1月の朝7時半、吐く息が白いグラウンド。車の外気温計は3℃。子どもは車から降りるなり両手をポケットに突っ込んで、体を丸めています。「今日、練習やるんだ…」と思いながら、親も足元から冷えてくる——。冬の練習は、正直しんどい。でも実は、冬にどう過ごしたかで、春の伸び方がはっきり変わります。この記事を読み終えるころには、冬にケガが増える理由と、寒い時期だからこそ伸ばせるもの、そして日が短い平日に家でどう回すかまで、具体的に分かります。
冬の練習でいちばん大事なのは「ウォームアップを夏の倍かける」ことです。体が冷えたまま全力で走る・蹴るがケガの最大の原因。逆に、冬は走力と体幹がいちばん伸びる季節でもあります。技術より走れる体を作る時期だと割り切ると、春に一気に化けます。服装・防寒グッズの選び方は → 冬のサッカー服装ガイド
この記事は、少年サッカーの現場に立つ現役のU10・8人制コーチが監修しています。冬になると、けが人の内訳がはっきり変わります。監修コーチのチームで数年ぶん見返すと、12月〜2月は太もも裏やふくらはぎのトラブルが目に見えて増える。しかも起きる時間帯がほぼ決まっていて、練習開始から15分以内に集中しています。要するに、体が温まりきる前に全力を出してしまった、というケースです。
もうひとつ、冬の現場でよく見る光景があります。集合の時点で手が冷たすぎて指が動かない子。手が冷えていると、体全体が縮こまってフォームが崩れ、転んだときにとっさに手が出ません。「手袋くらい」と思われがちですが、冬のケガ予防では意外と大きな要素です。
01冬にケガが増える2つの理由
冬にケガが増えるのは、気合いや根性の問題ではありません。理由ははっきり2つあります。
ひとつめは体が温まっていないこと。寒いと筋肉は縮こまり、伸びにくくなります。ゴムを想像してください。冷えて硬くなったゴムを、いきなり思い切り引っぱると切れやすい。同じことが、太もも裏やふくらはぎで起きます。子どもは「まだ寒い」と感じていても、集合の合図がかかれば全力でダッシュしてしまう。ここが危ない。
ふたつめはグラウンドが硬いこと。冬の土のグラウンドは、水分が減って締まり、朝は霜で凍っていることもあります。夏なら少し沈むところが、冬はまったく沈まない。着地のたびに、ひざやかかとに衝撃がそのまま返ってきます。この積み重ねで、ひざの下やかかとの痛みが出やすくなります。
車から降りる → 上着を脱ぐ → すぐ全力ダッシュ
この3ステップが、冬のケガの黄金パターンです。車の中は暖かくても、体の中は温まっていません。降りてから最初の10分は、上着を着たまま、歩く・小走り・軽い体操でOK。上着を脱ぐのは、体が温まってからで遅くありません。
痛みが出たときの対応も、冬は早めに。「寒いからちょっと痛いだけ」で続けさせないこと。冷えている時期の痛みは、あとから響くことがあります。数日続くようなら整形外科を受診してください(痛みの感じ方には個人差があります)。
02ウォームアップは夏の倍かける
冬の練習で、たった一つだけ変えるならここです。ウォームアップを夏の倍の時間かける。夏に5分でやっていたなら、冬は10〜15分。これだけでケガの多くは防げます。
順番も大事です。冬は「動きながら温める」が先、伸ばすのは後。座り込んで長く伸ばすストレッチから入ると、体が冷えたまま筋肉を引っぱることになります。まずは歩く・小走り・スキップで体温を上げる。汗ばむ手前まで来てから、動かしながら伸ばす。この順番を守ってください。
① 歩く+小走り(3分)/上着は着たまま。会話できるペースで
② ジョグ+スキップ+横向き走(3分)/体の中から温める
③ 動かしながら伸ばす(4分)/もも上げ、お尻の後ろでかかとタッチ、大きく足を振る
④ ボールタッチ(3分)/軽いタッチから、だんだん強く
⑤ ダッシュは最後/全力は、ここまで終わってから
とくに⑤の「全力は最後」は徹底してほしいところ。監修コーチのチームでは冬だけルールを変えていて、ウォームアップが終わるまで全力ダッシュ禁止にしています。導入してからの冬は、開始15分以内のトラブルがはっきり減りました。家で親子練習をするときも、同じ順番でやってあげてください。詳しいやり方はストレッチとウォーミングアップの基本にまとめています。
もうひとつ、冬ならではの落とし穴が「途中で冷える」こと。試合の日は特にそうで、アップで温まっても、ベンチで20分座ればまた元通りです。出番の前にもう一度、その場で体を動かす。控えの子ほど、ここを親から声かけしてあげてほしいです。
03手足の冷え対策|末端が動きを止める
