ピンチの場面。味方のディフェンスが慌てて自陣のキーパーへボールを返した。キーパーが当たり前のように手でキャッチした——その瞬間、笛。「え、今のなに?」。ゴール前のすぐ近くで相手にボールを置かれて、うちのチームはあわてて壁を作っている。応援席は全員、頭に「?」が浮かんでいる。少年サッカーの観戦で、いちばん「何が起きたか分からない」判定がこれ、バックパスです。この記事を読み終えるころには、キーパーが手で扱えないボールはどれか、なぜ笛が鳴ったのかが、その場で分かるようになります。
覚えるのは1行だけ。「味方が足でわざと返したボールを、キーパーは手で触れない」。頭・胸・ももで返したボールならセーフ。足で返されたボールは、キーパーは足で処理します。破ると相手ボールの間接フリーキックで再開します。キーパーのルール全体は → キーパーのルールを親が理解する
この記事は、少年サッカーの現場に立つ現役のU10・8人制コーチが監修しています。低学年から中学年にかけて、この反則はほんとうによく起きます。前の学年で、シーズンを通してこの笛が鳴った回数を数えたことがありました。公式戦で合計7回。全部、味方が良かれと思ってキーパーに返したボールでした。しかも7回のうち5回は、失点にはつながらなかったものの、キーパーの子がその後しばらく足が動かなくなってしまった。ルールを知らないまま怒られた子は、次からボールを怖がるようになります。これは技術の問題ではなく、知っているかどうかだけの問題なんです。
01そもそもバックパスってどんな反則?
まず前提から。キーパーは、自分のペナルティエリア(ゴール前の大きな四角)の中でだけ、手を使えるという特別な選手です。ここまではご存じの方も多いはず。
ところが、エリアの中でも手を使ってはいけないケースがあります。その代表が、いわゆるバックパス。正しくは「味方から意図的に足でキックされたボールを、キーパーが手で触れてはいけない」というルールです。
なぜこんなルールがあるのか。理由は時間かせぎを防ぐためです。もし何度でも味方が足でキーパーに戻して、キーパーが手で抱えていいことにすると、リードしているチームが延々とボールを持ち続けられてしまう。試合がつまらなくなるので、「足で返したボールは手で持てない」と決められています。
① キーパーが手を使えるのは自分のエリアの中だけ
② そのエリアの中でも、味方が足でわざと返したボールは手で触れない
③ 破ったら相手ボールの間接フリーキックで再開
この3つが分かれば、あの笛の意味はほぼ理解できます。
02手で触れないのは「足でわざと返した」とき
ポイントは2つ。「足で」と「わざと(意図的に)」です。
足で——ここでいう足は、足のつま先からひざ下あたりまで。この部分で蹴られたボールをキーパーが手で扱うと反則です。
わざと——ここが判断の分かれ目になります。味方が意図してキーパーに向けて蹴ったのか、それとも相手にクリアしようとしたボールがたまたまキーパーのほうへ飛んだのか。意図があったかどうかを審判が判断します。だから、同じような場面でも笛が鳴るときと鳴らないときがあります。
相手のシュートがディフェンスの足に当たってコースが変わり、キーパーの正面に来た——これは反則ではありません。味方が意図的にキックしたわけではないからです。同じように、味方がクリアしようとしてミスキックでキーパーの方向に飛んだ場合も、意図がなければ通常は反則になりません。応援席で「今の反則じゃない?」と声が出がちですが、「わざとかどうか」を審判が見ている、と知っておくとモヤモヤが減ります。
03頭・胸ならOK|セーフとアウトの早見表
いちばん誤解が多いのがここ。足以外で返したボールは、キーパーが手で取ってOKです。
| 味方の返し方 | キーパーが手で触る | 判定 | |---|---|---| | 足でわざと蹴って返した | ✕ | 反則(間接FK) | | 頭(ヘディング)で返した | ○ | 問題なし | | 胸で返した | ○ | 問題なし | | ひざ・ももで返した | ○ | 問題なし(足ではない扱い) | | 相手選手が蹴ったボール | ○ | 問題なし | | 味方のミスキックが偶然飛んできた | ○ | 意図がなければ問題なし | | 味方のスローインを直接 | ✕ | 反則(間接FK) |
