な機材はいりますか?
スマホで十分です。特別なカメラも編集アプリもいりません。あるとよいのは、スマホを固定できるもの(小さな三脚やスタンド)くらい。手持ちで揺れると見返す気が失せるので、ベンチやカバンの上に立てかけるだけでも変わります。撮影は10〜20秒で足りるので、容量の心配もほぼありません。
どの角度から撮るのがいちばんいいですか?
斜め後ろ45度、目線より少し高い位置がおすすめです。この角度なら軸足の向き・上半身のねじれ・ボールの置き位置・本人の視線まで一度に映ります。正面はもっとも分かりにくい角度なので、表情や顔の上がり方を見たいとき以外は避けてください。フォームだけを見たいときは真横も有効です。
撮った動画を見せても、あまり反応しません。
見せる順番を変えてみてください。まず黙って一緒に1回見る、次に親が良かったところを1つ言う、そのあとで『自分で見てどう思った?』と聞く。いきなりダメ出しから入ると、子どもは防御に入って何も言わなくなります。10秒黙って待つと、たいてい自分から何か言い始めます。
試合の動画を撮るのとは、何がちがうんですか?
目的がまったくちがいます。試合の動画は『その子がどこにいて、まわりとどう関わったか』を見るもので、引きの画で撮ります。自主練の動画は『フォームやタッチ』を見るものなので、全身が入る近い距離で斜め後ろから。試合の撮り方は別記事にまとめているので、そちらを参考にしてください。
毎回撮ったほうがいいですか?
いいえ、1つのメニューにつき1回で十分です。撮りすぎると本数がたまって、親も子も見返さなくなります。加えて、月1回だけ『同じメニューを同じ角度で』撮って残しておくと、成長を比べられます。1か月前の自分と並べて見た瞬間に、子どものやる気は一気に上がります。
フォームが見えるようになったら、次は足元がそれについてくるか。合わないシューズは、直したいクセの原因そのものになります。学年・足型からピッタリの一足を選びたい方は、比較ページをどうぞ → 比較ランキングで学年・足型からピッタリのシューズを選ぶ
「サッカーが上手い選手より、サッカーを通じて“かっこいい大人”を育てる」
少年サッカーの育成年代を指導して3年目、これまで延べ50名ほどの子どもたちと向き合ってきた現役コーチ。判断力・認知・立ち位置・パススピード・切り替え、GKからのビルドアップを軸に、「個の前進力」と「戦術理解」の両立を追求しています。毎月、練習設計と自己内省をレポートにまとめてPDCAを回す、分析型の指導者です。
現場でサッカー未経験の保護者の声を大切にしてきました。専門用語をゼロに噛み砕き、「親が今日からできること」に翻訳してお届けします。
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