冬の現場でいちばん見落とされているのが、手と足の冷えです。「サッカーは足でやるから手は関係ない」と思われがちですが、実際は逆。手が冷えると、体全体が縮こまります。
指がかじかんだ子は、無意識に腕を体の前で縮めます。すると肩が上がり、走るときの腕振りが小さくなり、体幹がひねれなくなる。結果、キックもドリブルも小さくなる。さらにこわいのが、転んだときにとっさに手が出ないことです。手袋1組で防げる話なので、冬は必ず持たせてください。
「試合中に手袋をしていいの?」とよく聞かれます。多くの場合、寒い時期の手袋着用は問題なく認められていますが、色やデザインの指定がある大会もあります。大会要項やチームの指示を必ず確認してください。フィールドの子はGK用ではなく、薄手で動かしやすいものが使いやすいです。
足も同じです。冬はソックス1枚で土のグラウンドに立つと、足先から一気に冷えます。かといって厚手のソックスを重ねると、シューズの中がきつくなって逆効果。おすすめは、足首から下は薄く、ふくらはぎから上を温める組み合わせです。シューズの中はいつも通りにして、その外側で保温する考え方。
耳も忘れずに。ネックウォーマーと耳あてがあるだけで、体感温度はまったく変わります。プレー中に外す前提でいいので、集合前・待ち時間・ハーフタイムに使えるものを1つ持たせておくと、子どもの機嫌が驚くほど違います。防寒アイテムの選び方は冬のサッカー服装ガイドが詳しいです。
04凍った・霜のグラウンドで気をつけること
朝いちばんのグラウンドが白く霜で覆われている——冬にはよくある光景です。この日は、いつも通りの練習にしないでください。
霜が降りた土のグラウンドは、表面だけがシャリシャリと溶けて、下は氷のままという状態になります。これが実は、いちばんすべる。子どもは元気に走り出しますが、止まろうとした瞬間に足がスッと流れます。しかも地面は硬いので、転んだときの衝撃も大きい。
① 急に止まる・急に方向を変えるメニュー(アジリティ系は後回し)
② スライディングを含む練習
③ 凍った部分でのシュート練習(踏み込みで軸足がすべる)
凍っている間は、パス・タッチ・ボール保持など、その場でできるメニューに切り替えるのが安全です。日が高くなって溶けてから、走るメニューへ。
雪の日も同じ考え方です。うっすら積もった程度なら、ボールが転がりにくくなる分、強く蹴る練習にはなります。ただし足元は不安定なので、対人や競り合いは避けたほうが無難。「今日は雪だからロングキックの日」と切り替えられると、子どもも楽しめます。
なお、凍結や積雪で中止になるかどうかの判断はチーム・大会によってまったく違います。同じ天気でも、人工芝の会場なら実施、土のグラウンドなら中止ということはよくあります。当日の連絡と大会要項を確認してください。
05冬にいちばん伸びるのは走力と体幹
ここからは前向きな話を。冬は、実は伸ばしやすい季節です。理由は単純で、暑さでバテないから。
夏は、30分走っただけで顔が真っ赤になって、その日の練習の質が落ちます。冬は違う。長く走っても子どもが元気で、心臓と肺を鍛えるメニューがしっかり入ります。監修コーチのチームでも、冬は走るメニューの比率を上げていて、3か月後の春に、明らかに走り切れる子が増えます。試合終盤に足が止まらない子は、たいてい冬にしっかり走っています。
もうひとつ伸びるのが体幹です。寒い日は、外で細かい技術練習をしても手足が動かず、質が上がりにくい。だったら室内でできることに振ったほうがいい。体幹は室内でできて、器具も要らない。「外が寒い日は体幹の日」と決めておくと、冬のあいだにじわじわ差がつきます。やり方は小学生の体幹トレーニングにまとめました。
① 走力(心肺)/バテずに長く走れる季節。春の終盤の粘りに直結
② 体幹・バランス/室内でできる。寒い日の受け皿になる
③ キックの飛距離/ボールが飛びにくい分、しっかり蹴る癖がつく
逆に細かいボールタッチは、指先足先が動く時期のほうが伸びます。冬に無理して詰め込まなくて大丈夫です。
冬に走る量が増えると、足元への負担も増えます。この時期に靴底がすり減ったシューズのまま走り続けていると、硬いグラウンドで踏ん張りが効かず、すべって転ぶ回数が増えます。冬こそ、足元の点検を。
△ここだけ注意:凍結したグラウンドでは、どんなシューズでもすべります。靴で全部は解決しません。あくまで「すり減った靴のまま冬を越さない」ための選択肢として考えてください。上位モデルは1万円を超えるものも多いなか、この価格帯で定番の履き心地が手に入ります。
06日が短い平日の家練の回し方