覚え方はシンプルで、「足とスローインだけがダメ」。あとは手で取れます。
ただし注意点が1つ。ひざやももで返すのを、わざと「足を使わないため」にやったと審判が判断した場合は、ルールを逃れるための行為として反則をとられることがあります。頭や胸で返すのは自然な流れなのでまず問題になりませんが、明らかに足でつま先に乗せてから頭で返すような動きは避けたほうが無難です。
04スローインを直接受けるのもNG
見落とされがちなのが、味方のスローインをキーパーが直接手で取ってはいけないというルール。これも足と同じ扱いで反則になります。
理由は同じ、時間かせぎ防止です。スローインのたびにキーパーが手で受け取って抱えられたら、いくらでも時間を使えてしまいます。
少年サッカーでは、自陣ゴール近くでのスローインでよく起きます。ボールを持った子が、いちばん安全そうに見えるキーパーへ投げる。キーパーが普通に手でキャッチする。笛。子どもたちは全員きょとんとしています。ここもキーパーは足で処理するのが正解です。スローインそのもののルールはスローインのルールにまとめています。
なお、コーナーキックやゴールキックから直接キーパーが手で受け取るケースは滅多にありませんが、味方が足で蹴ったボールという点では同じ考え方です。再開方法の整理はゴールキックとキックオフの違いもあわせてどうぞ。
05違反したらどうなる?|間接フリーキック
反則をとられると、相手チームの間接フリーキックで再開します。場所は、キーパーが手で触れた地点。つまりゴールのすぐ目の前です。かなりのピンチになります。
「間接」というのは、蹴った人以外の誰かが触らないとゴールにならないフリーキックのこと。だから直接ゴールを狙われることはありませんが、ゴールの至近距離から誰かに当ててシュート、という形になるので、守るほうは全員でゴールライン上に並ぶことになります。
反則がゴールエリア(ゴール前の小さい四角)の中で起きた場合、フリーキックはゴールエリアのライン上に移されるのが一般的です。細かい位置の扱いは審判が示してくれるので、応援席から「そこじゃない」と言う必要はありません。審判が腕をまっすぐ上に挙げ続けていたら、それが間接フリーキックの合図です。ジェスチャーの意味は審判のジェスチャー一覧にまとめています。
なお、少年サッカーの育成大会では、審判が笛を吹く前に「足でね!」と声をかけて防いでくれることも多くあります。学ぶ場だからです。これはとてもありがたい運用ですが、公式戦では普通に笛が鳴ります。大会によって審判の方針が違うので、要項や当日の審判ミーティングで確認しておくと安心です。
06キーパーの子への教え方|怒らないのが最優先
ここがいちばん大事です。この反則をとられた子を怒ってはいけません。
なぜなら、多くの場合悪いのはキーパーではないから。足でキーパーに返したのは味方です。キーパーは、ただ来たボールを止めただけ。それなのに笛が鳴って、ゴール前にピンチを作ってしまった。子どもは「自分のせいだ」と思い込みます。ここで大人が責めると、次からボールを触ること自体が怖くなります。
教えるときの言い方は、こうしています。
- ✕「手で取っちゃダメだろ!」→ ○「足で来たボールは、足で返そう」
- ✕「何回言えば分かるの」→ ○「今のは味方に『頭でちょうだい』って言っていいんだよ」
- ✕ 反則した直後に指導する → ○プレーが切れてから、静かに一言
そして、足でさばく練習をさせること。ルールを知っていても、足でうまく蹴れなければ同じことが起きます。キーパーの子には、両足でのインサイドキックと、少し遠くへ蹴る練習を必ず入れてあげてください。インサイドキックの基本が土台になります。キーパー向けの練習はキーパーの家でできる練習にもまとめました。