冬でいちばん困るのが、これ。学校から帰ったらもう暗い。公園も5時には真っ暗で、平日にボールを触る時間がまったく取れない。
でも、悲観しなくて大丈夫です。冬の平日は「外でしかできないこと」をあきらめて、家でできることに全振りすると決めてしまうのが正解。むしろ、この割り切りができた家庭の子は、春にちゃんと伸びています。
- 体幹3分(プランク30秒×2+日替わり1種目)
- 室内でのボールタッチ(座ったまま足裏コロコロ・インサイドタッチ)
- リフティング(天井の低い部屋なら、ひざ下だけの低いリフティングで)
- ストレッチ(風呂上がりの5分。冬こそ効く)
- 動画で試合を見る(週1回、好きなチームを親子で15分)
ポイントは「1回15分まで」にすること。暗くて外に出られない冬に、家で長時間やらせようとすると、まず嫌いになります。短く、毎日。これに尽きます。
月:体幹3分+室内タッチ10分
火:ストレッチ5分だけ(休息日あつかい)
水:体幹3分+リフティング10分
木:ストレッチ5分だけ
金:体幹3分+室内タッチ10分
土日:チーム練習・試合
週2日を「ストレッチだけの日」にしているのがポイント。全部を練習日にすると続きません。
「冬は寒くて機嫌が悪かったのに、手袋とネックウォーマーを持たせただけで文句が減った。冷えって大きいんですね」
「アップが短いまま試合に出て、開始5分で足を痛めたことがあります。それ以来、出番前に必ず体を動かさせてます」
「霜の日に普段どおり走らせたら、何人も転んで。冬はメニューを変えるものだと知りました」
「暗くて外に出られない平日は、体幹3分だけに割り切りました。春になったら走り負けしなくなってて驚いた」
よくある質問
冬の練習でウォームアップはどれくらいかければいいですか?
夏の倍が目安です。夏に5分なら冬は10〜15分。順番も重要で、まず歩く・小走りで体温を上げてから、動かしながら伸ばす流れにしてください。座り込んで長く伸ばすストレッチから入ると、冷えた筋肉を引っぱることになり逆効果です。全力ダッシュはウォームアップが全部終わってから。
寒い日に手袋をして試合に出てもいいですか?
多くの場合、寒い時期の手袋着用は認められています。ただし色やデザインの指定がある大会もあるため、大会要項やチームの指示を必ず確認してください。フィールドの子は薄手で動かしやすいものがおすすめです。手が冷えると腕振りが小さくなり、転倒時に手が出にくくなるため、防寒としても意味があります。
霜が降りた日や雪の日、練習はどうすればいいですか?
急停止・方向転換・スライディングを含むメニューは避けてください。霜のグラウンドは表面だけ溶けて下が凍り、いちばんすべる状態になります。パス・タッチ・ボール保持など、その場でできるメニューに切り替えるのが安全です。中止の判断はチームや会場によって違うので、当日の連絡を確認してください。
冬は何を重点的に練習させるといいですか?
走力(心肺)と体幹です。暑さでバテない冬は、走るメニューがしっかり入る貴重な時期で、春の試合終盤の粘りに直結します。体幹は室内でできるので、寒い日の受け皿にもなります。逆に細かいボールタッチは手足が動きやすい時期のほうが伸びやすいので、冬に無理に詰め込む必要はありません。
日が短くて平日に練習できません。どうすればいいですか?
外でできることは割り切ってあきらめ、家でできることに振り切ってください。体幹3分、室内での足裏タッチ、低いリフティング、風呂上がりのストレッチで十分です。ポイントは1回15分までにすること。週2日はストレッチだけの日にすると続きやすくなります。短く毎日が、冬の正解です。
冬に走る量が増えると、足元の消耗も一気に進みます。すり減った靴のまま硬いグラウンドを走ると、踏ん張りが効かず転倒も増えます。学年・足型に合った一足を選び直したい方は、比較ページをどうぞ → 比較ランキングで学年・足型からピッタリのシューズを選ぶ 防寒着の選び方は冬のサッカー服装ガイドにまとめています。
「サッカーが上手い選手より、サッカーを通じて“かっこいい大人”を育てる」
少年サッカーの育成年代を指導して3年目、これまで延べ50名ほどの子どもたちと向き合ってきた現役コーチ。判断力・認知・立ち位置・パススピード・切り替え、GKからのビルドアップを軸に、「個の前進力」と「戦術理解」の両立を追求しています。毎月、練習設計と自己内省をレポートにまとめてPDCAを回す、分析型の指導者です。
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