足でさばく回数が増えると、キーパーこそ足元の道具が大事になります。滑って処理をミスすると、そのまま失点につながるからです。
△ここだけ注意:足幅が広い・甲が高い子には少しタイトに感じることがあります。幅広の子は別モデルを検討してください。上位モデルは1万円を超えますが、これは約半額。足でさばく機会が増えるキーパーにこそ、感覚の伝わる一足を。
07現場の声+大会要項で確認したいこと
監修コーチのチームで、実際に聞こえてきた保護者の声です。
「笛が鳴った理由が全然分からなくて、家に帰ってから調べました。足で返したボールはダメなんですね」
「うちの子はキーパー。反則をとられた日は落ち込んでいたけど、味方の返し方の問題だと知って救われました」
「頭で返せばセーフだと知ってから、試合中に『頭でー!』という声が出るようになりました」
「スローインを直接キーパーが取るのもダメだと知らず、何度もやってしまっていました」
最後にもう一度。ルールの細かい運用は大会によって差があります。育成重視の大会では審判が声で教えてくれることもあれば、公式戦は厳格に笛が鳴ることもある。気になるときは大会要項を確認するか、コーチに聞いてください。それがいちばん確実です。
よくある質問
バックパスは、味方が返したボールを全部キーパーが手で取れないということですか?
いいえ。手で触れないのは、味方が意図的に足で蹴って返したボールだけです。頭・胸・ひざ・ももで返されたボールは、キーパーが手で扱っても問題ありません。また、相手選手が蹴ったボールも当然手で取れます。判断の分かれ目は『足で』『わざと』の2つです。
味方のミスキックがキーパーの方に飛んだ場合はどうなりますか?
意図的にキーパーへ返したわけではないので、通常は反則になりません。相手にクリアしようとしたボールがそれて飛んできた場合も同じです。ただし意図があったかどうかは審判の判断になるため、同じような場面でも判定が分かれることがあります。
スローインをキーパーが手で取ってはいけないのはなぜですか?
足で返したボールと同じく、時間かせぎを防ぐためです。味方のスローインをキーパーが直接手でキャッチすると反則になり、相手ボールの間接フリーキックで再開します。自陣ゴール近くのスローインで起きやすいので、キーパーは足で処理すると覚えておいてください。
反則をとられるとどうなりますか?
その地点から相手チームの間接フリーキックで再開します。間接なので蹴った人以外が触らないとゴールにはなりませんが、位置がゴールのすぐ前になるため大きなピンチです。反則がゴールエリア内で起きた場合は、ゴールエリアのライン上に移されるのが一般的です。
キーパーの子にどう教えればいいですか?
まず責めないことが最優先です。足で返したのは味方であり、キーパーは来たボールを処理しただけだからです。『足で来たボールは足で返そう』と行動で伝え、プレーが切れてから静かに話すのがよいです。あわせて両足のインサイドキックなど、足でさばく技術を練習しておくと根本的に減ります。
キーパーもフィールドの子も、足でボールをさばく回数はどんどん増えていきます。滑らない・感覚が伝わる一足を選んでおくと、こうしたミスは自然に減っていきます → 比較ランキングで学年・足型からピッタリのシューズを選ぶ キーパーのルール全体はキーパーのルール、再開方法の整理はゴールキックとキックオフでどうぞ。
「サッカーが上手い選手より、サッカーを通じて“かっこいい大人”を育てる」
少年サッカーの育成年代を指導して3年目、これまで延べ50名ほどの子どもたちと向き合ってきた現役コーチ。判断力・認知・立ち位置・パススピード・切り替え、GKからのビルドアップを軸に、「個の前進力」と「戦術理解」の両立を追求しています。毎月、練習設計と自己内省をレポートにまとめてPDCAを回す、分析型の指導者です。
現場でサッカー未経験の保護者の声を大切にしてきました。専門用語をゼロに噛み砕き、「親が今日からできること」に翻訳してお届けします。
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